今日がこの演目の初日となるベッリーニのオペラ「ノルマ」を観に行った。
ソプラノの最も難度の高いオペラのひとつと言われている。

by Vincenzo Bellini
conductor : Maurizio Benini

オロヴェーゾ、ドルイド教徒の長(バス) Oroveso, head of the druids and father of Norma :
 Vitalij Kowaljow
ポリオーネ、ローマ帝国のガリア地方総督(テノール) Pollione, Roman proconsul in Gaul :
 Franco Farina
フラヴィオ、ポリオーネの友人(テノール) Flavio, Pollione's friend :
 Eduardo Valdes
ノルマ、巫女の長で、オロヴェーゾの娘(ソプラノ) Norma, high priestess of the druidical temple :
 Hasmik Papian
アダルジーザ、イルミンスルの神殿に仕える若き巫女(原曲ではソプラノだが、今日ではメゾソプラノが多い) :
 Adalgisa, a young novice priestess : Dolora Zajick
クロティルデ、ノルマの親友(ソプラノ) Clotilde, Norma's confiante :
 Julianna Di Giacomo

1HPより


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タイトルロールのノルマを演ずるパピアンは、今回 マクベス でマクベス夫人を演じたゲルギーナとダブルキャスト。ゲルギーナは日程の後半を演じるが、パピアンを未だ観たことがなかったので前半に行くことにした。
メトでは、Multiple Personaliies としてゲルギーナへのインタビュー記事を載せるなど、話題作りに力を注いでいる。

一幕目が始まる前の前奏曲終了後(幕が開く前)一旦拍手が起こり、指揮者が観客の方に向き直ってお辞儀をしていた。(このようなことが良くあるのかどうか不明だが)

有名なノルマのアリア「清らかな女神」と「ああ、あの愛が戻れば」を実際に聴くのは初めてなので、残念ながら彼女のこの歌が良い出来なのかどうかわからない。とても緊張して丁寧に歌っていたことは感じられたが、正直なところ、感動はしなかった。。。

一幕二場でのパピアンとジャジックとの二重唱「ああ、思い出す」では、二人は手を握りながら歌うが、ジャジックはプロンプターを見ながら調子を合せていたがパピアンはそうではなく、途中からジャジックはパピアンの顔を見て合わせるようにしていたが、音符がはねる部分ではあっていないように感じた。
二幕一場での二重唱「お願い、子供を連れて行って」と「そう、残る命を」では合っていたかと。

テノールのファリナは、私が観に行った時にはアラーニャが アイーダ では病欠のベルティをカバーしていたが、それ以外の日程ではカバーしていた人。なかなか良かったかと思う。
バスのコワリョフ Kowaljow はアイーダでは司祭の長であるラムフィスをしていたが、威風堂々が似合う。

ハスミク・パピアンは、見た目は綺麗だが、歌唱と貫禄と言う点では、やはりジャジックを引き立てていたように感じる。役柄としてのそれぞれの演技という点ではいずれも威風堂々としていて、朗々と聴かせる曲が多いだけに、あまりドラマティックな感じは受けなかった。
ロマンティシズムあふれるベッリーニのオペラ、つまり「ノルマ」などに代表される旋律の美しさがベルカントオペラの特徴なのだろうが、オペラ鑑賞初心者の私には、ゆったりした綺麗なメロディの音楽が続くよりも、やはり音と歌詞の内容が一致した後の時代のオペラの方が感情移入しやすく、ようやく自分の好きなタイプがわかってきたように感じる。

驚いたことに、今期の ニューヨークシティオペラのガラ や、シティオペラのドン・ジョバンニ のドンナ・エルヴィラ役で出演していたジュリアンナ・ディ・ジャコモ Julianna Di Giacomo が、ノルマの親友役であるクロティルデで出演し、今日が初めてのメトデビューの日。
確かに、シティオペラでほかの歌手達よりは見た目は一番幅広な体系だが、一番声が通って存在感があった目を惹いていた存在。
以前に、マーガレット・フトラルをシティオペラで行われた セメレ で観て良いなと思っていたところ、昨年度には、アンナ・ネトレブコが一日だけ公演しなかったメトでの日程で 清教徒イ・プリタニ に出演したり、ファーストエンペラーに出るなどしていて、独りよがりだが何だか嬉しい発見をした気分だっただけに、またそんな歌手のメトデビュー当日を観ることが出来て良かった。
しかし同時に、シティオペラとメトロポリタンオペラとの差を知ることにもなったが。

ストーリーに着目してみると、ノルマにとって敵で信仰する宗教も違うが愛してしまった男性ポリオーネが、今度は若い女性に心変わりしてしまったことをノルマは知る。自分の宗教上の巫女という立場やその宗教では認められていない彼との間に出来た隠し子がいることに悩む。ノルマは自分の立場を利用して愛する男性を脅すことによって彼に自分の方に振り向いてもらおうとしたが拒絶される。結局、最後にその男性と死ぬことで、男性は初めてノルマの深い愛を知り、二人は死ぬというあらすじ。
どう考えても、ノルマには2人も子供を産ませたあげくに捨てて、若い女性に鞍替えするポリオーネという男性は許せないように感じる。
しかし、舞台設定のローマ帝国とケルトの時代(紀元前385年)を考慮すると、支配すべく侵攻してきたローマ帝国の総督であるポリオーネにとっては、ノルマやアダルジーザは所詮は征服された側の他民族の女性に過ぎず、彼が彼女たちの信仰するドルイド教に従う必要もなく、よってノルマの巫女という立場を考慮する必要もないということらしい。。。