世界三大オペラ劇場のひとつであるメトロポリタン歌劇場。
今はオペラシーズンは終了し、ABT(アメリカン・バレエ・シアター)のバレエ公演が7月初旬まで行われ、9月末になると再びオペラシーズンが始まる。
私はもうメトには足を運べないのがとにかく残念でならないが、今までシーズン中は毎日のようにお世話になった劇場なので、その総括をと。
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オペラハウスが、紳士淑女がここぞと着飾って出かける社交場であることには、今も昔も変わってはいないが、NYに於いてはその観客層が著しく変わったかと。
20年前のメトロポリタン歌劇場を知っている人にとって、一階オーケストラ席などでは、ドレスで着飾った女性をタキシードの男性がエスコートするのが当たり前だったそうだが、IT企業等の勃興によりソフトカジュアル志向に転じ、現在ではオープニングガラナイトなど特別なイベントの日や、高額な寄付をしているパトロンの人達などの席ではタキシードを目にしても、総体的にカジュアルになったかと。
子供向けの演目として「魔笛」の短縮英語版や「ヘンゼルとグレーテル」などを英語版で上演し、次世代のオペラファンを開拓してみたり、一昨年と昨年のシーズンには、シングルナイトと称し、今夜は30代~40代までの独身男女、今夜は40代~50代までの独身男女、ゲイやレズビアンのパートナーのいない男女、などとカテゴリー分けして該当者には100ドルで一階オーケストラ席を販売し、幕間には該当者のみ一か所のバーを出会いの場として提供してみたりと、話題を振りまいた。

巨大なオペラハウスは、オペラやバレエを楽しむ場所であることは勿論だが、付随するレストランやバーを楽しむのも良い。

オペラハウス内には、テラス横の吹き抜けの両側に大きなマルク・シャガールの絵がかかり、片側はバーに、もう片側はレストランとなっている。レストランは当日のオペラのチケットを持った人だけ6時から入ることが出来、お食事が出来、幕と幕の間の休憩時間中にも食べられるように、インターミッションメニューまで用意されており、あらかじめメニューを選択しておくと、席に座ったとたんにそのお料理が出て来て、開幕前、休憩中などを通してフルコースメニューを頂けるというちょっと粋なお食事の仕方も出来る。
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シャガールの巨大な絵が2枚かかっているのだが、そのうちの一枚の下で食べることとなる。
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例えば、開演前に食前酒・前菜・メインを食べ、その時点でデザートを注文しておいてオペラの一幕目を観に行き、休憩時間に同じテーブルに戻って来ると、テーブル担当からは “Welcome back!” と迎えられデザートやコーヒーがテーブルにすでに用意されているというしくみ。休憩時間にのみ注文できるデザートのチョコレートスフレも。
吹き抜けに近い席であれば、休憩中などに上階のお客さんから羨望の眼差しで眺められることもあるが。
そのお料理の詳細は こちら

では、バーはどうかと。各階のバーもフロアによってやや異なる。
ちょっとだけ小腹が空いたという場合には、オペラハウス内各階にあるバーが便利。
コーヒーは地下のバーのみでの販売となるが、どの階のバーにもシャンパンなどの飲み物やクッキーなどが用意されている。

レストランと反対側のバーだと、もう一枚のシャガールの絵の下で、スワロフスキーのシャンデリアに照らされながら頂くことが出来る。
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2階席の Parterre席は数名ずつの個室となっている一番高額なお席となるので、そこ専用のバーはいささか他のバーよりもお値段がお高めの設定になっていて、細かく個人の注文に対応。
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高額寄付者のパトロンや、ある程度の寄付やサポートをするギルドメンバーになると、それぞれのサロンがあり、そちらではバーメニューを一般客のバーのように混みあわずに頂けるしくみとなっていて、サンドイッチやケーキなどをあらかじめお願いしておくと幕間にはテーブルに用意しておいてくれる。
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オペラの余韻に浸りながらの家路につく方法も色々ある。
ワグナーなどの長い演目はもとより、ほかの演目でも終了時間が11時半や夜中の12時を超えることは良くある。
終演後、車体の長い黒塗りのロングストレッチリムジンが何台もオペラハウス前の道に待っているのは良くある光景。通常リムジンはオペラハウスに一番近い道に、タクシーはその次の車線に停まり、タクシー争奪戦が繰り広げられる。
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24時間眠らない街であるニューヨークの地下鉄は夜間も運行しており、最近はすっかり治安も良くなったこともあって、地下鉄で帰る人も多い。
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オペラハウスの最寄の地下鉄駅である1番線の66丁目駅の下りホームには、オペラハウスから帰るお客さんを見込んで、その日の演目の曲をフルートやサクソフォンで演奏するストリートパフォーマーの男性が恒例で演奏しているので、遭遇できること多々、しばし地下鉄が来るまでオペラの余韻に浸ることも出来る。