1961年に丸の内で開館したサントリー美術館。その後1975年に赤坂に移転し、2007年からは東京ミッドタウンに移転。昨年11月から改装工事を行う為に閉館していたが、今年7月にリニューアルオープン。記念展第一弾の「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」展を見に行った。

酒宴で用いられた調度や、「ハレ」(非日常)の場にふさわしい着物や装飾品、豪華な化粧道具などから、異国趣味の意匠を施した品々、生活を彩ってきた物まで、所蔵品約3000点のうち、会期中の展示替えはあるが260点を展示している。

浮線綾螺鈿蒔絵手箱(ふせんりょうらでんまきえ てばこ)鎌倉時代 13世紀
国宝。手箱の表面には、金粉の粒子が大量に撒かれており、直径4センチの丸い115個の浮線綾文には、厚さがわずか0.5~0.6ミリの螺鈿の小さな片が4種類13パーツで構成され、X線CTスキャンでは、各パーツが切り透かされていることがわかるとのこと。
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菊唐草蒔絵化粧具揃 18世紀前半 
婚礼調度の一部。整髪や眉作りの道具や、お歯黒の為の道具がある。
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髪飾りは、垂髪(すいはつ)から結髪(けっぱつ)へ変化した江戸時代に大きく発展。櫛は、装飾の為に髪に挿す挿櫛が主流となる。髪を巻いて髷(まげ)を結う簪(かんざし)は、両端だけに飾りを施す場合が多く、細工物を付ける変わり簪や垂飾を付けるびらびら簪など。
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類聚雑要抄指図巻 第六巻 江戸時代 19世紀 
平安時代の儀式のしつらいや装束等を記した「類聚雑要抄」を江戸時代に考証を加え描いている。手箱に、化粧道具以外に、理髪具、香道具、文房具なども収めていた。
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八稜形鏡箱 平安時代 12世紀 奈良の春日大社伝来とされる鏡箱。現在、春日大社にこの鏡箱とセットだったと思われる八稜鏡が伝わっているとのこと。
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舞踊図 六面のうちの三面 江戸時代 17世紀 
元は屏風だったと思われるが、現在は一面ずつになっている。小袖は鹿の子絞りとなっているなど。
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誰が袖図屛風 六曲一双 江戸時代 17世紀 
人物は登場せず、衣装や調度品など室内に置かれた持ち物によって、その持ち主の面影を偲ぶという趣向になっており、この作品では能衣装や能面を入れる面箱(右隻の右端)などが描かれている。
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「誰が袖図屏風」に着想を得た構成の作品達。実物の調度品と比較しながら、屏風の世界観を表現。
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吉原風俗図巻 元禄16年(1703年)
新吉原の風俗を描いた図巻。大川(隅田川)の猪牙舟と山谷堀の船宿、格子先、揚屋町、妓楼の店先、妓楼奥屋敷の五段で構成されており、なじみ客といさかいをしている様子なども。
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鬘附束髪図會(かつらつけそくはつずかい)揚州周延 明治20年(1887年) 
束髪や帽子は切り取って中央の女性に被せ、イメージすることが出来るという錦絵。セット売りではなく、別々に購入出来た。
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流行束髪くらべ 豊原国周 明治18年(1885年) 
女形を演じる歌舞伎役者たちに、はやりの束髪をさせた姿を描いたもの。4人の役者の後ろにはそれぞれ紋が描かれている。錦絵の人気の役者絵に最新の流行を取り入れている。
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千代田の大奥 入浴 揚州周延 明治28年(1895年) 
江戸城の大奥の日常や年中行事を描いた揃物の1枚。江戸時代には、江戸城の内部を描くことが禁止されていた為、このシリーズは広く人々の関心を集めた。中央の女性は入浴後の御台所。団扇が何本も付いた手回しの扇風機が面白い。
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白綸子地梅に熨斗蝶模様打掛 江戸時代 19世紀 
白綸子地に梅の木と、金糸による梅の花、蝶の形に折った折り紙を酒器に取り付けた「熨斗蝶」を配した打掛。江戸時代後期には、黒・紅・白の打掛を3枚重ねる婚礼衣装が登場する為、これも黒と紅の打掛とのセットと考えられている。
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賀茂競馬図屏風 江戸時代 17世紀 六曲一双 
賀茂競馬は、天下泰平と五穀豊穣を祈願して宮中で行われていた競馬会が上賀茂神社に移され、それ以来続く神事で、速さを競う様子や見物人が描かれている。
そして、古美術に造詣の深い現代作家4名(山口晃氏、彦十蒔絵・若宮隆志氏、山本太郎氏、野口哲哉氏)による現代アートとコレクションをクロスさせた特別展示もされていて、屏風を眺めるように展示される野口哲哉氏の立体作品も一緒に並べられていた。「Avatar 1 現身」2016、「THE MET」2020、「FRONTEER」2019、「RED MAN 2016」2016、「Un samurai vient」2012
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朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足 一具 桃山時代 16~17世紀 
兜、胴、面頬など各所は朱漆塗で、草摺(くさずり)は黒漆塗。兜には獅子の飾りも。武具でありながら、デザイン性の高いことに驚かされる。
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碁石頭切付縫延二枚胴具足 江戸時代 17世紀 札(さね)の頭を山形に2つに割り、それぞれの頭を丸くした碁石頭の切付札を用いた縫延(ぬいのべ)の二枚胴具足。兜は桃の葉を思わせ、脇立をともなう桃形(ももなり)兜。近世初期の変わり兜はさまざまな形を取り込んでいるとのこと。面白い。
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貝尽蒔絵硯箱・料紙箱、小川破笠作、18世紀、江戸時代 
蓋表から蓋鬘(ふたかずら)にかけて、帆立貝や鮑貝などの様々な貝や、色絵陶磁、鉛、錫、螺鈿などを使っている。小川破笠(1663~1747)の作風は、蒔絵に様々な金属やガラスや陶磁片を嵌入しており、「破笠細工」と称された。
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五節句蒔絵手箱 柴田是真 一合 明治時代 19世紀 
柴田是真の功績は、各種変わり塗りの研究・開発・復興。この作品も、青銅を模した塗りの「青銅塗」が施され、各面には五節句のモチーフを。
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切子 三ツ組盃・盃台 一組 江戸時代後期~明治時代初期 19世紀 
霰(あられ)文は、斜め格子に規則正しくカットし、エッジを山形に残す切子模様。シンプルですっきりしたものが江戸人好み。
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日吉山王祇園祭礼図屏風のうち祇園祭礼図 土佐派 室町時代 16世紀 
京都の八坂神社の祭礼である祇園祭を描いている。手前の四条通には、旧暦6月7日に行われた先祭の山鉾巡行、奥の三条通には後祭(還幸祭)として14日に行われた神輿渡御の様子が描かれている。
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邸内遊楽図屛風 六曲一隻 寛永年間(1624~44年) 
妓楼の内外における遊楽を描く「邸内遊楽図」の代表的作例のひとつ。邸内でカルタに興じる男女、飲食している者など、遊興にふけっており、着ている小袖の意匠も彩り豊か。
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江戸時代では、踊り歌う人達や、楊弓や羽子板で遊ぶ人達、湯殿に入る男達などが描かれているのに対し、現代はカラオケを楽しむ人達、おもちゃの弓で遊ぶ人、卓球をするグループ、大浴場で過ごす人達などが描かれた「今様遊楽図」 山口晃 2000 
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パーキングに車が多数停まっているのには笑ってしまった。
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多数あったので、続きは その2 で。