会期が間もなく終わるとのことで、クリスチャン・ボルタンスキー展に行ってみた。
クリスチャン・ボルタンスキーは、1944年9月6日フランス生まれ。父はロシア系ユダヤ人、母はコルシカ出身のフランス人で、ナチスからパリが解放された時に生まれ、ホロコーストなどの話を聞いて育っていた。
音や映像を使うのがボルタンスキー氏の特徴で、今回の「Lifetime」と言う展覧会では、自分の生涯や寿命について、生きること、死ぬこと、死後の世界をテーマとしている。(撮影不可部分の画像はHP等より)

●C・Bの人生 2010年(クリスチャン・ボルタンスキーの人生と言う意味)
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10年前にタスマニアに住む富豪のデヴィッド・ウォルシュ氏に自身の生活を記録する権利を売り、アトリエに設置された3台の監視カメラの画像が常時タスマニアに送られている。デヴィッド・ウォルシュ氏は、数学の天才で、ギャンブルで成功した人と言われている。
老いていく自分も記録され、自分の記憶と引き換えにお金はもらうが、お金は年金をもらう形での生涯契約。8年で満額と言う設定だったが、すでに8年を過ぎているので、富豪が持ち出してボルタンスキーに支払っている。


●コート(左奥) 2000年  小さな青い電球で囲まれたコートは磔刑のイメージ 
●青春時代の記憶(手前のパネル) 2001年 匿名な人達の写真の集合的な記憶を構成している
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●影 1986年 ライトで3方向に映し出される。
8 影



















●心臓音 2005年
ボルタンスキー氏の心臓の音を録音し、電球の光がそれに呼応している。音や映像は残るが、物質として形に残らないものを作品にすることに力を注いでいる。2008年頃から、人々の心臓音を収集するプロジェクトを開始していて、現時点で10万人の音が収集されている。亡くなった場合でも思い起こせるようにと。

●合間に 2010年
吊り下げられた紐で出来たカーテンに、ボルタンスキー氏の7歳~65歳の姿が投影される。映像は徐々に変化していく。写真を撮った時点での痕跡と考え、写真の姿は今現在はもうない、と言うテーマ。この作品を通り抜けて次の部屋に行く。
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●死んだスイス人の資料 1990年
金属製の箱は壁を作り上げるように積み重ねられ、箱の前面には「ヴァレ通信」の死亡告知欄から切り取ったスイス人の写真が貼られている。この金属製の箱はビスケット缶で、ミニマリズム的なオブジェであり骨壺を連想させる
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●皺くちゃのモニュメント 1985年 (壁にかかっている物)
ライトの所に皺くちゃになった顔写真が付いている。1980年代半ばから始めたモニュメントシリーズ。
10 皺くちゃのモニュメント(上部)



















●モニュメント 1986年
11 モニュメント

















●モニュメント 1987年
15 モニュメント














●シャス高校の祭壇 1987年
20シャス高校の祭壇



















多数あるモニュメントシリーズには、顔写真とライトが設置されているのだが、そのライトのコードは隠されることなく、写真の上にもかかっている。まるで血管のような印象を受けた。
亡くなった方々の顔写真がずらっと並べられているのは、ルワンダの虐殺を残した キガリ虐殺記念館 で見た展示のように感じた。その様子は こちら

●ヴェロニカ 1996年
キリストがゴルゴダに行く途上で十字架の重みに苦しんでいる時に、聖ヴェロニカが彼の顔をぬぐい、彼の顔のイメージが彼女のヴェールに写ったと言われる伝説により、キリストのイメージを半透明な布を通して見える女性の姿に置き換えている。
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●幽霊の廊下 2019年
今回の東京展の為の作品。1980年代中頃に、死の舞踏のテーマを創り始めた。
49 幽霊の廊下 


















●ぼた山 2015年
炭鉱の採掘で出る排石の山をもじった古着の山。かつて炭鉱で働いていた人達の存在を表現している。
高さ4メートル。金属で骨組みを作ったうえに板を張って、古着を乗せていった。一枚一枚の古着を見分けることは難しく、個人の個性は消え去り一体となっているかのよう。この作品を最初に展示したベルギーの美術館に、この作品を再現する権利を売却している。
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●スピリット 2013年  100枚を超えるヴェールから成り、さまよえる霊魂のよう。
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●発言する 2005年
8体の人形から、日本語と英語で流れる。この人形はあの世の門番の人形で、自分自身の死について死後の世界へのたどり着き方を尋ねている。
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●アニミタス(白) 2017年 
先に付けられた鈴が風に揺られて鳴っている。カナダ北部の厳しい気候の中で10時間撮影された。
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●ミステリオス 2017年
3つの画面からなるインスタレーション。南米パタゴニアで12時間撮影し続けた映像。中央に高さ3メートルほどのラッパのようなものが、クジラに語り掛けているように、風が吹くと反響する。左にクジラの骨。世界の起源を知る動物とパタゴニアでは言われている。右には海。
45 ミステリオス 

















●白いモニュメント、来世 2019年
現代世界にあるビル群を抜けていく。
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●保存室(カナダ) 1988年
1990年に水戸芸術館でのも展示されたもの。多くの服が重ねられている様子は、やはり同じくルワンダの虐殺が行われた教会の中で亡くなった方々の服が無造作に重ねられている光景を思い起こさせられた。その様子は こちら
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●黄金の海 2017年
保存室の窓から覗くようになっている。光がゆらゆらと振り子のように動いて照らし出している。床に置かれたブランケットは光の高価で荒れた海を想起させる。
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●黄昏 2015年
展覧会の初日には全てのライトが点いていたが、毎日3灯ずつ消えていき、展覧会が終わると全てが消える。人間は日々、死に近付いている、と言うことを暗示している。会期終了の5日前に行ったので、灯りの数も少なかった。
41 黄昏 2015年にサンパウロで制作されたもの。



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