今月のメトでは フィガロの結婚 のほか、魔笛も公演されるモーツアルト月。
今期の「魔笛」は8回ある公演のうち、ドイツ人で美形のディアナ・ダムラウ Diana Damrau がパミーナ役と夜の女王役を公演時期の前半後半で演じ分けるという企画。その活躍ぶりをマルチプルパーソナリティとしてメトでも広告塔として宣伝していたが、今夜は彼女の夜の女王を見に。

by Walfgang Amadeus Mozart
Conductor : Kirill Petrenko

王子タミーノ(テノール)Tamino : Joseph Kaiser
夜の女王の3人の侍女(ソプラノ・メゾ・アルト)
First Lady : Wendy Bryn Harmer
Second Lady : Maria Zifchak
Third Lady : Wendy White
鳥刺しパパゲーノ(バリトン)Papageno : Stephane Degout
夜の女王(ソプラノ)Queen of the Night : Diana Damrau
奴隷頭の黒人モノスタトス(テノール)Monostatos : Dietmar Kerschbaum
夜の女王の娘パミーナ(ソプラノ)Pamina : Genia Kuhmeier
弁者(バリトン)Speaker : Eike Wilm Schulte
高僧ザラストロ(バス)Sarastro : Reinhard Hagen
老女/パパゲーナ(ソプラノ)Papagena : Monica Yunus
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左はパパゲーノのドグー 右はパミーナ役をしていた時のダムラウ

お目当てのダムラウの夜の女王だが、一幕目のアリア「ああ、怖れおののかなくても良いのです、わが子よ O zitt're nichit, mein lieber Sohn!」の一番の高音域ではないところが一度雑に聴こえてしまった。また、二幕目の一番有名なアリア「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え Der Holle Rache kocht in meinem Herzen」の3回超絶のコロラトウーラがあるが、その二回目に少々違和感があった。今日は調子が悪かったのかも知れない。

パミーナ役のゲニア・キューマイアー Genia Kuhmeier はこの演目がメトデビューとなっているが、とても良い。ダムラウが8回の公演の前半でパミーナ役をしたが、ダムラウはどちらかと言うと鋭いような感じの声なので(彼女のパミーナ役は実際には聴いていないが)、キューマイアーの方が向いているのかも。

タミーノ役のジョゼフ・カイザー Joseph Kaiser のテノールはとても良いかと思うのだが、一度息次をする際に、まるでエンリケ・イグレシアスとは言わないが、甘い声が出ていたのが気になってしまった。

パパゲーノ役のステファン・ドグー Stephen Degout は良いとは思うのだが、どうしても以前の鍛え抜かれた容姿のネイサン・ガンのパパゲーノの印象があるので、太めの体が重そうに見えてしまった。

パパゲーノとパパゲーナの有名な「パ、パ、パ」となるデュエットは、パパゲーナのソプラノが弱くてあまり面白くなかったかと。

昨年の新しいプロダクションで、ミュージカルの「ライオン・キング」などを手掛けた舞台監督のジュリー・ティモアが演出、衣装、人形デザイン等をしているので、奇抜。
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今日も立ち見が出る盛況ぶりだったが、観客はいつも以上に良く笑う。棒で動かすクマが出てくるシーンでは、タミーノのアリアが歌われているのだが、歌とは関係なくクマの可笑しな動きに歌の最中であろうが観客からは笑い声が起こったり、別のコミカルな部分でも、歌の途中にもかかわらず思わず拍手をしてしまったお客さんまで居た。
確かにパパゲーノが食事をするシーンではスパゲティが出て来て「アル・デンテ」と言った時には私も思わず笑ってしまったが。
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昨年とほとんど変わらない「ラ・トラビアータ」はセットなどが今期少し豪華にはなったとは言え、ほとんどストーリーに邪魔にならない程度なので、代わり映えしなくても逆に気にならないが、次々と繰り出される奇抜なセットや衣装はより鮮明に記憶に残っているせいか、昨年と変わらないことが面白みを半減させてしまっているような印象を受けた。