今シーズンの新作である「エジプトのヘレナ」のシーズンプレミアナイト。

by Richard Strauss
Conductor : Fabio Luisi
Helena, wife of Menelas : Deborah Voigt (ソプラノ)
Aithra, a sorceress : Diana Damrau (ソプラノ)
Menelas : Torsten Kerl、Michael Hendrick(テノール)

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    幕のデザインも斬新 最後は地球をバックに宇宙船を思わせるセット 左から Michael Hendrick, Deboraha Voigt, Diana Damrau

とにかく斬新な舞台に驚いた。
奥に向かって勾配のきついスロープになった舞台に、非常に大きな壁や扉が覆いかぶさるようにあり、より立体を感じさせるような舞台装置。

ソプラノの競演に加えてテノールという組み合わせのアリアずくめは聴き応えがある。
ソプラノの Diana Damrau は線は細いが透き通る声、もう一人のソプラノの Deborah Voigt はさすがに声量が物凄く、「競演」という言葉通りだった。
前半はテノールが今日がメットデビューの Torsten Kerl だったが、声は非常に綺麗だがいかんせん声量が少なく、細い Diana Damrau よりも声が小さいのではないかと思われるぐらいだった為、ソプラノ2人との競演の時は少々辛いものがあった。
後半になって、いきなりテノールがロースターの Michael Hendrick になったのには驚いたが変更のお知らせの時には会場がどよめきよりも湧いた感じだった。
が、Michael Hendrick は声量があったとしても、声質は Torsten Kerl と比較するとやはり Torsten Kerl かと。
つまり、今回はひたすらソプラノ二人のオペラだったように思われる。

舞台装置も空にアニメの彗星のような物が降りて来たりと非常に驚かされたが、前半の女性コーラスは皆がドイツの妖精のような髭を蓄え髪がもじゃもじゃな格好で、しかも Helena が現れる時には眩しさのあまりサングラスを全員がかけるというオチ?付き。
後半の男性コーラスは、顔を茶色のドウランで塗り、真っ黒なオールバックの鬘を付け真っ黒なサングラスをして長いコートを着てまるで映画マトリックスのエージェント一団のよう。
矢が撃たれるようなシーンでは、矢印の形をした赤い電光が壁などについたりと、もうビックリ。
あまりにメットでは斬新過ぎたのか、前半だけで帰ってしまうお客さんを複数見かけた。シュトラウスの音楽もあまり耳なじんでいない物が多いせいか、お客さんも途中で時計を気にする人やガサガサ座り直す人なども多かったのは事実。
最後は宇宙から見た地球を想像させるような背景に、宇宙船に乗り込む Helena一家というようなエンディング。
初日の為、最後のカーテンコールには舞台監督、ライトデザイン、振り付け士が舞台へ上がっていたが、この斬新さや奇想天外なセッティング等、批評家の目には吉と映るのか凶と映るのか。
その為かどうだかわからないが、初日の今日も当日券やラッシュ券などを売っていた。

追記
Deborah Voigt は、アメリカ人のソプラノだが、以前にロンドンのコヴェントガーデンで太すぎるとされ、その後で胃を小さくする手術をして140ポンド痩せたと言われている。