ロシアの Tchaikovsky State Opera and Ballet Theatre of Perm というカンパニーが創立135年を記念して、初めてNYでオペラを上演するとのことで、ブルックリンの BAM (Brooklyn Academy of Music) に行ってみた。

招待券で鑑賞することが出来たこともあり、前から二列目の席。オーケストラの人達がついたての向こうというメトロポリタン劇場とは異なり、オーケストラの人達と目が合ってしまう距離。

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by Pyotr Ilyich Tchaikovsky
Libretto by V. Burenin revived by P. Tchaikovky based on A. Pushikin's epic Poltava
Music Director and Conductor : Valeriy Platonov
マリア(コチュベイの娘) Maria, Kochubei's daughter : Irina Krikunova
リューボフ(コチュベイの妻、マリアの母)Lyubov, Kochubei's wife, Maria's mother : Tatyana Poluektova
アンドレイ(若いコサック)Andrei, a young Cossack : Sergey Perminov
イスクラ(ポルダヴァ領主)Iskra, Governor of Poltava : Sergey Vlasov
マゼッパ Mazeppa : Viktor Chernomortsev
コチュベイ(コサック)Kochubei, a Cossack:Aleksandr Pogudin
オルリック(マゼッパの部下)Orlik, Mazeppa's henchman : Oleg Ivanov
酔っ払いのコサック Drunken Cossack : Vassily Batin

マゼッパ役のバリトンのヴィクトル・チェルノモルチェフの存在感が凄い。昨夏のメトでのジークフリートに出演していただけのことはある。
マリア役のソプラノのイリーナ・クリクノヴァも、コチュベイ役のバスのアレクサンドル・ポグディンもそれぞれ頑張っているようで良かったが、他の歌手達との技量の差が大きいように感じた。
本来、アンドレイ役にはパンフレットにも記載されていたテノールのパヴェル・ブラジン Pavel Bragin が配されていたが、急きょ変わったのかセルゲイ・ペルミノフ Sergey Perminov になっていて、彼のテノールの歌い方はまるで歌謡曲のようで、せっかく良い役どころなのだが陳腐な感じがしてしまった。

やはり間近で見ると、オーケストラのみならず、合唱のひとり一人の声が響いて来る。
2幕目の女性合唱の途中で、ベテランそうな女性が一人出だしを間違えていたり、男性合唱の一人が剣を前後逆に肩からかけて慌てていたりするのも見て取れたが。

今回一番面白かったのは、60名近いオーケストラがオーケストラピットに所狭しと配され、加えて横の袖の席にも、10名程度のトロンボーン、トランペット、ホルンなどがいて、サブの指揮者が、本来の指揮者の指揮に合わせて彼らを指揮するという迫力の演奏だったこと。
サブの指揮はコーラスマスターの男性が行い、右手だけ白い手袋をはめてまるでテレビのキューを出すように3・2・1と正指揮者の動きからカウントして指示を出していた。
遠方で処刑されるシーンの音だけは彼らが行ったり、本来のオーケストラとかけあいをする場面など、2か所の音源を上手く利用しているが、全く同時に同じ音を出す場合には少々音が遅れて聞こえてくるという難点もあった。

丁度先日、メトで 戦争と平和 を観た後だっただけに、いかにメトでのほんの少しだけ歌うソリストでも非常にレベルが高いかということがわかったように思う。

BAM に行ったのが今回初めてだったが、色々な地下鉄の線が乗り入れた駅から近く便利な場所にあるが、静かにしていると地下鉄の音が聞こえてくるのが難点。

受け売りの備忘録

・プーシキンの叙事詩「ポルタヴァ」をもとにしているが、マゼッパに重きを置いた「ポルタヴァ」に対し、オペラ「マゼッパ」はマリアに焦点を当てている。
・作曲期間は1881年6月~1883年4月で、1884年2月16日にモスクワのボリショイ劇場で初演され、成功。
エフゲニー・オネーギン では「手紙の場面」から作曲されたように、「マゼッパ」では、マゼッパとマリアの場面が最初に作曲され、肉付けされて行った。