バレエに詳しい方からのアドバイスとして、ケントのジゼルは観ておくべきとのことだったので、昨日のニーナ・アナニアシヴィリとアンヘル・コレーラのジゼル に続いて、ジュリー・ケントとイーサン・スティフィルの「ジゼル」を観に行った。
あまりに良い出来で盛り上がった昨日の翌日なだけに、果たして楽しめるかどうかいささか心配ではあったが、雰囲気の違う二人なので、また違う「ジゼル」が堪能できた。

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左からジュリー・ケント、イーサン・スティフィル、ミッシェル・ワイルズ

音楽:Adolphe Adam
振付:Jean Coralli, Jules Perrot and Marius Petipa
指揮者:David LaMarche

Giselle : Julie Kent
Count Albrecht : Ethan Stiefel
Hilarion, the village huntsman and a gamekeeper to the court : Sascha Radetsky
Wilfred, the count's squire : Alexei Agoudine
Berthe, Giselle's mother : Susan Jones
The Prince of Courland : Roman Zhurbin
Bathilde, the prince's daughter : Maria Bystrova
Peasant Pas de Deux : Misty Copeland and Carlos Lopez
Myrta : Michele Wiles
Moyna : Maria Riccetto
Zulma : Kristi Boone

一幕目最後、二叉をかけられていて捨てられたジゼルの場面で、昨日のニーナは驚き、怒り、悲しみ、狂気じみた笑みというさまざまな表情を見せていたのに対し、今日のケントは驚きと悲しみが感じ取れた。
ニーナは悲しみのあまりにもともと患っている心臓病で亡くなると言うよりは、狂気も交えて亡くなったように見え、よりオペラ的なドラマチックさを感じたが、ケントの悲しみに打ちひしがれたまま心臓も耐えかねたという感じもそれはそれで良い。

一幕目の農民カップルのパ・ドゥ・ドゥーは、今日の配役はソリストのミスティ・コープランドとカルロス・ロペスだったが、優雅さや可憐さという点では、昨日のマリア・リチェットとジャレッド・マシューズかと。
昨日はアルブレヒトの小姓役で踊らなかったロペスだったが、今日は見せ場の二回転ジャンプをして足をつけて膝を開いて着地するシークエンスが3回あるうち、2回目がぐらついたり、あまり安定感がなかった。
ミスティー・コープランドも身体能力が高いので小柄ながら高いジャンプやキレの良い動きをしていたが、果たして彼女は元気いっぱいの雰囲気は出せても、はかない消え入りそうな憔悴しきったジゼルなどのような役柄は出来るのかはいささか疑問。
昨日このパ・ドゥ・ドゥーを踊ったマリア・リチェットは、今日は精霊のモイナ役。彼女の場合は線が細いので、村娘役よりもこの精霊の方が何だか似合っていたように感じた。
今日のもう一人の精霊は、昨日バチルデ役で全く踊らなかったクリスティ・ブーン。彼女はとても上手だが大柄で顔も迫力があるだけに、リチェットと一緒だと少々無骨に見えてしまったのは気のせいか。

二幕目、精霊の女王のミルタ役は今日は若いプリンシパルのミシェル・ワイルズだったが、昨日演じたジリアン・マーフィは登場しただけで拍手が起きたが、今日のワイルズには起こらなかった。
ワイルズの表情もきりっとしていて死を求める怖い女王役に徹しているが、昨日のマーフィの方が顔のつくりのせいかもしれないが、より毒々しげな女王だった。

昨日のヒラリオン役のサヴェリエフも悪くはなかったが、今日のサーシャ・ラディツキーを観てしまうとその差が良くわかる。顔の表情の豊かさもさることながら、身体の動きの軽快さとキレを感じとても良かった。
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昨日ニーナ・アナニアシヴィリを二度頭上までリフトする時、アンヘル・コレーラは一回目少し足元がふらついていたのに対し、今日のスティフィルの方が丁寧に見えたかも。
スティフィルも高いジャンプなどがなかなか良く、とても大きな拍手をもらっていた。
最後、精霊の呪で踊り続けさせられ、疲れきって倒れ込む場面では、昨日のコレーラは最後の方の踊りは疲れを意識させるようにふにゃふにゃと踊ってから倒れたのに対し、スティフィルは綺麗に踊り続けるが最後にバッタリと倒れるというふうで、表現が違ったのも面白かった。

結婚を誓った男性に裏切られ、悲しみのあまりにもともと患っていた心臓病から亡くなり、精霊となるも、愛したアルブレヒトを死ぬまで踊り続けさせる精霊の呪から守って彼を救ってやるという悲しいジゼルを、線が細くてはかなげで悲しい表情が似合うジュリー・ケントはなかなか良かった。
一度、バランスを見せる場面で静止せずにすぐに次の動きに入った場面は残念だったが、総じてとても良かったかと。画像HPより
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今日の二幕目のケントのソロの後は一度出て来て拍手に応じただけ。終演後のカーテンの脇から出て来るカーテンコールも二回だったので、いかに昨日の観客が熱狂していたかがわかったのも事実だが、昨日と比較する方がコクなのかも知れない。