「WHO IS BANKSY? バンクシーって誰?」展 <1>からの続き。


「Monkey Parliament」2009
横幅約4メートルものキャンバスに描かれた油彩画のポスター版。イギリスがEU離脱で大混乱していた時期の作品で、イギリス議会が機能不全に陥っていると。油彩の原画は、2009年にブリストル市立博物館・美術館で開催された企画展「Banksy vs Bristol Museum」で初公開され、2019年サザビーズの競売に出品された時に13億円で落札された。展覧会は予告なしに開催され、過去最大規模として100作品以上が展示され、12週間で30万人を動員。
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「Morons」2007 
バンクシー作品は年々高騰していることを反映して、「こんなガラクタを買うバカの気が知れない」と言うメッセージが書き込まれている。
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「Sale Ends (v.2)」2007 
「セール最終日」を告げる看板の下に、ルネサンス絵画風に嘆き悲しむようにすがる女性たちの姿を描いたこの作品は、まるで宗教と化したような資本主義社会と消費文化への風刺を描いていると。
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「It's Called Advertising」2005
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「Trolleys」2007
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「Congestion Charge」2004
蚤の市で売られていた油彩画をバンクシーが購入し、右の標識と左のサインを描き足した。シュールレアリズムのデトーナメント(転用)と言う手法。看板は、ロンドンの渋滞緩和の為に車の乗り入れ時に料金を徴収する渋滞税の Congestion Charge について、のどかな田舎にまでお金をかけるのかと言う意味。ポール・スミス所蔵で、バンクシーが描き加えたことで3億円の価値になり、今回初めて公開された。
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「Barely Legal」2006 
ロサンゼルスで、バンクシーが「Barely Legal ギリギリ合法」と言う展覧会を開催し、本物のインドゾウにペイントをして出現させた。「Elephant in the room 大きな問題に誰も触れようとしない」見て見ぬふりをすると言う表現から。この展覧会は、わずか3日間限定で開催されたが、3万人の集客で、入場の為に2時間待ちだった。当時のブラット・ピットとアンジェリナ・ジョリー夫妻が、20万ポンド(約3000万円)を支払って作品を大量買いした。今から考えると非常に安価だが、当時としてはこれが大きな反響を呼び、バンクシー作品の転機となった。バンクシーは、この展覧会を開催する前に、パリス・ヒルトンの偽のデビューアルバムを勝手に制作し、HMVなどに置くなどし、話題作りをしていたのだとか。
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2003年、パレスチナ自治区のベツレヘムで作品を描き始める。パレスチナとイスラエルとの間に、イスラエル側が高さ8メートル全長700キロもの分離壁を作った。2017年に、バンクシーがあえてその壁の前にホテル「The Walled Off Hotel」をオープンし、世界一眺めの悪いホテルと言われているが、世界から既に10万人訪れている。NYの高級ホテルの Waldorf Hotel をもじっている。1917年頃からイギリスがパレスチナを委任統治し1948年に撤退したが、今の現状はイギリスに責任があるとし、統治開始からの100周年となってホテルを作った。現在も営業しているのだそう。
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ホテルの窓からは、分離壁しか見えないのだが、「風船と少女」のベツレヘム版などをホテルの窓に映写させている。

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「Welcome to Palestine "Walled Off Hotel"」2018
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「Flower Thrower」2005 実物大 高さ約5メートル。ベツレヘムのガソリンスタンドの壁に描かれた。投げている方角は分離壁の方になる。今もオリジナルの壁は現存。
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「Flower Chucker (with stars)」2003
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「Giant Kitten」2015 
2014年に廃墟となったガザ地区の北部に描かれた。子猫が遊ぶ毛糸の玉は、周囲にあった鉄くずを利用しており、銃弾の跡が顔にある。特定の場所でその特性を活かして制作するサイトスペシフィック・アート。実際に、この絵を通して国際機関が支援に乗り出すきっかけともなった。
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「Bullet-Proofed Dove」2005
旧約聖書の「ノアの方舟」では、大洪水が終わった後に空に放たれた鳩が、オリーブの枝を咥えて戻って来たので、近くに上陸すべき新天地があることをノア達が知った。パレスチナのベツレヘム市街の壁に描かれたこの鳩は、防弾チョッキを着て、胸はすでにロック・オンされている。
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「Wrong War」2004
2003年にロンドンで開催されたイラク戦争反対デモで、参加者に無料配布されたプラカードのひとつが元となっている。スマイルフェイスの死神の下に「間違った戦争」とあり、アメリカ率いる多国籍軍に追従してイラクに侵攻したイギリス政府への批判。
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「CND Soldiers」2005
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「Happy Choppers」2003
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「Golf Sale」2003
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「Have a Nice Day」2003
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「Silver Flag」2008
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「The Son of a Migrant from Syria」2015
アップル創業者で大富豪の故スティーブ・ジョブズ氏。右手には初代の Mac を持っている。2015年に起こったシリア難民危機の時に、フランスのカレーの難民キャンプでこの絵を描いたもので、「難民は国のお荷物だっていうけれど、ジョブズはシリア難民の息子。その昔、彼の父親をアメリカが受け入れたから、年間70億ドルもの税金を払う世界に冠たるアップル社が出来たんだ。」と言う声明も発表。
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「Dumbo」2014
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「Napalm (Serpentine edition)」2006 
ピューリッツァー賞を受賞した、ベトナム戦争下で村を襲ったナパーム攻撃から逃げる少女の写真をベースに、アメリカの消費文化を揶揄。ミッキーマウスとマクドナルドが少女を戦争と死から救いだそうとしているが、向かう先は軍国主義的物質主義という「すばらしき新世界」だと。
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「Girl With Balloon」2004
2018年10月にサザビーズの競売で1億5000万円で落札された瞬間にシュレッダーで裁断された。美術作品に投機目的で高値が付くことへの批判で行ったと言われているが、実際にはこの事件以降、バンクシーの作品の値段が大きく跳ね上がった。先月の10月14日に、再びサザビーズの競売にかけられ、予想落札価格は6~9億円と言われていたが、実際には25億円でおとされた。皮肉った行為がより値段の高騰を招いている。ベールをかぶった少女バージョンもあり、それはシリアの難民施設に寄付されたりもしている。
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「Girl with Balloon (diptych)」2006
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実物大の復元は、2002年にロンドンのウォータールー橋のたもとに描かれたもので、今は現存していない。ハートの中の20と描かれているものの意味はなく誰かが書き足したもので、右側の「THERE IS ALWAYS HOPE」も、数日後に誰かが書き加えた。2017年に、イギリス人が一番好きな芸術作品ランキングで1位を獲得した。
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「Banksy, Monkey Mask Session (Tag)」2003
バンクシー公式作品集「Wall and Piece」にも掲載された本人のポートレート写真。現在は、英国のナショナル・ポートレート・ギャラリーに正式に所蔵されている。チンパンジーのマスクは初期のバンクシーのアイコンとして使われていて、自身が監督した映画「Exit Through The Gift Shop」にも登場。
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それにしても驚いたのは、空いているかなと、平日のしかも遅めの15時頃に行ったにもかかわらず、屋内の待機場所で40分待ちの列。週末などには、建物の外にまで長蛇の列が出来ているのを何度か見たことがあるのだが、一体その時はどれぐらい待つのだろう。関係者の方が、あえて会場内の入場人数を減らしているので、中ではゆっくり見ることが出来るとのこと。確かに、時間予約制にしていても、ガンガン人が多かった展覧会などに比べて、中ではゆったり見られたのは非常に良かった。

会場:寺田倉庫G1ビル
会期:8月21日~12月5日’21

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