ファルフ・ルジマトフを中心とする 「バレエの神髄」 を観に行った。
本来は、7月9、10、12日に東京、13日に大阪、14日に名古屋で公演される予定だったのだが、東京の新宿文化センターが東日本大震災による会館補修工事の為に使えずに9日と10日の2公演がキャンセルになり、結局、東京・大阪・名古屋でそれぞれ1日ずつとなった。(画像は全てHPから)

<第1部>

イメージ 6イメージ 12「マルキタンカ」 よりパ・ド・シス
音楽:C.プーニ 

振付:A.サン=レオン
エレーナ・フィリピエワ、セルギイ・シドルスキー、キエフ・バレエ

フィリピエワとシドルスキーは、一昨年のキエフバレエによる「白鳥の湖」で観て以来。その様子は こちら
シドルスキーがソロで逆回転で跳ぶ時に軸がぶれて大きく上手(舞台右)にずれていた。


イメージ 13「瀕死の白鳥」 
音楽:C.サン=サーンス 振付:大島早紀子
白河直子イメージ 14
音楽がかかるまで長い無音の中で踊っている時には、広い会場だが息を鼻から吸って口からはく音まで聞こえてくる。
瀕死の白鳥と言うと、ミハイル・フォーキン振付のものをイメージするが、これは全く異なる。
息も絶え絶えなフォーキン版とは違って、「生」というエネルギーが断たれるということを意識させられるようなものだった。



イメージ 15イメージ 16「ライモンダ」より アダージョ 
音楽:A.グラズノフ 振付:Y.グリゴローヴィチ
アンナ・アントーニチェワ、ルスラン・スクヴォルツォフ
美男美女の綺麗な舞台だったが、いかんせんプログラムが短かかった。
尚、アレクサンドル・ヴォルチコフからスクヴォルツォフにキャスト変更されている。



イメージ 17イメージ 1「ラ・シルフィード」より パ・ド・ドゥ 
音楽:H.レーヴェンショルド 振付:A.ブルノンヴィル
カテリーナ・ハニュコワ、岩田守弘
岩田さんは、昨年2月のニーナ・アナニアシヴィリ率いるグルジア国立バレエの「ロミオとジュリエット」でのマキューシオ役を観て以来となる。
(その様子は こちら



イメージ 20イメージ 21「シャコンヌ」 

音楽:J.S.バッハ 振付:J.リモン
ファルフ・ルジマトフ

ヴァイオリン演奏:マリア・ラザレワ
舞台上にバイオリン奏者が立って演奏する中、
ルジマトフのソロ。
さすがルジマトフ、凄い存在感。





<第2部>

イメージ 2イメージ 18イメージ 19「バヤデルカ」第2幕より パ・ダクシオン 

音楽:L.ミンクス 振付:M.プティパ
ナタリヤ・マツァーク、セルギイ・シドルスキー、キエフ・バレエ

第一部でジャンプに精彩を欠いた
シドルスキーは、今度はとても大事に
跳んでいた。





イメージ 3「扉」<新作日本初演>

音楽:O.アルナルズ 振付:V.アルブーゾワ
イーゴリ・コルプ(コールプ)

コルプは一昨年秋に、ディアナ・ヴィシニョーワを伴うマリインスキー・バレエが来日した際に「眠れる森の美女」でのデジレ王子役を観て以来。その様子は こちら
モノクロの映像がバックに映し出される中、肌色の衣装だけで、都市の動的なものと無垢な肉体との対比のような舞台だった。舞台上の彼の動きのみならず、映像に影として彼のシルエットが映し出されるという効果もあった。


イメージ 22イメージ 23「白鳥の湖」より 黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ
音楽:P.チャイコフスキー 振付:M.プティパ
アンナ・アントーニチェワ、スルラン・スクヴォルツォフ 
第一部でのこのペアはあまりに短い演技時間だったので良くわからなかったが、アンナ・アントニーチェワにはがっかり。一番の見せ場の32回のグランフェッテでは、軸足が普通左足で見慣れていることもあるが彼女の軸足が右足で何だか不思議な感じを受けた。それは良いにしても、振り上げる側の左足が折りたたまれ過ぎて迫力に欠け、回転している最後にはもたずに両足着地となり、観客の方を向いてポーズをとって終えるはずが下手奥(しもて奥=舞台の左側の奥)を向いて止まる始末。思わず隣の席のおば様も声をあげていたが、ここまで酷い黒鳥は初めて観た。何か怪我でもしているのだろうか。

「ボレロ」
音楽:M.ラヴェル 振付:N.アンドロソフイメージ 4
ファルフ・ルジマトフ
第一部のソロでは、上半身も衣装をつけていたが、ボレロでは上半身はそのままだったので、彼の標本のような素晴らしい肉体美が見られることに。今はやりの6パックや細マッチョと言われるような見せる為の作った身体ではなく、バレエをすることで鍛えられた筋肉は背中などが本当に綺麗だった。ヒンズー教のサドゥのように額に赤いマークを施した化粧は彼の顔のイメージともぴったりだった。
ラヴェルのボレロと言うと、どうしてもベジャールの振付をイメージしてしまうが、このアンドロソフ版は東日本大震災に思いをはせて今回の公演の為に作られた作品とのことで、2つのかがり火に照らされながら、袴のようなズボンのような恰好でのルジマトフは素晴らしかった。

<第3部>

イメージ 5イメージ 7「カルメン組曲」
音楽:G.ビゼー/R.シチェドリン
原振付:A.アロンソ 

改訂演出:A&Aプリセツキー
ファルフ・ルジマトフ、エレーナ・フィリピエワ、イーゴリ・コルプ、キエフ・バレエ 



イメージ 8
イメージ 9イメージ 10イメージ 11

3人もの男性ダンサーに対し、女性のフィリピエワは一人でもしっかり存在感があった。




カルメンの編曲はプリセツカヤのご主人であるシチェドリンが作ったのだが、それにはちょっとした経緯がある。
1967年に「カルメン」をモチーフにしたバレエが上演されることになり、主演のプリマドンナだったマイヤ・プリセツカヤは最初ショスタコーヴィチに、次いでハチャトゥリアンに編曲を依頼したが、両者とも「ビゼーの祟りが怖い」という理由で断り、仕方なくプリセツカヤの夫であったシチェドリンが編曲に取り掛かることになった。
wikipediaより

6時半から始まって、休憩20分を2回含んで終わったのは10時前。盛りだくさんに観られて良かったと思うのだが、お客さんが少ない。スタートが早い時間帯のせいか、終わるのが遅いせいなのか、はたまた金額のせいなのか、全幕ものではないからなのか、先日観た英国バーインガム・ロイヤル・バレエの「眠れる森の美女」(その時の様子は こちら)よりもお客さんは少なく、1階席ですら音響施設のある中央よりも後方や左右は空席が目立っていたのは残念。

ルジマトフ以外のダンサーはそれぞれ色々なバレエ団に所属している混成チームというのも面白い。
エレーナ・フィリピエワ(キエフ・バレエ)、イーゴリ・コルプ(マリインスキー・バレエ)、アンナ・アントーニチェワ(ボリショイ・バレエ)、ルスラン・スクヴォルツォフ(ボリショイ・バレエ)、岩田守弘(ボリショイ・バレエ)、白河直子(H・アール・カオス)、ナタリヤ・マツァーク(キエフ・バレエ)、カテリーナ・ハニュコワ(キエフ・バレエ)、セルギイ・シドルスキー(キエフ・バレエ)

ルジマトフは1963年6月26日生まれなので、48歳なのだが、全くそんな風には見えない。
震災以降、来日をキャンセルする外国人アーティストが多い中(先日のメトロポリタンオペラでの相次ぐキャスト変更など・・・)、来てくれただけでも有難いかと。