リンカーンセンターでは現在、メトロポリタン歌劇場でのABT(アメリカンバレエシアター)の春公演のみならず、隣のステートシアターではNYシティバレエが公演を行っている。

シティバレエの今期は、バランシンの作品は勿論あるが、振付家ジェローム・ロビンス没後10年を迎え、彼を称えたプログラムとなっていて、10のプログラムで54種類ものジェローム・ロビンスの作品が上演されている。
その一貫として、特定の日の公演だけゲストアーティストを内外から招くという企画もある。
ABTのプリンシパルであるジュリー・ケントがゲストアーティストだったので観に行った。
他の日には、以前のシティバレエのプリンシパルだった Robert La Fosse や、パリオペラ座のエトワールである Nicolas Le Riche がシティバレエとコラボをする。

ステートシアターの外の横断幕のみならず、1階から4階にはロビンスの子供時代から晩年までの写真100点以上が展示され(画像は若かりしバリシニコフに振り付けをしている写真)、普段配られるパンフレットのPLAYBILL以外に、彼の年代順の作品などを列記した長い年表のようなパンフレットまで用意されている。
1

1 2

1

今回の演目は3種類だが、全てショパンの曲に振り付けられたもの。
★前半
DANCES AT A GATHERING
Yvonne Borree, Asheley Bouder, Sara Mearns, Rachel Rutherford, Abi Stafford,
Jered Angle, Antonio Carmena, Amar Ramasar, Jonathan Stafford, Damian Woetzel
1
オーケストラはなく、舞台のカーテンよりも手前の舞台はじにピアノが置かれ、ピアノの演奏のみ。
ABTのメトロポリタン歌劇場よりもこのステートシアターは小さい=観客数が少ない、ということもあるだろうが、観客は非常に集中していて、ピアノの音と、ダンサー達の靴音しか聞こえず、咳ばらいもないという素晴らしい空気感だった。
しかも、高いジャンプが多様されていない振り付けということもあるが、ダンサーの着地した時のドーンという音ではなく、靴底が舞台とこすれてキュッキュッとなる程度。
10名の出演者のうち男女とも3名ずつの合計6名がプリンシパルという豪華な配役。
男女3名ずつのシークエンスで、一人の女性が3人の男性に次々とリフトされ、2人目から3人目の男性にリフトが変わる時には、女性が投げられて3人目の男性がキャッチするのだが、それぞれ3人の女性が順次投げられる時やキャッチ方法が違っていたのが面白かった。
Jared Angle が Yvonne Borree とのパ・ド・ドウで、女性は足の力を借りてジャンプなどせずに、男性が女性の右手を引っ張るだけで女性は飛んで男性がキャッチするという動きがあり、地味だが凄いと思われた。
1989年にプリンシパルになったベテランの Damian Woetzel はジャンプの高さにいささか年齢を感じさせるが、痩身で身体にキレがあり、ピルエットがぶれずに非常に綺麗。
全員がとても良かったので、この演目が終わると拍手が鳴りやまず、カーテンコールが5回。そして最後には Woetzel 単独のカーテンコールがあり、「ブラボー」が飛びまくってスタンディングオベーションになっていた。

★後半
OTHER DANCES
Julie Kent, Gonzalo Garcia
1
今度は舞台上にピアノが一台置かれて、その伴奏だけによる。
この演目の振付上、派手なピルエットがあるわけでもなく小作品なので、前半の観客の興奮ぶりから比べるといささかトーンダウン。
ケントは相変わらず綺麗で、二回あるソロでは、最初は喜びを、後では怒りや悲しみを表し踊り分けていた。

THE CONCERT
ゲスト指揮者として女性の Clotilde Otranto。
Sterling Hyltin, Andrew Veyette, Gwyneth Muller,
Tom Gold, Arch Higgins, Justin Peck, Allen Peiffer, Ashley Laracey, Georgina Pazcoguin, Rachel Piskin ほか
1
オーケストラが参加するが、舞台上のピアニストが主。
ピアニストも女性だが、椅子が綺麗かどうかチェックしたり、ピアノの鍵盤をハンカチで拭くとハンカチに仕込まれた粉が舞ったり、メガネを取り出して老眼のようなしぐさをしたりと、最初から道化に徹していて面白い。
そして演目自体がダンサー皆が道化と言った様相で、通常のバレエとはいささか違ったコメディタッチのマイムと言ったところか。
6名の女性で踊る場面でも、一人だけ大きなメガネをかけていたり、何か動きをする度に必ず一人がずれていたり。
会場からは笑いが絶えない演目となり、息をのんだような緊迫した鑑賞方法の前半とは全く違う雰囲気だったのは面白かった。

ジェローム・ロビンスとは wikipediaより

ジェローム・ロビンス(Jerome Robbins, 本名:Jerome Wilson Rabinowitz, 1918年10月11日-1998年7月29日)はアメリカ合衆国のバレエ・ダンス振付家、演出家。映画監督。

1918年10月11日にニューヨーク・マンハッタンで生まれる。フレッド・アステアに憧れてダンサーを志し、アントニー・チューダーにダンスを、エリア・カザンに演劇を学ぶ。 1940年アメリカン・バレエ・シアターでソリストとして踊る。 1944年『ファンシー・フリー』(音楽レナード・バーンスタイン)で振付家としてデビューするや一躍脚光を浴びる。『ファンシー・フリー』は『オン・ザ・タウン』(1944年)としてミュージカル化、『踊る大紐育』(1949年)として映画化された。

1949年にニューヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)の副バレエ・マスターに就任。『檻』(1951年)、『牧神の午後』(1953年)など多くの作品を振り付ける。同時にブロードウェイでも仕事をはじめ、『王様と私』(1951年)、『ウエスト・サイド・ストーリー』(1957年)、『屋根の上のバイオリン弾き』(1964年)など多くのヒット作品を手がけトニー賞を受賞している。1961年に『ウエスト・サイド・ストーリー』が映画化された際にはロバート・ワイズと共に監督を務め、アカデミー賞監督賞他9部門を受賞した。

ジョージ・バランシンの死後ピーター・マーティンズと共にNYCBのバレエ・マスターに就任(1983~1990年)。1998年にニューヨークで死亡。