フィリップ・グラスというアメリカ人作曲家が作った、インドのマハトマ・ガンジーの南アフリカに居た前半生をテーマにしたオペラを観に。
今期の新作のひとつで、イギリスのイングリッシュナショナルオペラとメトロポリタンオペラのコラボレーションにより、ロンドンでは一足先の4月5日にプレミア、メトは4月11日にプレミア上演となった。
グラスの顔写真をモチーフにした作品がメト玄関横のギャラリーで展示されるなど、メトロポリタンとしては非常に力を入れていたように思われるが、最初チケットの売れ行きは全く芳しくなかったものの、上演されてから人気が出て今回も立ち見が出る盛況ぶりだった。
グラスは初日には舞台挨拶に立ち、観客の中にはガンジーの孫なども居たとのこと。
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今期の新作のひとつで、イギリスのイングリッシュナショナルオペラとメトロポリタンオペラのコラボレーションにより、ロンドンでは一足先の4月5日にプレミア、メトは4月11日にプレミア上演となった。
グラスの顔写真をモチーフにした作品がメト玄関横のギャラリーで展示されるなど、メトロポリタンとしては非常に力を入れていたように思われるが、最初チケットの売れ行きは全く芳しくなかったものの、上演されてから人気が出て今回も立ち見が出る盛況ぶりだった。
グラスは初日には舞台挨拶に立ち、観客の中にはガンジーの孫なども居たとのこと。
by Philip Glass
指揮:Dante Anzolini
M.K. Gandhi : Richard Croft
Prince Arjuna : Bradley Garvin
Lord Krishna : Richard Bernstein
Miss Schlesen, Gandhi's secretary : Rachelle Durkin
Mrs. Naidoo, Indian co-worker : Ellie Dehn
Kasturbai, Gandhi's wife : Maria Zifchak
Mr. Kallenbach, European co-worker : Earle Patriarco
Parsi Rustomji, Indian co-worker : Alfred Walker
Mrs. Alexander, European friend : Mary Phillips
指揮:Dante Anzolini
M.K. Gandhi : Richard Croft
Prince Arjuna : Bradley Garvin
Lord Krishna : Richard Bernstein
Miss Schlesen, Gandhi's secretary : Rachelle Durkin
Mrs. Naidoo, Indian co-worker : Ellie Dehn
Kasturbai, Gandhi's wife : Maria Zifchak
Mr. Kallenbach, European co-worker : Earle Patriarco
Parsi Rustomji, Indian co-worker : Alfred Walker
Mrs. Alexander, European friend : Mary Phillips
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音楽は斬新、政治色が強く、かつ精神性や哲学的でもあり、非常に内容が深くて面白い。「瞑想オペラ」と言われるとのこと。
まず、普段ならある字幕がなく、パンフレットに歌われる歌詞の英語約が書かれた紙が一枚入っている。歌われる言語は哲学詩篇の「バガヴァッド・ギーター(神の歌) Bhagavad Gita」から引用されたサンスクリット語。要所要所に舞台上の背景部分などに英語でキーワードや文章が投影されるだけ。
音楽は、まるでピアノ練習曲のソルフェージュをずっとひたすら聴いているような音階の反復が延々と続くもので、私はこのようなミニマルミュージックのオペラは初めて。
史実に基づいていることもあって、内容は重厚。
今回はラジオ放送をするべく録音をしていたが、舞台を見ていても非常に動きが少なく判りづらい部分が多いので、音楽は反芻する部分が多いので楽しめるものかどうかいささか疑問。
大道具、小道具の使い方も非常に象徴的で、場面場面を見ながらその意味を考えさせられる。
音楽は、まるでピアノ練習曲のソルフェージュをずっとひたすら聴いているような音階の反復が延々と続くもので、私はこのようなミニマルミュージックのオペラは初めて。
史実に基づいていることもあって、内容は重厚。
今回はラジオ放送をするべく録音をしていたが、舞台を見ていても非常に動きが少なく判りづらい部分が多いので、音楽は反芻する部分が多いので楽しめるものかどうかいささか疑問。
大道具、小道具の使い方も非常に象徴的で、場面場面を見ながらその意味を考えさせられる。
一幕目最後にインド人とイギリス人とが皆それぞれの靴を脱いで舞台手前に並べ、天井から降りてきたワイヤーに結び付けられたハンガーに、インド人はサリーなどを、イギリス人は上着などをかけて、そのワイヤーが引き上げられていき幕となるが、過去やとらわれている物を皆捨てて共存する理想郷を現わしているように感じた。
トルストイの影響を受けているガンジーを示す為に、ずっとトルストイに扮した人が上段で執筆している姿があった。
面白かったのは、一幕目が終わってインターミッション中、下ろされたカーテンよりも観客席側に置かれたそれぞれ脱いだ靴を、実際に脱いだ人達が自分の靴を衣装のまま探しつつ取りに出て来たこと。他のスタッフが靴を回収しない意味は何なのか?
二幕目はイギリス人に迫害される様子が描かれ、新聞が非常に大きな意味を持った小道具となる。西洋人が読んでいた新聞をくちゃくちゃに丸め、ガンジーに向けて投げつけたり、その新聞で作られた大きなハリボテの人形が登場したり、そしてインドの新聞を大きく背景に映し出したり。
南アフリカに於けるインド人は指紋押捺に加え必ず身分証明を携帯しなければならないとの法律に抗議する為、二幕目最後に皆でその身分証明書を捨ててそれに火をつけるシーンがあるのだが、捨てる場所として一旦舞台の丸く切り取られた床面をはずすのだが、その丸い床の板に地球を思わせる映像が投影されたり、その丸い板が上空で今度は印象的な英語の文字を映し出したりと、非常に象徴的シーンになっている。
トルストイの影響を受けているガンジーを示す為に、ずっとトルストイに扮した人が上段で執筆している姿があった。
面白かったのは、一幕目が終わってインターミッション中、下ろされたカーテンよりも観客席側に置かれたそれぞれ脱いだ靴を、実際に脱いだ人達が自分の靴を衣装のまま探しつつ取りに出て来たこと。他のスタッフが靴を回収しない意味は何なのか?
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二幕目はイギリス人に迫害される様子が描かれ、新聞が非常に大きな意味を持った小道具となる。西洋人が読んでいた新聞をくちゃくちゃに丸め、ガンジーに向けて投げつけたり、その新聞で作られた大きなハリボテの人形が登場したり、そしてインドの新聞を大きく背景に映し出したり。
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三幕目ともなると、非暴力で訴える為に大勢が行進をするのだが、防弾チョッキにヘルメットを被った特殊部隊が武器を持たないインド人を銃などで殴ったりする場面が新聞紙が貼られた窓を通してシルエットで示され、その後にはその新聞の部分に実際に南アフリカで起こったデモ行進やその弾圧風景などの実写ビデオが流される。そして最後にはその新聞紙を打ち破って特殊部隊が降り立ち、ガンジーの仲間の人達を逮捕連行していく。
ガンジー役のリチャード・クロフトはとても良い。
蝶々夫人でスズキの役をやり今回はガンジー夫人役の Maria Zifchak と、Mrs.Naidoo役の Ellie Dehn との二重唱も綺麗なハーモニーだったし、主要6人による6重唱はなかなかの迫力。
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ガンジー役のリチャード・クロフトはとても良い。
蝶々夫人でスズキの役をやり今回はガンジー夫人役の Maria Zifchak と、Mrs.Naidoo役の Ellie Dehn との二重唱も綺麗なハーモニーだったし、主要6人による6重唱はなかなかの迫力。
もともと皆の動きは非常にゆっくり遅いのだが、三幕目最後は、まるで牛歩を見ているように全てが遅く延々と反芻する音楽により、観客も忍耐力が試されているような感じだった。
が、さすがにこのオペラの意味や意義を理解して来ている人達なので、いつもよりも非常に静かに息をのんで聴いていて、なかなか観客の態度は良かった。
いつにも増してインド系の観客が多かったのだが、全般的に観客層は普段よりも20代や30代の若者が多いように感じた。やはり老齢なオペラファンは古典的な物を好む傾向にあるのだろうか。
が、さすがにこのオペラの意味や意義を理解して来ている人達なので、いつもよりも非常に静かに息をのんで聴いていて、なかなか観客の態度は良かった。
いつにも増してインド系の観客が多かったのだが、全般的に観客層は普段よりも20代や30代の若者が多いように感じた。やはり老齢なオペラファンは古典的な物を好む傾向にあるのだろうか。
現在、オフブロードウェイでお芝居に出演していて、映画「ガープの世界」「ペリカン文書」などに出ていた俳優のジョン・リスゴーが観客として我々の5列前に座っていた。
上から2つ目の最後のカーテンコール時の画像で、ひときは背が高く髪が少々乱れた感じの左のシルエットがご本人。
全くもって不勉強な為、イギリス植民地下のインド人が南アフリカでも弾圧されていたことなど全く知らなかったので勉強になった。
予備知識なしの無知な観客の私ですらシンボリックな場面や小道具など気づくことがあるので、詳しい人にとっては、より深い意味あい等を感じ取れたのではないだろうか。
今シーズンのオペラの演目は相当前から決まっているだろうが、チベット問題がオリンピックを前に再燃しているので、非常にタイムリーな作品上演となってしまったようだ。
上から2つ目の最後のカーテンコール時の画像で、ひときは背が高く髪が少々乱れた感じの左のシルエットがご本人。
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全くもって不勉強な為、イギリス植民地下のインド人が南アフリカでも弾圧されていたことなど全く知らなかったので勉強になった。
予備知識なしの無知な観客の私ですらシンボリックな場面や小道具など気づくことがあるので、詳しい人にとっては、より深い意味あい等を感じ取れたのではないだろうか。
今シーズンのオペラの演目は相当前から決まっているだろうが、チベット問題がオリンピックを前に再燃しているので、非常にタイムリーな作品上演となってしまったようだ。
受け売りの備忘録サティヤーグラハ Satyagraha はガンジーによる造語で、サンスクリット語のアーグラハ(Agraha 説得)とサティヤ(Satya 真実)を統合したもの。「心理の把握」とも訳される。
1930年にインドで、イギリス植民地政府による塩の専売に反対して、380キロを更新した抗議活動も塩の更新(The Salt Satyagraha)と呼ばれている。
作曲家フィリップ・グラスは1937年生まれのユダヤ系アメリカ人。
彼の音楽は、1960年代から盛んになった、音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽であるミニマル・ミュージックと言われる。
ジュリアード音楽院卒業後、北インドに旅行し、仏教徒になりダライ・ラマ14世に面会するなどチベット問題を支援している。
一旦はニューヨークのタクシー運転手もしながら創作活動を行い、インド音楽の影響を受けた。
3部作としてあるうち、このオペラは1980年に作られたもので、その2作目となる。
記憶に新しいところでは、ケイト・ブランシェットの映画「あるスキャンダルについての覚書」などの映画音楽も近年多数手がけている。
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ジュリアード音楽院卒業後、北インドに旅行し、仏教徒になりダライ・ラマ14世に面会するなどチベット問題を支援している。
一旦はニューヨークのタクシー運転手もしながら創作活動を行い、インド音楽の影響を受けた。
3部作としてあるうち、このオペラは1980年に作られたもので、その2作目となる。
記憶に新しいところでは、ケイト・ブランシェットの映画「あるスキャンダルについての覚書」などの映画音楽も近年多数手がけている。
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