再開館記念「不在」トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル<1>ロートレックからの続き。

ソフィ・カル Sophie Calle (1953~)氏が、長年にわたり「喪失」や「不在」について考察を巡らせていることから、今回の展覧会で「不在」という主題を提案されたとのこと。

「私の母、私の猫、私の父」2017 ご両親共、3ヶ月かけて亡くなったことが文章で書かれている。
「私の母、私の猫、私の父」(『自伝』シリーズより)2017

「サイレント心臓発作」2017 お父様が倒れた時、カル氏も帯状疱疹と心臓発作にみまわれたと。
IMG_E9746

「今日、私の母が死んだ」2013
1986年に母は日記に「今日、私の母が死んだ」と書き、2006年に私(=カル氏)が「今日、私の母が死んだ」と書くが、もう私の為にそう言ってくれる人はいないと。
「今日、私の母が死んだ」2013

IMG_E9753-0

作家蔵の時計
作家蔵の時計

「目のまわりのあざ」2020 カル氏の父が、父の葬儀で涙を流すなと命じていて、カル氏は涙をこらえていたが、その夜に半分眠ったままガラス戸に顔をぶつけ、目の周りにあざが出来て、涙の形になったと。
「目のまわりのあざ」2020

「どなたさま」2017 父親の死後、うっかり携帯で父の電話番号にかけてしまったところ、画面に父親の顔写真と名前が表示されたと。
「どなたさま」2017

「彼のまなざし」2020 見知らぬ人達の写真を撮ったところ、父親が気に入ってくれたので、カル氏はアーティストになり、父親は最初の鑑賞者になったが、父親が亡くなるとそのまなざしも失われたと。
「彼のまなざし」2020

「フェルメール『合奏』」(『あなたには何が見えますか』シリーズより)2013 (画像はHPより)
1990年3月18日、ボストンのイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館からレンブラントやフェルメール、マネらの作品が盗まれた事件が起き、盗難にあった作品のうち数点は額縁だけが残されていた。1994年、それら空になった額縁だけが作品がもとあった場所に置かれたことで、絵画の「不在」はさらに強調されることになり、カル氏は、美術館の学芸員や警備員、そして来館者に、この額縁のなかに「何が見えるか」と問いかけて作品とした。
f

「パブロ・ピカソ『浴女たち』1918年夏」(『監禁されたピカソ』シリーズより)2023 (画像はHPより) 2023年にパリのピカソ美術館が、彼の没後50周年を記念してソフィ・カル氏を招聘して開催されたカル氏の個展を再構成したもの。コロナ禍でロックダウン中のパリで特別にピカソ美術館を訪れた際、ピカソの作品は保存のために光を遮る保護紙で覆われて壁にかけられていた。その光景から、ピカソの「不在」をテーマにした展覧会であれば、自分が何かを表現できるかもしれないと感じ、制作に臨んだとのこと。
0

「北極」(『なぜなら』シリーズより)2018 (画像はHPより)
額装された写真の前面にテキストが刺繍された布が垂らされ、その布をめくり、写真を見ることが出来る。布に刺繍された「Parce que(なぜなら)」から始まるテキストは、なぜこのイメージが存在するのか、なぜ作家がこの特定の瞬間や場所を選んだのかを説明している。
「北極」(『なぜなら』シリーズより)2018

「オートプシー autopsy」2018 (画像はHPより)
2020年に開催される予定だったが、コロナの為に2024年に延期された。
「オートプシー autopsy」2018-001

会場:三菱一号館美術館
会期:11月23日’24~1月26日’25

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
にほんブログ村