東京の東京国立近代美術館(MOMAT)、パリのパリ市立近代美術館(MAM)、大阪の大阪中之島美術館(NAKKA)のコレクションから、共通点のある作品でトリオを組み、構成するというユニークな展示。時代や流派、洋の東西を越えて、主題やモチーフ、色や形、素材、作品が生まれた背景など、トリオの共通点はさまざまで、110名の作家による150点あまりの作品で34組のトリオとなっているとのこと。3館の学芸員3名の方々が、10数回ものオンラインミーティングを行って試行錯誤され出来上がったとのこと。東京、パリ、大阪 から「Tokyo」「paRIs」「Osaka」の文字から、「TRIO展」というのもシャレている。
テーマ:それぞれの美術館のコレクションの始まりとなる作品
3つの美術館の原点を紹介する3作品。(左から)
佐伯祐三「郵便配達夫」1928 大阪中之島美術館 NAKKAが美術館構想のきっかけとなった実業家の山本發次郎氏が所有していた作品。
ロベール・ドローネー「舞台の前の裸婦(読書する女性)」1915 パリ市立近代美術館 MAMが開館のきっかけとなったジラルダン博士の遺贈品。
安井曽太郎「金蓉」1934 東京国立近代美術館 MOMATの最初の購入作品のひとつ。
萬鉄五郎「裸体美人」1912年 重要文化財 MOMAT 縦162センチ、横97センチと大きい。
寝ているのに立っているような縦長は画期的。明治45年3月に、東京美術学校(現在の東京藝術大学)の卒業制作展で描いた作品で、モデルは4歳年下の夫人であるよ志(よし)。「家の戸板をはずして斜めにして、そこに青い蚊帳を敷いて、その上に寝かされたが、斜めになっているから落ちていき、青蚊帳は膚に食い込んで痛い、それを何日もやらされた。本当に辛い思いでした。」と夫人の聞き取り本に書かれている。黒田清輝氏を西洋画家の教授とする教授達は、卒業生19名のうちの16番目の成績だったのだそう。因みに入学時の成績は完璧に模写するなどして首席。絵画の歴史に革命を起こした一枚として、重要文化財なのだが。
萬鉄五郎氏曰く、「半裸の女が赤い布を巻いて鮮緑の草原に寝転んで睥睨(へいげい=睨む)している図」と。この作品の5年前、同様に半裸に赤い布を腰に巻いた女性を黒田清輝氏が「野辺」で描いているのだが、そちらは女性も草の上に横たわっているが、視線は手に持つ一輪の花を見ている。つまり、自分の担当教授の黒田清輝氏に挑んでいる。
テーマ:自画像
テーマ:それぞれの美術館のコレクションの始まりとなる作品
3つの美術館の原点を紹介する3作品。(左から)
佐伯祐三「郵便配達夫」1928 大阪中之島美術館 NAKKAが美術館構想のきっかけとなった実業家の山本發次郎氏が所有していた作品。
ロベール・ドローネー「舞台の前の裸婦(読書する女性)」1915 パリ市立近代美術館 MAMが開館のきっかけとなったジラルダン博士の遺贈品。
安井曽太郎「金蓉」1934 東京国立近代美術館 MOMATの最初の購入作品のひとつ。
テーマ:川のある都市風景
小泉癸巳男「昭和大東京百図絵」より 1931~1936 MOMAT
小出楢重「街景」1925 NAKKA
アルベール・マルケ「雪のノートルダム大聖堂、パリ」1912年頃 MAM
テーマ:都市と人々
モーリス・ユトリロ「セヴェスト通り」1923 MAM
長谷川利行「新宿風景」1937 MOMAT
河合新蔵「道頓堀」1914 NAKKA
テーマ:加速する都市
フェリックス・デル・マルル「オルレアン駅のメトロ」1912~1914 MAM
川上涼花「鉄路」1912 MOMAT
ウンベルト・ボッチョーニ「街路の力」1911 NAKKA
テーマ:広告とモダンガール
早川良雄「第11回秋の秀彩会」1953 NAKKA パブロ・ガルガーリョ「モンパルナスのキキ」1928 MAM
杉浦非水「東京三越呉服店」1925 MOMAT
モーリス・ユトリロ「モンマルトルの通り」1912 MAM
松本竣介「並木道」1943 MOMAT
佐伯祐三「レストラン(オテル・デュ・マルシェ)」1927 NAKKA
テーマ:近代都市のアレゴリー
ラウル・デュフィ「電気の精」1953 MAM
左側には、パリの上空を電気の精が飛んでいる様子が描かれている。
池田遙頓「戦後の大阪」1951 NAKKA
古賀春江「海」1929 MOMAT 関東大震災後のモダンブームにより、人工と自然を対比
テーマ:都市のグラフィティ
ジャン=ミシェル・バスキア「無題」1984 NAKKA シルクスクリーンとドローイングによる。80年代のNYのストリートを描いている。
佐伯祐三「ガス灯と広告」1927 MOMAT 二度目のフランス滞在時である20年代に、パリの街角のポスターを描いている。
フランソワ・デュフレーヌ「4点1組」1965 MAM
60年代のパリで、貼られていた4枚のポスターをはがし、裏返して傷をつけ、左右反転となっている。
テーマ:空想の庭
いずれも草木や花や果物が画面に多く描かれており、それぞれの画家達の空想の中の庭のようだと。
いずれも草木や花や果物が画面に多く描かれており、それぞれの画家達の空想の中の庭のようだと。
辻永「椿と仔山羊」1916 MOMAT
ラウル・デュフィ「家と庭」1915 MAM
アンドレ・ボーシャン「果物棚」1950 NAKKA
テーマ:夢と幻想
マルク・シャガール「夢」1927 MAM 月と地面の天地が逆になっている。真夏の庭の夢。
三岸好太郎「雲の上を飛ぶ蝶」1934 MOMAT 蝶=霊魂と。
サルバドール・ダリ「幽霊と幻影」193 NAKKA 女性=母、木=死を表しているとのこと。
テーマ:戦争の影
ジャン・フォートリエ「森」1943 MAM
北脇昇「空港」1937 MOMAT
吉原治良「菊(口)」1942 NAKKA
テーマ:現実と非現実のあわい
それぞれの画家が、過去の名画とのコラボ?オマージュ?として、描き込んでいる。
それぞれの画家が、過去の名画とのコラボ?オマージュ?として、描き込んでいる。
ヴィクトル・ブローネル「ペレル通り2番地2の出会い」1946 MAM
かつてアンリ・ルソーが住んでいたペレル通り2番地2に転居した為、ルソーが描いた「蛇使いの女」の中に、自らが生み出した巨大な頭部と2つの身体と6本の腕を持つ「コングロメロス」を描いている。
ルネ・マグリット「レディ・メイドの花束」1957 NAKKA
ボッティチェリの「春」(1482年頃)の花の女神フローラを重ね描いている。
有元利夫「室内楽」1980 MOMAT フレスコ画のように描いている。
テーマ:まどろむ頭部
ジョルジョ・デ・キリコ「慰めのアンティゴネ」1973 MAM
コンスタンティン・ブランクーシ「眠れるミューズ」1910~1911年頃 NAKKA
イケムラレイコ「樹の愛」2007 MOMAT
テーマ:モデルたちのパワー
アンリ・マティス「椅子にもたれるオダリスク」1928年 MAM
ハーレムの女性に扮するモデルを描いている。
ハーレムの女性に扮するモデルを描いている。
萬鉄五郎「裸体美人」1912年 重要文化財 MOMAT 縦162センチ、横97センチと大きい。
寝ているのに立っているような縦長は画期的。明治45年3月に、東京美術学校(現在の東京藝術大学)の卒業制作展で描いた作品で、モデルは4歳年下の夫人であるよ志(よし)。「家の戸板をはずして斜めにして、そこに青い蚊帳を敷いて、その上に寝かされたが、斜めになっているから落ちていき、青蚊帳は膚に食い込んで痛い、それを何日もやらされた。本当に辛い思いでした。」と夫人の聞き取り本に書かれている。黒田清輝氏を西洋画家の教授とする教授達は、卒業生19名のうちの16番目の成績だったのだそう。因みに入学時の成績は完璧に模写するなどして首席。絵画の歴史に革命を起こした一枚として、重要文化財なのだが。
萬鉄五郎氏曰く、「半裸の女が赤い布を巻いて鮮緑の草原に寝転んで睥睨(へいげい=睨む)している図」と。この作品の5年前、同様に半裸に赤い布を腰に巻いた女性を黒田清輝氏が「野辺」で描いているのだが、そちらは女性も草の上に横たわっているが、視線は手に持つ一輪の花を見ている。つまり、自分の担当教授の黒田清輝氏に挑んでいる。
因みに、その黒田清輝氏の「野辺」1907は:
テーマ:自画像
恩地孝四郎「自画像」1915 NAKKA
シャイム・スーティン「グロテスク」1922~1925 MAM
丸木峻(赤松俊子)「自画像」1947 MOMAT
テーマ:こどもの肖像
藤田嗣治(レオナール・フジタ)「少女」1917 MAM
岸田劉生「麗子肖像(麗子五歳之像)」1918 MOMAT
原勝四郎「少女像」1937 NAKKA
テーマ:女性たちのまなざし
シュザンヌ・ヴァラドン「自画像」1918 NAKKA
ピエール・ボナール「昼食」1932 MAM
藤島武二「匂い」1915 MOMAT
作品が多数ある為、<2>に続く。
会場:東京国立近代美術館
会期:5月21日~8月25日’24
コメント