ABT(アメリカンバレエシアター)の公演も第4週目に入り、今週はドン・キホーテ。
今日の主演はジリアン・マーフィーとイーサン・スティフィル。マーフィーはスピンに定評があるので観に行くことにした。(画像HPより)
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振付:Marius Petipa and Alexander Gorsky
音楽:Ludwig Minkus

ドン・キホーテ Don Quixote : Victor Barbee
サンチョ・パンサ Sancho Panza : Alejandro Piris-Nino
キトリ Kitri : Gillian Murphy
バジル Basilio, a poor barber : Ethan Stiefel
ガマーシュ Gamache, a rich nobleman : Alexei Agoudine
ロレンツオ Lorenzo, Kitri's father : Isaac Stappas
メルセデス Mercedes, a street dancer : Veronika Part
エスパダ Espada, a famous matador : David Hallberg
フラワーガール Flower Girls : Yuriko Kajiya and Misty Copeland
ジプシーカップル Gypsy Couple : Sarawanee Tanatanit and Sascha Radetsky
森の女王 Queen of the Dryads : Kristi Boone
キューピッド Amour : Sarah Lane

これほどガラなどで演じられる名場面の多い演目も珍しいと思えるぐらい、全3幕の何処にも見どころが多くて楽しめる。
マーフィがとても良かった。
スティフィルはいささかジャンプの高さがないようにも思えてしまう部分があったが、彼の場合は故障に泣かされ続けてすでに4回も手術をした後で復帰しているだけに、今日は元気な姿を観られただけでも良かったかと。
その二人の見せ場は何と言っても、第三幕のグラン・パ・ド・ドゥ。キトリ役の女性の技巧を披露する名場面。最初のバランスの一回目は少しぶれていたが二回目はばっちりと決めていた。その後のピルエットは、ダンサーによっては二回転や三回転にしたり、手の動きを変えるなど、それぞれ個性を出す場でもある。今日のマーフィは最初に二回転をさらっとやった後、扇子を持って顔を扇ぐしぐさをいれつつのフェッテとなり、会場からは拍手喝采。

ドン・キホーテ役はジュリー・ケントのご主人でもあるヴィクター・バービー。先日観た 海賊 では素晴らしい道化役を披露していたので、ドン・キホーテはそれに比べてまだ真面目だったかも。

フラワー・ガール役の二人は、加治屋さんとミスティ・コープランドと、昨夏からソリストになった二人が踊り、どちらもとても良かった。
それぞれがソロで踊る場面があるのだが、加治屋さんの前にマーフィとスティフィルのデュエットがあって盛大な拍手をもらった後だっただけにやりにくかったと想像するが、のびのびと踊っておられ、前の列のおばさまは「ブラバー」と声をかけていた。
その後にマーフィのソロ、その後に今度はコープランドのソロ、そして最後にスティフィルのソロと続くところ、マーフィが終わった後、スティフィルが登場しかけて反対側からコープランドが出ていたのを見て慌てて引っ込んだのが可笑しかった。

2幕目の夢のシーンでの群舞で、一番前のコールドの人がいきなりコロンと転んで尻もちを。転んだ瞬間は見ていなかったのでその原因は良くわからなかったが、バランスを崩したのか、ポワント(トーシューズ)の紐でも切れたのか。しばらくはポーズをとってそのまま静止する場面だったのでそこに居たが、ドン・キホーテが登場した際にささっと舞台を去ったので何かのアクシデントのもよう。
4人ずつのグループで踊るところ、その彼女のいたところは3人でこなしていたが、最後全員で2列になる場面では、さっと一人が加わわって(転んだ人と同一人物かは不明)本来の群舞の隊形になっていた。

闘牛士の役のホールバーグもとても格好が良い。大柄で足が長く線が綺麗なだけに、マタドールが似合っていた。
もともと5月末に発表されたメルセデス役にはステラ・アブレラが配されていたが、ヴェロニカ・パートに変更。大柄なヴェロニカ・パートも大きなホールバーグのリードでのびのびしていて、今日のメルセデス役は似合っているように感じた。
私が行った公演の具合での偶然なんだろうが、昨シーズンはやたらとステラ・アブレラを観て、パートはガラ以外お目にかからずじまいだったが、今期はパートをやたらと観て、アブレラは未だガラ以外観ていないかと。

ジプシー役のラディツキー、先日観た トワイラ・サープ新作 RABBIT AND ROGUE でランニングを着ていたので、両腕に黒い刺青があるのが良く見えたが、今日の役柄ではそこの部分にドウランか何かを塗って消してあった。
彼の出番は短いが、相変わらずかっこいい。

キトリのお父さんのロレンツオ役をスタッパスが演じていたが、こんなにコメディアンぶりが出来るとは、新しい発見だった。

グラン・パ・ド・ドゥがばっちり決まったので、最後のカーテンコールでは、舞台全体でのカーテンコールの後、カーテン脇からの登場も2回あった。
いくつか花束が投げ入れられ、そのうちの一つはマーフィのずっと先に花束が落ちたが、スティフィルがわざわざそれを取りに行ってマーフィに渡すなど、相変わらずのラブラブカップルぶりも披露。
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今期はディアナ・ヴィシニョーワのキトリと、ニーナ・アナニアシヴィリのキトリを観ようとチケットを取ったが、ヴィシニョーワは未だ怪我が良くないらしく、ニーナ・アナニアシヴィリが彼女のカバーをすることとなったので、ニーナのキトリをこれから二度観ることになるが、相手役の男性は異なるので、今日の二人のみならず、色々と観比べられればと楽しみでもある。

受け売りの備忘録
今回はドン・キホーテの夢のシーンの後にバジルの狂言自殺のシーンがあったが、その順番が逆の場合もある。
キトリとバジルの結婚式の場所が、貴族の館の場合と町の広場の場合がある。
結婚式のドン・キホーテの決闘も、バジルが演じる騎士と決闘する場合と、ガマーシュと決闘する場合と。