イベントがない時には、スタジアム見学が出来る隈研吾氏設計の国立競技場。自分で勝手に巡るものもあるが、4月30日~5月5日には、期間限定特別ツアーが実施され、中でも5月3日と4日だけ行われる「フィールドバックヤード&展望デッキツアー」があった。
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​庇(ひさし)は五重塔の伝統的な知恵を用い、雨をしのぎ、風が入りやすい構造に。隙間(ピッチ)の空け具合がそれぞれ異なり、北風はブロックしつつ南風を入れる工夫が施されている。経年変化してルーバーの色が変わることも見越して、防腐塗料に白を入れて白っぽく少しだけ着色している。

素材は杉で、47都道府県の杉を使い、南の杉は年輪の間隔が異なる。競技場の南は南の県の杉を、北は北の県の杉を配置し、一番南は沖縄の琉球松を使っている。幅は全て10.5センチで、木造建築の流通している寸法で造っている。
良く良くみると、皆同じ円弧の4重の庇ではなく、長短など個性がある。
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その小径木の庇のデザインの延長として、一階の天井部分を覆っている所も、まっすぐに並べてあるだけではない。​
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庇がトレードマークとなっているので、ガラス扉などにも描かれている。​
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45分ほどの見学ツアー開始。68000席を見渡すと圧巻。
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競技場内は、落ち葉のように色をランダムに混ぜるように座席を配し、グランド側には茶色が多め、上は白が多めとなっている。このデザインが決まった時には、まさか無観客での​オリンピック開催になろうとは誰も思っていなかったが、まさにその配色が功を奏することに。
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グランドレベルまで降りて、選手目線で観客席を眺めてみると、、、
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ちょうど、5月7日に開催された第106回日本陸上競技選手権大会の準備をされていた。スタートラインからの眺め。
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中央の緑は天然芝で芝刈りをしていたり、はり替え用の芝も横に置いてあった。
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選手達の休む屋根付きのベンチは可動式で、これから設置されるところのよう。
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室内練習場のレーンは自由に走らせてもらえた😂 柱には、ぶつかっても怪我をしないようにクッションが取り付けられている。
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その先にあるシートのかかった走り幅跳びなどの為の砂場には絶対に足を踏み入れないようにと。
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サッカーなどの屋内練習場として、人工芝が敷かれた部屋がある。結構人工芝は長めでふかふか。
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壁にはモニターと、時計があるのだが、時計はボールが当たっても壊れないように囲われていた。
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選手達のロッカールーム。木調の部屋となっていて、競技場と同じように楕円形。
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フィールドへと通じる選手入場通路は、フラッシュインタビューゾーンにもなっていて、そこには隈研吾氏の照明がいくつもあり、書道家の青柳美扇氏の「NATIONAL STUDIUM」の文字なども。
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この照明は、漁り火と漁網をイメージされ、スタディ模型として針金とストッキングを使ったとのこと。本物には、軽くて強いカーボンファイバーを組紐の技術で曲線にして仕上げてあり、提灯のように折りたたむことも出来る。詳しい様子は、昨年、開催された「隈研吾展」で見ることが出来た:

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オリンピックとパラリンピックの表彰台も置かれていた。パラリンピックの表彰台には金メダルの人の位置にボードがあたかも台のように立てられているだけで、全く段差はない。
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駐車場のゾーンには、サインウォールがあり、オリンピックとパラリンピックに出場されたアスリート達のサインやひと言メッセージが約300も書かれている。
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陸上短距離の桐生選手など。
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パラリンピックのマラソン女子で金メダリストの道下美里選手のサインも。
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因みに、その道下選手が金メダルを取られたパラリンピックマラソンの様子は:
3階には各テレビ局や審判席などのブースがあるのだが、この日は日本陸上競技選手権大会の準備の為に見学は出来ず。
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4階からの眺めはグランドレベルとはまた異なるが、柱が一切ないのでとても見やすい。
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庇部分のところどころには、採光用にガラスの屋根となっている。案内をして下さったガイドの方曰く、外の庇を掃除しているのは見たことがあるが、屋根部分の掃除は未だ見たことがないとのこと。
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4階の展望デッキからは、代々木のドコモタワー、都庁などの新宿のビル群が、そして手前の銀色の屋根は、槇文彦氏が設計された東京都体育館。1964年の東京オリンピック体操競技場として使われた。
のき庇の植物は、外苑前の緑の延長として植えられているのだそう。
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そしてはるか遠くではあるが、スカイツリーも見えた。
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5階には「空の杜」と称する遊歩道があり一般に開放されているのだが、この日は公開日ではなかった。
因みに、ツアー参加時に並ぶ為の柵の足元が富士山😂
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ツアー参加者には、トートバッグ、クールジェルシート、シール付きポストカード、マップなどがいただけた。参加者用のタグの裏も、庇をトレードマークとしたものになっている。
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競技場の周りにも色々とある。
一階の外壁には、「東京2020 トリビュート トゥ チャンピオンズ」として、メダリストの個人名や国名がピクトグラムと一緒に記載されたプレートがある。
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日本が男女共、金メダルを取った野球とソフトボールのプレートには、多くの人が指さししつつ写真でも撮ったのか指紋がいっぱい残っている😂
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車椅子ラグビーの銅メダル、そして車椅子テニスの金メダルの国枝選手の所にも多くの指紋!
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昨年の聖火台も移設されていた。大会史上初めて、水素が燃料として採用された聖火台。
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昨年のオリンピックとパラリンピック開催中に、実際に点火されていたお台場の聖火台の様子は:
1964年の東京オリンピックの炬火台も。
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東京のみならず、札幌や長野のオリンピックとパラリンピックの時の聖火台の縮小版が、向かいにあるオリンピックミュージアム前にある:

長谷川路可「ギリシャの女神像 栄光」1964年の東京オリンピック時に、国立競技場のメインスタンド貴賓席上部に設置されていた壁画を移設。
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長谷川路可「野見宿禰(のみのすくね)像 勝利」 上記の「ギリシャの女神像」と対になっていて、いずれも高さ4メートル。相撲の元祖で力の象徴とされる野見宿禰に由来。同じく移設された。
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北村西望「健康美」1964  長崎にある平和祈念像の作者でもある。
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朝倉文夫「青年像」1956年の作。
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吉田三郎「波」1959
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三井泉「無題」大理石で作られ、水泳のグロービングスタートをオブジェ化し、くりぬかれた部分は女子選手の立像となっている。
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左:雨宮治郎「槍投げ像」1959 この像は、第15回帝展(1930年)の特選になった作品。
中央:ミロン「円盤投げ像」1964 西武百貨店で「オリンピック1964年展」を開催した際に、ローマ国立博物館より取り寄せた実物の型抜き。
右:ファルピ・ビニョーリ「御者像」1936年のオリンピックベルリン大会で行われた芸術競技で金メダルを受賞した作品。古代オリンピックで行われていた馬車競技の一頭立て馬車の御者をモチーフにしている。てっきり幅跳びの選手が着地する寸前の様子かと思っていたのだが💦
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とても小さい「秩父宮記念ギャラリー」なるものがある。一部しか撮影できなかったが💦
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色々もりだくさんに見ることが出来た。