今津景氏の「タナ・アイル」展。
インターネット等で採取した画像をPhotoshopで加工しながらコンピュータ上で構成を練り、その下図をもとにキャンバスに油彩で描くという手法で制作されている。
今津氏は、2017年にアーティスト・イン・レジデンスをきっかけにインドネシアに移住。そして出産もされた。インドネシア語でタナは土、アイルは水を指し、このふたつを合わせると「祖国」という意味になるのだそう。作品イメージは、地球環境問題やエコフェミニズム、植民地主義など、様々な要素や現代的な問題意識を提示され、第二次世界大戦における日本の「加害」の歴史について、インドネシアをはじめとする東南アジアの視点から見直すようになったとのこと。
「Bandoengsche Kininefabrik」2024
マラリアとその特効薬として知られるキニーネを題材にした作品。インドネシアのバンドンは、キニーネで世界一の生産地となったのだそう。
「Anda Disini(You are here)」2024
「GOA, JAPANG」の文字とともに日本軍の兵士が地元の人を使役している様子が描かれている。ゴア・ジパンとはインドネシア・バンドンの北部に位置する洞窟で、かつて日本軍が軍事要塞として使用していた場所。日本軍がインドネシアの人々を“ROMUSHA”として強制的に従事させ、固い岩を掘削するなど作業にあたらせていたのだそう。
手前左:「Homo Floresiensis」、手前右:「Leptoptilos Robustus」2024
インドネシアのフローレス島で発見された小型のヒト属と考えられる絶滅種の Homo Floresiensis をテーマにし、右側の絶滅した大型の鳥と対峙している。
奥:「Repatriation」2015 昨秋に開催された高橋龍太郎コレクション展にも展示されていた作品。その時の様子は:
「Watering Ape」2017
「Candy in Amber Room」2017
パートナーであるバグース・パンデガ Bagus Pandega 氏による作品「Yesteryuears」2023
シドアルジョという世界最大の泥火山の噴火によって家を失った人々に家の形を聞き取り、それを3Dプリンタで再現した作品。泥火山の噴火は、天然ガスの掘削作業を行なった会社が引き起こした「人災」としての部分が大きいのだそう。
「When Facing the Mud (Response of Shrimp Farmers in Sidoarjo)」2022
「SATENE's Gate, Patalima & Patasiwa sculptures」2023
神話「ハイヌウェレ」にインスピレーションを得たセクション。鉄製のゲートがある。インドネシア・セラム島の神話に登場するハイヌウェレは、ココナッツから生まれ、自分の排泄物から異国の宝物を生み出す力を持つという女性の名前。最初はありがたがられたが、やがてその神秘的な力を恐れた男たちによって生き埋めにされてしまうが、彼女の遺体が切断されて土地に埋められると、そこからタロ芋やヤムイモといった様々な芋が育ち、島の人々を支えたと言われている。ゲートの中心にいるのはサテネという神で、ハイヌウェレが殺されたことに怒り、土から掘り起こしたハイヌウェレの腕を掴んでおり、サテネは鉄のゲートを作り、ハイヌウェレを殺した人々にそこを通るように命じたのだそう。
神の身体の中心にある子宮は芋の花として表現され、母性と豊穣のイメージとなっている。
実際に、今津氏が出産後、ジャワ島の伝統に沿って、出産時の胎盤をご家族によって庭先に埋めてもらい、そこからヒトデカズラという植物が育ったのだそう。
「under the mango tree」2023
「The Donut of the Heart」2019
「Proliferation (pelvis on green)」2021
「My Heart in My Hand」2020
「RIB」2021
「Bladder and Kidney」2023
「Lungs」2024
「Memories of the Land/Body」2020
「Tiger in My Arm」2021
「My Heart In My Hand (Gray Shade)」2020
「Harvesting from the Buried Goddess Body」2023
「Skull of Homo Floreslensis」2023
「Hainuwele」2023
「Lost Fish」2021
「世界一汚染された川」と呼ばれるチタルム川にかつて生息していた魚の図版をもとに描かれた作品群で、繊維工場が垂れ流す有毒廃棄物や生活排水やゴミの投棄によって、川の魚の6割が死滅したのだそう。
「Tropical Stamp」2024
今までに見た今津景氏の作品は こちら
会場:東京オペラシティアートギャラリー
会期:1月11日~3月23日’25

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インターネット等で採取した画像をPhotoshopで加工しながらコンピュータ上で構成を練り、その下図をもとにキャンバスに油彩で描くという手法で制作されている。
今津氏は、2017年にアーティスト・イン・レジデンスをきっかけにインドネシアに移住。そして出産もされた。インドネシア語でタナは土、アイルは水を指し、このふたつを合わせると「祖国」という意味になるのだそう。作品イメージは、地球環境問題やエコフェミニズム、植民地主義など、様々な要素や現代的な問題意識を提示され、第二次世界大戦における日本の「加害」の歴史について、インドネシアをはじめとする東南アジアの視点から見直すようになったとのこと。
「Bandoengsche Kininefabrik」2024
マラリアとその特効薬として知られるキニーネを題材にした作品。インドネシアのバンドンは、キニーネで世界一の生産地となったのだそう。
「Anda Disini(You are here)」2024
「GOA, JAPANG」の文字とともに日本軍の兵士が地元の人を使役している様子が描かれている。ゴア・ジパンとはインドネシア・バンドンの北部に位置する洞窟で、かつて日本軍が軍事要塞として使用していた場所。日本軍がインドネシアの人々を“ROMUSHA”として強制的に従事させ、固い岩を掘削するなど作業にあたらせていたのだそう。
「Curiosity cabinet from Ambon」2022
手前左:「Homo Floresiensis」、手前右:「Leptoptilos Robustus」2024
インドネシアのフローレス島で発見された小型のヒト属と考えられる絶滅種の Homo Floresiensis をテーマにし、右側の絶滅した大型の鳥と対峙している。
奥:「Repatriation」2015 昨秋に開催された高橋龍太郎コレクション展にも展示されていた作品。その時の様子は:
「Watering Ape」2017
「Candy in Amber Room」2017
パートナーであるバグース・パンデガ Bagus Pandega 氏による作品「Yesteryuears」2023
シドアルジョという世界最大の泥火山の噴火によって家を失った人々に家の形を聞き取り、それを3Dプリンタで再現した作品。泥火山の噴火は、天然ガスの掘削作業を行なった会社が引き起こした「人災」としての部分が大きいのだそう。
「When Facing the Mud (Response of Shrimp Farmers in Sidoarjo)」2022
「SATENE's Gate, Patalima & Patasiwa sculptures」2023
神話「ハイヌウェレ」にインスピレーションを得たセクション。鉄製のゲートがある。インドネシア・セラム島の神話に登場するハイヌウェレは、ココナッツから生まれ、自分の排泄物から異国の宝物を生み出す力を持つという女性の名前。最初はありがたがられたが、やがてその神秘的な力を恐れた男たちによって生き埋めにされてしまうが、彼女の遺体が切断されて土地に埋められると、そこからタロ芋やヤムイモといった様々な芋が育ち、島の人々を支えたと言われている。ゲートの中心にいるのはサテネという神で、ハイヌウェレが殺されたことに怒り、土から掘り起こしたハイヌウェレの腕を掴んでおり、サテネは鉄のゲートを作り、ハイヌウェレを殺した人々にそこを通るように命じたのだそう。
神の身体の中心にある子宮は芋の花として表現され、母性と豊穣のイメージとなっている。
実際に、今津氏が出産後、ジャワ島の伝統に沿って、出産時の胎盤をご家族によって庭先に埋めてもらい、そこからヒトデカズラという植物が育ったのだそう。
「under the mango tree」2023
「The Donut of the Heart」2019
「Proliferation (pelvis on green)」2021
「My Heart in My Hand」2020
「RIB」2021
「Bladder and Kidney」2023
「Lungs」2024
「Memories of the Land/Body」2020
「Tiger in My Arm」2021
「My Heart In My Hand (Gray Shade)」2020
「Harvesting from the Buried Goddess Body」2023
「Skull of Homo Floreslensis」2023
「Hainuwele」2023
「Lost Fish」2021
「世界一汚染された川」と呼ばれるチタルム川にかつて生息していた魚の図版をもとに描かれた作品群で、繊維工場が垂れ流す有毒廃棄物や生活排水やゴミの投棄によって、川の魚の6割が死滅したのだそう。
「Tropical Stamp」2024
今までに見た今津景氏の作品は こちら
会場:東京オペラシティアートギャラリー
会期:1月11日~3月23日’25

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