ハーレムにあるアポロシアター APOLLO THEATER は、アマチュアナイトで有名だがそのアマチュアナイトが今年で75周年を迎え、先週末と今週末とに無料のオープンハウスを行っている。
以前にもシアター内などを見学したことがあったので(その様子は こちら)、今週行われるアマチュアナイトのチケットを買いにボックスオフィスに行く目的だけで寄ってみたところ、外に長蛇の列。
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偶然セキュリティのお姉さんが今オープンハウス中だから観ていけば?ずっと並ばなくても大丈夫よ、と親切に勧めてくれたので、参加してみた。

劇場内には、かつて出演した歌手などの資料が展示され、以前にも我々に説明してくれたアポロ劇場の歴史家であるビリー・ミッチェル氏が檀上に立って色々と解説してくれた。
前身は「Ed Hurting and Seaman's New Burlesque Theatre」と言い、バーレスクハウスとして1914年にオープンした劇場で、黒人は出入り禁止。当時のハーレムは、西ハーレムはアイルランド系、東ハーレムはイタリア系とラテン系、ハーレム中心部にはユダヤ系が住んでおり、アフリカ系は少数派だった。当時のアフリカ系の移民は主に旧ワールドトレードセンター界隈などダウンタウンに住んでいたとのこと。
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そしてBBC製作のアポロ劇場の歴史についてのビデオ上映。後でバックステージも見学したが、新しい楽屋の画面には、日本で制作されたアポロ劇場についてのビデオが上映されていたのには笑ってしまった。
BBC版は、アポロシアターの前の様子、アフリカ系ミュージシャンと白人系ミュージシャンの融合、マルコムX時代の治安の悪いハーレム、そして現在に到るまでを、色々な関係者のインタビューを交えて分かり易く纏めてあった。

再びミッチェル氏が登場して、ツリー・オブ・ホープ Tree of Hope の説明。
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もともと、ハーレムにあったラファイエット劇場の木で、ミュージシャン達がその木の下で演じ、そこでお金をもらうなどしていたので、その木は縁起が良いとされて来た。しかし、歩道拡張の為にその木が伐採されることが決定、その木のご利益を得ようと色々な人が木の皮や葉を貰って行ったが、アポロ劇場関係者はその幹ごとを貰って来て、ツリー・オブ・ホープとし、それ以降この切り株にさわると又戻って来られる=成功して再び舞台に立てる、と言い伝えられているのだとか。

また、こぼれ話として、スティービー・ワンダーが14歳の時にアポロ劇場で演奏し、同い年のミッチェル氏が観ていたそうで、今年で59歳になるが、いつの間にやらスティービー・ワンダーは54歳だと言っているとか(日本語 wikipedia には58歳となっているが)。
また、マイケル・ジャクソンが9歳の時にアポロ劇場に立ったそうだが、ミッチェル氏は、「He used to be a black. 彼はかつては黒人だった」と言って会場からは大爆笑。

毎週水曜に、素人が舞台に登場して、観客にその合否を決めてもらうイベントがあるのだが、その余興として実際に会場から3名の出演者によるパフォーマンスがあった。最初のアフリカ系女性の歌、続く男性の歌には拍手があったが、最後の白人女性はコメディアンとして語りだけだったところ面白くなかったのでブーイングで降ろされた。
続いて、本物のアマチュアナイトで勝ち抜いたという男性(ハリー・ベンソン氏)が素晴らしい歌声を披露してくれた。
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その後に舞台裏を順次見学。
舞台からは1600名入る客席や、そのツリー・オブ・ホープに触れることが出来た。
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色々な出演者がサインをしていく壁には、2007年に大統領選挙キャンペーン中にNYを訪れたオバマ現大統領のサインも。
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改装工事を以前から行っていて、現在の舞台は4年前に、椅子などは3年前に新しくし、椅子は現代の人達の体格を考慮して幅を広くしたとか。2年半前に見学に来た時は未だ改装工事の最終段階だったが、今回は古い楽屋と新しい楽屋なども見学できた。
画像左は新しい楽屋、右は階下のスタジオ。
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オープンハウスは全くの無料で、これだけ充実した内容はなかなか良かったかと。
因みに、この建物は1993年にNY州とNY市のランドマークとして指定されている。