川元良一氏設計。
川元氏は、旧丸ビル、九段開館、昭和2年竣工の青山同潤会アパートなどを設計された方。

昭和7年(1932年)竣工。銀座1丁目9番地に位置する。奥野商会創業者の初代奥野治助氏は、ゴム事業や鉄道車両の部品製造で財をなしたが、関東大震災に遭い、49坪の会社が倒壊焼失。2代目の奥野治助氏がこの旧銀座アパートメントを建て、ビルの奥には、今も奥野商会がある。
鉄筋コンクリート造り、地上6階、そしてペントハウスと地下1階。2~6階に、ワンフロア7戸の合計35戸で、1戸は台所付きの3.5坪。地下室には、全館暖房のボイラー室と共同浴場。ペントハウスのある屋上階には、洗濯室と物干場に談話室。20世紀初頭の産業化や都市化を反映した機能的なデザインとなっており、日本の集合住宅初のエレベーター、セントラルヒーティング、未だ珍しかった電話など、最新設備が整っていた。
歌手の佐藤千夜子、詩人の西条八十、作家の菊池寛、映画監督の溝口健二、女優の田中絹代らが住んでおり、集うサロンもあった。
IMG_E2051

IMG_2090

タイル張りなのだが、1個ずつ異なっている。
IMG_2053-001

IMG_2052

IMG_2085

IMG_2088

IMG_2086

IMG_2087

日本の集合住宅初のエレベーターは、今も現役。乗り方などが貼り紙で書かれている。
IMG_2058

IMG_2069

IMG_2054-001

IMG_2055

色々な配線がむき出しだったり、廊下のすり減り方もなかなか凄い。かつてあった(今も表参道ヒルズに直結して一部分だけ残っているが)、青山同潤会アパートに雰囲気が似ている。
IMG_2066

IMG_2071

IMG_2078

今は20室がアートギャラリーとなっており、3階のギャラリー「巷房」は、初めて入居した老舗。306号室はかつてあった「スダ美容室」で、オーナーの須田よしこさんは80年代に美容室を廃業して、住居として使用。最後の居住者で、享年100歳だった。この時は見られなかったが、内部は今でもその当時のまま保存されており、天井のRや、3つの鏡や電話台などが見られるとのこと。
IMG_2076

非常に面白いのは、階段脇の窓からは、隣のビルが見えるのだが、フロアの高さが異なり、エッシャーのだまし絵か、レアンドロ・エルリッヒ氏の作品のよう😂
IMG_2080

IMG_2068

IMG_2073

IMG_2074

IMG_2083

左側が一期工事で昭和7年竣工、右側は二期工事で昭和9年竣工。当初は同時に建てる予定だったが、震災後による資金繰りから、新館が2年後に建てられることになった。時間差で建てられた為に差が出来たとのことだが、外観は合っているので、何故内部も同じ高さにしなかったのだろう???
IMG_2089