2007年に宮本亜門氏の演出により公演された 「スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」 が再演されるとのことだったので、行ってみた。

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作詞・作曲 : スティーブン・ソンドハイム
脚本 : ヒュー・ホィーラー
演出・振付 : 宮本亜門

スイニー・トッド : 市村正親
ラヴェット夫人 : 大竹しのぶ
女乞食(ルーシー) : キムラ緑子
ジョアンナ : ソニン
アンソニー : 田代万里生
ターピン判事 : 安藤求
ピードル : 斉藤暁
トバイアス : 武田真治

市村氏のミュージカルは、彼が未だ劇団四季に居た頃に青山劇場で「エクウス」を観て以来だったので、大河ドラマの明智光秀役のように風格が凄い。
大竹しのぶさんの歌は初めて聞いたが、勿論彼女は声楽家ではないが高音やだみ声などを使い分け、コミカルなお芝居など、なるほど才能に恵まれた人だなと。
映画やドラマに多数出ておられるキムラ緑子さんが、女乞食役だったが、さすがに存在感。
ソニンさんが、こんなに高音まで出せる歌手とは知らなかった。
トバイアス役は、映画の少年のボーイソプラノのイメージがあったので、武田真治氏の声に最初は違和感があったものの、少年ぶりを如何なく発揮しておられ、なかなか楽しめた。
アンソニー役の田代万里生氏がなかなか頑張っていた。
ターピン判事役の安藤求氏については全く知らなかったのだが、案外お若い方が老人を演じていた。
ピードル役の斉藤暁氏と言えば、ドラマや映画になった「踊る大捜査線」のスリーアミーゴスのうちのおひとりだが、歌もお上手なのはさすが。

面白かったのは、色々な職業の人達の肉をパイにしたらどんな味かと2人で想像し合うシーンでは、「肉屋の人のパイは?」 「生肉は嫌いだ。」というやりとりがあったり、「首相のパイは?」「噛んでも噛んでも(管でも管でも?)噛み切れない。」というセリフがあったり。

2007年ソールドアウトにお応えして・・・というふれこみだったが、最近までこの名古屋公演のCMをテレビでもやっていた。開催された愛知県芸術劇場大ホールは2500席ほどあるのだが、今日は4階と5階は封鎖。ミュージカルをするにはややこのホールが大きすぎる感もあるので、主催者や演出側の希望で封鎖したものとも思えるが、それでも1階オーケストラ席の左右や後方などには空席があった。再演なので空席があったのか、はたまた2007年ソールドアウトというのは東京公演の話で、前回も名古屋では完売とはいかなかったのか???



もともと、1979年のブロードウェイでの初演以来、何度も上演を重ねられ、2005年のジョン・ドイル演出版は、トニー賞最優秀演出賞と最優秀オーケストレーション賞に輝くヒット作となり、2008年には、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演で映画化され、ゴールデングローブ賞2部門とアカデミー賞美術賞を獲得した作品。

2006年に、そのジョン・ドイル演出版をNYで観た印象があまりに強かったので(NYブロードウェイでの様子は こちら)、今回の宮本亜門氏の演出は映画と非常に似たストーリーでわかりやすい手堅いミュージカルという印象だった。

そのジョン・ドイル演出版は、簡素な舞台設定で、使う小道具は棺桶とそれぞれ役者が座る椅子とバケツや鍋のみ。喉を剃刀でかき切られ殺される場面の表現は、赤い血糊を思わせるものがついた白い上着を上からはおるだけという象徴的な表現。そして何より驚いたのが、役者10名がそれぞれ楽器を演奏しながらお芝居&歌をこなしずっと出ずっぱりで、オーケストラボックスはなし。つまり、たとえストーリーでは主人公の二人が演じて歌っているだけであっても、ほかの8人が彼らの歌の為にその場で演奏していると言った具合で、非常に役者ひとりひとりの技量が問われる。
トビアス役の人など、お芝居・歌・バイオリン・クラリネット・ピアノを演奏していたぐらい。(下の画像の右から4人目) (画像はPLAYBILL より)
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因みに、左から3人目のトランペット奏者の彼は、この時はあまり出番はなく、もっぱら観客に背を向けてピアノを演奏したりトランペットを吹いていたが、2006年~2007年にリバイバル上演された「レ・ミゼラブル」では、主役のジャン・バルジャンを堂々とこなしていて、いかにこのスイニー・トッドのメンバーの水準が高いかを思い知らされた。
その彼が出演した「レ・ミゼラブル」の様子は こちら


あくまでも私見として:
演出の違いは好き好きなのだろうが、私としてはこのジョン・ドイル演出の印象が強く残っているだけに、今回の演出はわかりやすい万人受けバージョンかなと。映画に出演したジョニー・デップもヘレン・ボナム・カーターも大好きだが、今回のわかりやすい万人受けバージョンの舞台であっても、やはり映画よりも実際の舞台の方が楽しいということをも確信した。