2019年に、「アートの島=天王洲アイル」として、7箇所で7人のアーティストによる壁画や写真展示、橋のライトアップを含む国内最大級の MURAL PROJECT が行われ、そのうちの 6人 6作品が継続されていた。そして2020年に、4人が新規に参加。それら合わせた 10作品の壁画を見に行ってみた。
まずは2019年からの継続作品の6作品を。

淺井裕介「どこまでも繋がっていく」
淺井裕介氏の作品は、2010年に初めて開催された「あいちトリエンナーレ」で拝見したのが最初だが、部屋中に描かれた作品には圧倒された(その様子は こちら)。その内覧会・レセプションパーティで出されたチョコレートファウンテンのチョコレートを使って、その場でささっとテーブルクロスに絵を描かれたのが一番印象に残っている(その様子は こちら)。最近では、東京都庭園美術館で開催された「生命の庭」展では、パワフルな絵画や造形を披露されていた(その様子は こちら)。

巨大な壁画に圧倒された。以下の文章はHPより
絵描きとしていつかこのくらいのサイズの絵を描いてみたいといつもどの街でも大きな壁を見上げて思っていた、そしてその時に描くべきものの一つに水があると思っていた。こんなにも身近なしかし形のない水についてよくよく考えてみると不思議な気持ちになる、それはなんだか命について考えることと似ていると思う。空から降り注ぎ、地中の中へ栄養を運び、植物を育て、生き物へ入り込み、抜け出し、集まり、流れ、再び空へ、その繰り返し。言葉にするとなにやら難しいような言えてないような感じだけれど、大切な生命力の象徴として、素晴らしい豊かさを感じてもらえるようにこの絵をここに描きました。おいしい水を飲むように深く考えずに見てもらえたら嬉しいです。
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そして細部に遊び心があり、それを見つけるのも楽しい。
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Rafael Sliks ラファエルスリクス「Organic Blue」
ブラジル人作家。
ストローク(筆跡)は、人間の根源的なコミュニケーションの手段としての文字の原型であり、洞窟壁画からインスピレーションを受けています。生命の根源の水場にふさわしいと考えました。新たなコミュニケーションの発着場として船着場が新たなシンボルとなるように描きました。水辺との調和から水色にしました。天王洲という都市と水辺の自然の調和をストローク(筆跡)に込めています。
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ARYZ アリス 「"The Shamisen" Shinagawa 2019」
カリフォルニア生まれ、バルセロナ育ち。Octavi Arrizabalaga氏。
この壁画は鈴木春信の浮世絵「見立芥川」を題材にして描かれています。今回の壁画制作にあたって、日本について考えたときに、まず木版画(浮世絵)を題材にすることが頭に浮かんでいました。木版画や浮世絵をリサーチした中で、川辺で三味線を弾いている二人の女性の画を教えていただき、それを元にスケッチを制作しました。絵の中の三味線の弦の波形と、今回の壁の表面の波形がシンクロしていたことや、水辺にこの人物がいるという環境もぴたりと合い、天王洲に新しく浮世絵の風景をつくることができると考えています。
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これがインスピレーションを与えた鈴木春信の浮世絵。アリスの壁画の左手が、三味線ではなく、ベースか何かのように見えるのは私だけ?
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Lucas Dupuy ルーカス・デュピュイ「Looking for words」
ルーカスは幼い頃「難読症」を患い、正しく文章を読むことが困難で、彼には、文字の形がボヤけ、文字がページから溢れ出して飛び回って見えていたと。そのため「文字」が持つ意味の枠組みを超え、図形や構造体として見て、繰り返すリズムとして捉え直すことで、難読症を克服していった。彼の絵画表現はその経験を元にし、判読不可能で、未知のものを象徴する形、記号、図表として描いている。
「Looking for words」は文字を文字として認識できないと、この世界はどのように見えるのか。このことをテーマに制作しているシリーズの作品です。もし文字が読めず、文字として認識できないのならば、文字の形は建物に見え、そして地図にもなり得ます。様々な言語で働き暮らす人々と、その都市環境が天王洲にあると聞きました。この壁が様々な想像力を膨らませてくれるきっかけになると嬉しいです。
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DIEGO ディエゴ「東京 / 天王洲」
東京/ 天王洲の活気あるイメージをグラフィティを通して描いています。描かれているのは、天王洲の海辺や、道を行きかう人々の足、運河沿いに見えるビル群です。これらの絵は、実はグラフィティの文字になっていて、それらが重なり合い街の活気あり雑多なイメージを描きました。
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Stachu Szumski スタフ・シュムスキ「Oracle Born Script Connection」
この壁画は漢字の原初形態である「甲骨文字」を題材にしています。ポーランド出身のシュムスキーは世界中の古代文字を題材にした壁画や絵画作品を多数制作しているアーティストです。甲骨文字とは、亀の甲羅や獣の肩甲骨に小さな穴を穿ち、熱した金属棒を穴に差し込み、そこに生じたひび割れによって占いをするという古代中国の文化です。この壁画の右側にある抽象的な絵柄は、まさに甲骨にひび割れが入った模様を表しています。また周辺に描かれている文字や抽象的な記号は、甲骨文字をアルファベットと組み合わせ、シュムスキー独自に作り出した文字です。この文字は、水の中にいる微生物を顕微鏡で拡大して見たような、原始的で有機的な生物の連なりに見えます。シュムスキーのミステリアスな古代文字のような、微生物のようなパターンは、互いにくっついたり離れたりしながら存在し、天王洲運河沿いのこの壁画を通じて新たな営みが生まれてくる予感を感じさせるものとなります。
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2020年に新しく追加された4人の4作品は追って<2>で。


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