物好きもここまで来たかと思われるだろうが、今夜も 月曜火曜水曜 に続いて4日目のジゼルを観ることに。

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指揮者:Ormsby Wilkins

Giselle : Xiomara Reyes
Count Albrecht : Herman Cornejo
Hilarion, the village huntsman and a gamekeeper to the court : Isaac Stappas
Wilfred, the count's squire : Carlos Lopez
Berthe, Giselle's mother : Susan Jones
The Prince of Courland : Roman Zhurbin
Bathilde, the prince's daughter : Melissa Thomas
Peasant Pas de Deux : Yuriko Kajiya & Craig Salstein
Myrta : Michele Wiles
Moyna : Maria Riccetto
Zulma : Zhong-Jing Fang

ABTのプリンシパルの男性の中で一番背が低いヘルマン・コルネホは、主役で女性をリフトするなどの役ではなく、二番手でのソロの出番が多かったが、今期彼にとっては初めてジゼルの相手役のアルブレヒトをやることになった。
昨日(水曜)のマチネは、もともとはデヴィッド・ホールバーグとイリーナ・ドヴォルヴェンコの配役だったが、コルネホとレイズが踊り、今夜は彼らにとっては二回目となる。

一幕目で、レイズ扮するジゼルが、コルネホ扮するアルブレヒトと付き合おうかどうしようかと花びらの数で占う際、昨日までのニーナ、ケント、ヘレーラいずれも花弁をちぎった後は全部床に捨てていたが、今日のレイズは、Yesの花弁は大事そうに膝の上、Noの花弁は床に捨てるという動き。
レイズは、裏切られた事を知った後、愕然として理解不可能と言った感じで、悲しさと狂気に満ちた笑みがこぼれる演技。狂気の中で幸せだった頃を思い出してその花占いをする場面でも同様に花弁を膝の上に置くしぐさをしていた。

農民カップルのパ・ドゥ・ドゥーは、今日は 昨日精霊の Zulmaを演じた加治屋さん とクレッグ・サルステンだった。
加治屋さんの足はひときは高く上がって綺麗だったが、サルステンと腕を組むシークエンスの2回とも、いささかステップが合っていなかったかと。
彼女のように可憐で優雅に踊ることが出来ても、なかなかいかに難しいパ・ドゥ・ドゥーだとわかった。その点、火曜のミスティ・コープランドは、優雅さは全く感じられないが、きっちりと音楽に合わせてそつなくこなしていたことが良くわかる。
昨年3月からソリストのサルステンが二回転ジャンプを3度行う場面では、最初の二回転ジャンプの着地が回転が足らずに着地の向きがずれてしまったため、ばちっと着地を決めずに次の動きに入っていた。
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それに比べ、昨日、立て膝をついて最後にポーズをとる場面でバランスを崩したばかりに印象が悪くなってしまったホーヴェンの二回転ジャンプは丁寧で綺麗に決まり、その着地も足をしっかり交差させていたので、いかにホーヴェンがジャンプを頑張っていたかが判った。

今日のコールドもまたハプニング。ジゼルの友人の6名が踊るシーンで複雑そうなステップを踏むのだが、一番左の女性(おそらくマリアン・バトラー)が見事に尻もち。立ち上がったは良いが、細かいステップの途中からすぐに戻れないので横のダンサーをみつつ踊り出していた。楽屋口から出て来た時も冴えない表情。

二幕目の精霊の女王役のミシェル・ワイルズは、火曜に続いてだが、今日は登場時に拍手がそれほど大きくはないが起こっていた。彼女の場合、呪をかける小道具の花を投げる時、綺麗な踊りとはうらはらに勢いよく投げるので、今日は少しだが笑いが起こっていた。
舞台では何だかとても重たく見えてしまうワイルズだが、間近で見ると顔が小さくて痩身美人。背が大きいことが重そうに見せてしまうのだろうか。
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ヒラリオン役はアイザック・スタッパス。ドン・キホーテではずっとキトリの父親役を演じていて踊る場面はないコメディアンに徹していた。
彼の容姿もあって今日はなかなか似合っていた。
二幕目冒頭のジゼルのお墓の上につける十字架を作っているシーンでは一番大きなアクションをしていた。
が、女王に命乞いをしても受け入れられず精霊達に踊り続けさせられる場面での両足での回転は、ラディツキーやサヴェリエフよりもゆっくりで迫力に欠けた。
最後、精霊達によって連れ去られる場面では、ほかのダンサーは舞台袖に走るような格好で消えて行ったが、今日のスタッパスは前転をして消えて行ったので驚いた。
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今日はABTの正指揮者であるウイルキンス氏。6月14日のドン・キホーテ では超高速の指揮で、ダンサー達がスピードについていくのが大変と言った印象を受けた為、今日はどうかと思ったところ、ゆっくり見せる部分は非常にゆっくり、早いピルエットなどの部分は高速と、めりはりが顕著。
一幕目のジゼルが裏切られたことを知った後での両足での回転は、レイズも得意とする速いスピードだった。
非常に良かったのは二幕目のバランスを見せるシーンで、音楽がそれはゆっくりで、彼女の良さが引き出されていた。(画像左はHPより)
レイズのソロはとても良かったので、舞台袖からの挨拶が1回だけだったが、ニーナの時のように2回になるのではないかと思わせるほど拍手が多かった。
舞台上では小柄な印象があるが、実際には155センチぐらいかと。ロミオとジュリエットのジュリエット役だったりと少女のような雰囲気かと思いきや、そばで見ると柔和な女性で、とても感じが良い。途中で彼女の携帯電話が鳴るとハズバンドからだわと言っていたり、多くのサインをおねだりするオバサマファンにも丁寧にサインをしつつ、ふと私と目が合うとウインクしたり。
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コルネホのソロ最初のジャンプはそれはそれは高かったので、何名かの男性が感嘆の声を上げていた。彼の得意とする高いジャンプやピルエットは綺麗で、もっと観たいかと。
しかし、一幕目でレイズの腰を持ってポンと上に投げて再度受ける時なども、彼の手が彼女の腰から離れているか一見するとわからないぐらい一回目は曖昧だったり、二幕目で二回レイズを高くリフトする際は、ぐらつきはしなかったが二度目は一番高いポイントで静止できずに次の動きに入っていた。
コルネホは非常に好きなダンサーの一人ではあるが、やはりソロで踊る方が向いているのかも。
昨日のゴメスの高くてや微動駄にしないリフトを思うと、なおさらゴメスの素晴らしさを認識。
コルネホに、月曜に偶然リンカーンセンター前で電話中だったにもかかわらず写真を撮ってもらったことのお礼を言うとにっこり笑ってくれ、今週のABTのNYでの公演が終わるとすぐに東京での公演になるので、日本で会おうと言ってくれた。
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カーテンコールは、月曜のニーナ&コレーラは3回、火曜のケント&スティフィルも水曜のヘレーラ&ゴメスも2回だったのに対し、今日は3回。
オペラでもそうだが、木曜~週末の客層の方がノリが良いと言われるが、それを実感。
そう思うと、冷めたコアな観客が多い月曜であっても、ニーナとコレーラの時の観客の熱狂ぶりは本当に凄いことだったかと。

月曜から木曜まで主な出演者が異なることもあって、4通りのジゼルを観て来たが、それぞれ自分の特徴をいかしたジゼルやアルブレヒトで、比較しつつ観るにはなかなか面白い経験が出来た。