パナソニック汐留美術館で開催されている「和巧の絶佳展 令和時代の超工芸」その1「和」の続き。手わざの極致に挑む「巧」の作品を。(解説文はHP等より)

池田晃将(いけだ てるまさ)
高校時代に建築を学び、ボランティア活動で訪れたネパールで現地の建築物の装飾や仏像に影響を受けた。大学から金沢に移住し、漆制作の基礎を学ぶ。アニメやサブカルチャーやコンピューターグラフィックスなどに着想を得て、螺鈿など漆の伝統技法を用い表現している。レーザーを用いて貝を一文字ずつ切り手作業で貼り付けると言う、現代テクノロジーと作家の細密の集積による技術の融合作品。
螺鈿 らでん
夜光貝やアワビ貝などの真珠質の部分を砥石などで摺り減らして適切な厚さにし、文様に切って木地・漆地の面に貼りつけ、または嵌め込んで研ぎ出す装飾技法。中国唐代に発達し、日本では奈良時代に伝わった。
「Neoplasia-engineering」2016
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「Supernaturalism01」2014
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池田氏曰く、「螺鈿は通常、花鳥風月など自然のモチーフを使うが、僕はアニメや映画で育っている世代なので、デジタル数字のほうがしっくりくる。古典的な技術でつくっているが、装飾としては未来を感じさせる。時代や意図、技法がわからないものを目指したい」。

「Error403」2020
六面体にデジタル数字を螺鈿の技法で配置。大小さまざまな数字を不規則に配置する高度で技巧的なデザイン。
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「不可振賽子飾箱」2019 を拡大鏡で見ると・・・
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左:「電脳六面尽飾箱」2020、右:上記と同じ「不可振賽子飾箱」2019
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「電光十進玉箱」2019
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「紫電絡繰文飾箱」2020
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見附正康(みつけ まさやす)
九谷焼を構成するひとつ、加賀赤絵の大皿。見附氏は赤絵細描で伝統的に用いられてきた模様ではなく、余白を生かした幾何学的な文様や連続したパターンが特徴的な作品。これらは、海外の建築や天井画、装飾品やジュエリーなどからインスパイアされ生み出されたもので、1ミリ幅のなかに複数の線を描く卓越した技術は圧巻。下絵を一切描かず、全て手描きによる。
九谷焼 くたにやき
石川県南部で江戸時代以来焼き継がれている陶磁器の総称。江戸前期の古九谷、江戸後期の再興九谷、明治以降の近代九谷と現代九谷とに分類される。時代や窯ごとに、極めて多様な技法と作風が展開されている。また、近年の研究では、古九谷の産地を佐賀の有田とする説も提唱されるが、これに関しては研究者の間でも主張が分かれている。

赤絵 あかえ
釉薬をかけて焼きあげた陶磁器の表面に、多彩の上絵具で絵や文様を描き、窯にいれて焼き付ける加飾法およびその陶磁器。色絵や錦手とも呼ぶ。名称の由来は、絵具が赤を基調としていることによる。中国では、加彩、五彩などという。
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「無題」2019、「無題」2020
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「無題」2020、「無題」2020
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「無題」2020
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以下の5点の作品は、実はいずれもとても小さい💦
 「赤絵細描小紋水注」2020
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「赤絵細描華紋香水瓶」2020
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「赤絵細描小紋合子」2020
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「赤絵細描網花紋香合」2020
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「赤絵細描小紋香合」2020
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山本茜(やまもと あかね)
截金を人間国宝の江里佐代子氏に師事。2008年には日本伝統工芸展に初入選。それまで平面に施されていた截金を、ガラスとガラスの間に截金を施し、窯の中で融着させた「截金ガラス」の技法を確立。三次元の表現に転化させたことで、繊細な模様が立体的になり、金箔やプラチナ箔の輝きがガラスの光の反射や屈折によって様々に変化し、さらに半永久的にその美しさを保てるようになった。制作中に液体となるガラスを滞留させないようにするなど細やかな工夫が施されている。
截金 きりかね
金箔、銀箔等を数枚重ね合わせ、細く直線状に切った「細金」を張り付けて優美で鋭い光彩を放つ文様を描き出す技法で、主に仏像や仏画の装飾に用いられていた。飛鳥時代に仏教の伝来とともに伝わり、奈良時代以降、日本独自の技術として発展した。
「源氏物語シリーズ第十九帖『薄雲』(雪明り)」2011
源氏物語全54帖の各場面からイメージを引き出して表現することをライフワークとしており、これは明石の君とその姫君の母子の別れの場面を題材としている。横から見ると、雪が降り積もる情景が表され、真上から見ると截金の雪花模様が乱反射して映り込んでいる。
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「截金硝子茶碗『朝顔』」2014
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「截金硝子長方皿『流衍』」2014
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「截金硝子皿『花車』」2014、「截金硝子香合『延齢草』」2014
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「截金硝子香合『ふくら梅』」2015
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「截金硝子香合『無我』」2016
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「言の葉」2016、「渦」2020
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「源氏物語シリーズ第四十帖『御法』」 2013
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髙橋賢悟(たかはし けんご)
明治時代の蝋型鋳金の超絶技巧に影響を受ける。東京藝大の修士課程在学中に、生花を原型とし鋳型の中で焼失させ、その空洞部分に金属を流し込む現物鋳造の研究に取り組む。修了制作では、大学で試験的に制作した減圧鋳造機を利用して、胡蝶蘭の花びらを1ミリの厚さで鋳造した作品を制作。溶かした金属を型に流し込む際に、予め型の中から空気を抜いて真空状態にし、金属を流し込んだ後に瞬時に圧力をかけることで精密な鋳造が出来る真空加圧鋳造を行う。アルミニウムを素材として、0.1ミリと言う前例のない鋳造を実現した。
2011年の東日本大震災をきっかけに、現物鋳造で制作した勿忘草の花で動物の頭蓋骨を覆った「flower funeral」シリーズに取り組み、生と死を表現する。小さく薄いピースの積み重ねである超絶技巧が光る。小花のテクスチャーはそれぞれ微妙に異なっており、何百年も経過するとよりマットになっていくという。
鋳造 ちゅうぞう
工芸・彫刻の成形技法のひとつ。加熱、溶解等の手段で液状にした素材を型に流し込み、成形する方法。素材が金属の場合には鋳金ともいう。
「flower funeral -airedale-」2019
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「flower funeral -bulldog-」2019
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「flower funeral -cattle-」2017
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「花信風」2016
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「flower funeral -goat-」2019
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「Second forbiddance -Adam- / -truth- / -Eve-」2020
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工芸素材の美の可能性を探る作品群は、「絶佳」その3で。