夏の終わりから、この顔が街のあちこちにお目見えしていた。
バスのボディーにも、電話ボックスにも、地下鉄の出入り口にもあったメトの今期のポスターは、ルネ・フレミングの「タイス Thais」のポスター。
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今日はそのタイスを観に行った。
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by Jules Massenet
指揮:Jesus Lopez-Cobos
タイス、アレクサンドリアの遊女 Thais(ソプラノ):Renee Fleming
アタナエル、若い修道士 Athanael(バリトン):Thomas Hampson
ニシアス、アタナエルの友人の貴族 Nicias(テノール):Michael Schade
パレモン、修道士の長老 Palemon(バス):Alain Vernhes
アルビーヌ、尼僧院長 Albine(メゾソプラノ): Maria Zifchak

メトでは、1978年にビバリー・シルズ Beverly Sills が公演して以来上演されておらず、今回のフレミングの衣装は、クリスチャン・ラクロワがデザインしたものと、メトも非常に力を入れている。
丁度、今期のガラナイトでフレミングが演じた「ラ・トラビアータ」の相手役は今日と同じトーマス・ハンプソンで、その時の彼女の衣装がラクロワだった。その様子は こちら
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とにかくソプラノとバリトンの二人だけのオペラと言っても過言ではないぐらい、フレミングとハンプソンへの比重が高い。
最初、ハンプソンの声があまり出ていなかったように感じもしたが、徐々に良くなって来てフレミングと対峙して非常に良かった。
ハンプソンは、先日の NYシティバレエガラ を観に来ていたが、大柄なこともあり、舞台映えが良い。
2幕目でタイスを改心させようと説得する際、かっと見開いた目の演技が印象的だった。
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2幕1場と2場の間の非常に有名な「タイスの瞑想曲」の演奏は、今回は Principal Associate Concertmaster である Laura Hamilton のバイオリンで、合唱がオーケストラピットに入り、オーケストラと合わせる。わずかこの曲の為に、合唱がいる聴かせどころでもあった。

アタナエルの旧友のニシアス役のマイケル・シェードのテノールもとても良い。

尼僧院長のアルビーヌ役は、2006-2007年シーズン時の蝶々夫人2007-2008年シーズン時の蝶々夫人 でスズキの役としていつも安定した歌を聴かせてくれるマリ・ジフチャク。
短い一曲なのが勿体ないぐらい。

2幕1場のニシアス邸でのベリーダンサーの踊りに呼応してソプラノを聴かす Ginger Costa-Jackson もとても良かった。ただ、最後にそのベリーダンサーと舞台上でキスを交わすので、その時はさすがに高齢の観客からは驚きの声が上がっていたが。

脇を固める人達も良く、主だった登場人物は少数なれど、非常に良かったかと。

受け売りの備忘録
修道士は後に司教となる聖パフヌティウス、あるいはアタナシオス(295頃-373)をモデルにしているとも言われている。
タイス(?-348)は実在した修道女。後世の6世紀になって聖女と認められた。
舞台となった4世紀エジプトの都市アレクサンドリアは、未だイスラム教が生まれる前でエジプトでキリスト教(コプト教)が発展していた時代でもある。