前日に続き、モーツアルトの別のオペラを観に。
この演目の邦題は、「後宮からの逃走」「後宮からの誘拐」と統一されていないもよう。

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by Walfgang Amadeus Mozart
Original text by Christoph Friedrich Bretzner, adapted by Gottlieb Stephanie the Younger
指揮:David Robertson

ベルモンテ、スペインの貴族(テノール)Belmonte : Matthew Polenzani
オスミン、太守の監督官(バス)Osmin, the pasha's overseer : Kristinn Sigmundsson
ベドリロ、ベルモンテの召使(テノール) Pedrillo, Belmonte's servant : Steve Davislim
太守セリム(セリフのみの役) Pasha Selim : Matthias von Stegmann
コンスタンツェ、ベルモンテの婚約者(ソプラノ) Konstanze, Belmonte's sweetheart : Diana Damrau
ブロントヒェン、コンスタンツェのイギリス人の召使(ソプラノ) Blondchen, Konstanze's maid : Aleksandra Kurzak

ポレンザーニを聴くのは ラ・ドラビアータ 以来だが、とても良かったかと。

ダムラウは昨シーズンでは エジプトのヘレナ、今シーズンでは 魔笛 の夜の女王役版を観たが、今回の役どころが一番出番が多くしっかり観られた。

オスミン役のシグムンドソンを今回初めて観たのだがとても良い。彼のコメディアンぶりのお陰でこのオペラが何倍にも楽しめたように思われる。ただし、3幕目にあるヨーロッパのオペラでは一番低いD音をずっと伸ばす部分(後述)では全く声が出ていなかったのが惜しい。モーツアルトが特定の歌手の為に作った曲とはいえ、果たして何人の人がこの音を完璧に出せるのだろうか。

ブロントヒェン役のクルザックも、ペドリロ役のダヴィスリムもとても良いかと思うのだが、同じソプラノのダムラウ、テノールのポレンザーニと並ぶといずれも声の質がやや違うというか音の響きが劣るように感じられてしまった。
ダヴィスリムはマレーシア人というのには驚いた。
ブロントヘェンが平手打ちをくらわすシーンでは、しっかりパチンと音がしていて、会場からは驚きの声も。

指揮者はアメリカ人だったが、どの歌手達の歌詞も頭に入っているとみえて、一緒に歌いながらか口だけ動かしているのかは定かではないが、口をパクパクしながら指揮をしているのが見えた。

セリム役は歌わずセリフだけの役者さんが演じるように配役されているのも面白いが、やはり私の好みとしてはセリフが多いジュンクシュピールよりも歌の方が好きかも。

偶然、楽屋入りするダイアナ・ダムラウを観たが、それほど大柄でもなく太い印象もないとても綺麗な人だった。

受け売りの備忘録
オーストリア皇帝ヨーゼフ2世の依頼を受けて1782年に作られたモーツアルト26歳の初期の作品。恋人であったコンスタンツエの名前をソプラノに付した。

管楽器による演奏が難しいオペラ。
また、歌手達にも同様で、当時のモーツアルトは非常に優れた技巧の持ち主の歌手達に恵まれたので、ソプラノのカタリーナ・カヴァリエリの為に「拷問のアリア Martern aller Arten」を、オスミン役のバスのルードヴィヒ・フィッシャーの為に一番低いD音を書いたとのこと。

ジングシュピールなど歌芝居ではコロラトウーラのアリアは少ないが、この演目はコロラトウーラのあるオペラ・セリアのスタイルをとったジングシュピールに属し、レチタティーヴォはない。
(用語については こちら

原作にほぼ忠実だが、コンスタンツエの「拷問のアリア」と二幕目の4重唱はモーツアルトが付記。
当時に流行った啓蒙思想が根底にあり、最後には全てを許すという考え方がいきている。