モーツアルトの喜劇である「フィガロの結婚」を観に行った。

しかし今回は別の企画もある。昨年からメトが始めた「シングルナイト」という企画。
パートナーの居ない人に出会いの場を与えようというもので、男女の20歳代、30歳代、40歳代以上、ゲイとレズビアン、というカテゴリーでそれぞれ日程が決まっており、今夜はゲイとレズビアンの方達のシングルナイトでもあった。
該当する登録した人達だけは、100ドルちょっとの金額で、オーケストラ席で鑑賞でき、開演前と休憩時に、バルコニー界隈の特設エリアでシャンパンなどが飲み放題となり相手を探すことが出来るという趣向。
そのせいもあってか、今夜は男性の、しかも割と年配の1人客がとても多い印象。普段は見かけないような風貌の人も居た。長髪で髪を後ろで三網にしたハーレーダビッドソンなどにまたがっていそうなイージーライダー風の男性や、カーボーイハットをかぶったマッチョ系男性や、線の細い華奢な神経質そうな男性や、ファッション業界にでもおられそうなおしゃれな男性や、、、
該当する女性の参加者は少ないようだった。
参加者は、各人名札を胸につけているのだが、席に着く時にははずす人もあれば、ずっとつけたままの人も。
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by Wolfgang Amadeus Mozart
Libretto by Lorenzo Da Ponte after Pierre-Augustin Beaumarchais's play "La Folle Joumee, ou Le Mariage de Figaro"
Conductor : Philippe Jordan

フィガロ(バス):前作「セビリアの理髪師」では伯爵の恋を取り持ち、伯爵の家来となった
 Figaro : Bryn Terfel
スザンナ(ソプラノ):伯爵夫人の小間使い
 Susanna : Ekaterina Siurina
ドン・バルトロ(バス):前作「セビリアの理髪師」でロジーナと結婚したがっていたがフィガロに邪魔され伯爵に奪われたためフィガロに恨みがある。実はフィガロの父。
 Don Bartolo Maurizio Muraro
マルチェリーナ(メゾソプラノ):女中頭。実はフィガロの母。
 Marcelina : Marie McLaughlin
ケルビーノ(メゾソプラノによるズボン役):伯爵の小姓。
 Cherubino : Kate Lindsey
アルマヴィーヴァ伯爵(バリトン):前作「セビリアの理髪師」ではフィガロのお陰で現夫人と結婚。
 Count Almaviva : Simon Keenlyside
ドン・バジーリオ(テノール):伯爵の手下。音楽教師。
 Don Basilio : Greg Fedderly
伯爵夫人ロジーナ(ソプラノ)
 Countess Almaviva : Anja Harteros
アントニオ(バス):庭師。バブバリーナの父親でスザンナのおじ。
 Antonio : Patrick Carfizzi
クルツィオ(テノール):裁判官。
 Don Curzio : Tony Stevenson
バルバリーナ(ソプラノ):庭師アントニオの娘でスザンナの従姉妹。
 Anne-Carolyn Bird

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HPより

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ここ最近、個性の強いソプラノやテノールなどの作品を多く観たこともあってか、群像劇もなかなかこれはこれで面白かった。
主要な5人(フィガロ、スザンナ、伯爵、伯爵夫人、ケルビーノ)はそれぞれとても良いが、特に目を惹いたのは、伯爵夫人を演じたアニア・ハーテロス。その美貌とすらっとした容姿と素晴らしいソプラノには驚いた。3幕で、伯爵と結婚した当時の日々を回想するアリア「あの楽しい思い出はどこに」は秀逸だった。今期この役でしか登場しないのが残念。
スザンナ役のエカテリーナ・シウリナは昨シーズン リゴレット を観たが、今回のスザンナ役は喜劇ということもあってかイキイキして見えた。それにやはり彼女の高音はとても良い。
ズボン役であるケルビーナ役のケート・リンゼイは美形な上、なかなかコミカルで、拍手も多かった。12月の「ロミオとジュリエット」を観に行く予定だが、彼女が出演予定なので、今から楽しみ。
フィガロのブライアン・ターフェルは、大柄で声も良く通り、コミカルではまり役かと。しかし、このオペラではタイトルロールではあっても、主役は女性陣という印象。
伯爵役のサイモン・キーリンサイドはなかなかハンサムで格好良く、伯爵のイメージだが、歌が弱いかと。もともと低音が弱いように感じた上、後半になってからのアリアはあまり声が届かない。なかなかニヒルな伯爵かと思いきや、最後にはとび蹴りをしようとしてすっころぶようなコミカルな演技もあり、意外性はあったが。

8時開演で休憩一回を含めて終了が11時45分という長いオペラということもあってか、休憩後に少し席が空いていて、何人かは帰ったもよう。シングルナイトの成果で早々に引き上げられた人達の席だったのかは不明だが、横に座っておられたもともとカップルだった男性二人は最後までしっかり鑑賞しておられた。