EDUCATIONAL THEATER OF NEW YORK (ETNY) という劇団のアーネスト・ヘミングウェイの短編「フランシス・マコーマーの短い幸福な生涯」のお芝居を観に行った。6日間行われるが、その初日。
ウエストヴィレッジにある WINGS THEATRE という客席100席程度の小劇場だが、観客はほぼ満員。

Francis Macomber, an American diplomat : Carlo Fiorletta
Margo, his wife : Devin Moriarity
Robert Wilson, their guide : Tim Douglas
Gunbearer : Simcha Borenstein

劇場内部の様子(HPより)
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この劇団の最大の特徴は、アメリカ人が行うお芝居だが、英語を母国語としていない観客を対象にお芝居を行うもの。
シーンごとに、プレゼンターがお芝居の途中でお芝居を止め、観客席を明るくして内容の主だったポイントをわかるように観客に質疑応答していく。そして、再度そのシーンを繰り返して観たければ観客は「Repeat!! 繰り返し!!」と言い、そのまま続きを観たければ「Continue!! 続けて!!」と言う。
一度その細切れでの各シーンを観た後で、再度最初から一切中断をせずにお芝居を観直す。
そして、最後には各役者が舞台に出て来て、観客と役者との質疑応答となる。

今回のこのお芝居は全部で7シーンからなるので、都合6回の中断と最後にプレゼンターが、皆が話がわかるようにストーリーのポイントを指摘するよう観客に問いかけていく。
中断なしの通し芝居で20分~25分程度の短いものなので、二度観ても長く感じられず苦にならない。

やはり面白かったのは、お芝居が終わって、各役者が観客の質問に答えてくれる場面。
フランシス夫人のマルゴが、ケニアのサファリで夫と共にバッファローハンティングをしていて、夫の背後からライフルでバッファローを撃っていたところ、夫を撃ってしまい夫を殺してしまう。ハンティングのガイドをしてくれているウイルソン氏と浮気をしているマルゴは、果たして誤射したのか? それとも計画的犯行なのか? というストーリーの核心部分の質問に及ぶと、マルゴ役の女優さんはマルゴになりきって「あまりに突然起こってしまったのでわからないわ」とかわしてみたり。
浮気相手のウイルソン氏がマルゴの夫であるフランシスにハンティング中も再三お酒を勧めているのは、ウイルソン氏も反抗に加担していたのか?という質問には、ウイルソン氏に扮した男優さんは「ええ? 僕がお酒を勧めていた? 自分も一緒に飲んでいたので良く覚えていないよ」と答えてみたりと、会場は爆笑の渦。
ケニア人の役をやった役者さんに質問がいくと、彼はスワヒリ語しかわからないから質問の意味がわからないから質問はなし、などとジョークも。

会場は追加の補助席を入れて99席。一人10ドルの入場料ということは、満席になっても一晩にわずか990ドル(10万円程度)。登場人物は4名だったが、脚本家のみならず、照明、音響、受付などのスタッフも必要であり、劇場側へのレンタル料の支払いを考えると、良くはわからないがこのお芝居に携わっている人達はボランティアのようなものかと。
本当にお芝居が好きで、かつ、外国からやって来た人達に英語によるお芝居を理解してもらおうという心意気にともて好感が持て、なかなか面白い経験だった。