現在のブロードウェイで一番ロングランとなっている「オペラ座の怪人」。
豪華な衣装や舞台装置に大金をつぎ込むメガミュージカルの先駆けとして、1986年10月9日ロンドンで初演され、1988年1月26日にはニューヨークでも上演がはじまり、大ヒットとなった。ロンドンでは21年、ニューヨークでは20年の最長ロングラン公演記録を現在も更新している。(wikipediaより)

以前に東京で劇団四季、そしてロンドンで観ていた。良くレ・ミゼ派(レ・ミゼラブル)とファントム派(オペラ座の怪人)とに分かれると言うが、私は断然レ・ミゼ派なので、ファントムに関してはNYではいつでも観に行けるとのんびり構えていたが、ようやく今回重い腰を上げてみることにした。

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製作:キャメロン・マッキントッシュ、アンドリュー・ロイド=ウェバー
作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
作詞:チャールズ・ハート
原作:ガストン・ルルー
演出:ハロルド・プリンス

オペラ座の怪人 The Phantom of the Opera : Howard McGillin
クリスティーヌ・ダーエ Christine Daae : Elizabeth Loyacano
ラウル・シャニー子爵 Raoul, Vicomte de Chagny : Tim Martin Gleason
カルロッタ・ジュディチェルリ Carlotta Giudicelli : Janet Saia
ムッシュー・アンドレ Monsieur Andre : James Romick
ムッシュー・ファルマン Monsieur Firmin : David Cryer
マダム・ジリー Madame Giry : Rebecca Judd
ウバルド・ピアンジ Ubaldo Piangi : Evan Harrington
メグ・ジリー Meg Giry : Amanda Edge

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ファントムと言えばシャンデリア。

クリスティーヌ役を二人で曜日によって演じるというシステムはアンドリュー・ロイド=ウェバーが確立したというが、観に行った月曜のクリスティーヌ役は月曜、火曜、水曜マチネに登場する、いわゆる二番手。二番手とは言ってもやはり「オペラ座の怪人」と思っていたところ、クリスティーヌ役の Elizabeth Loyacano がどうにもこうにも。
最初は声が出ていないし音ははずすし、何よりまずその声質が違う。今までクリスティーヌ役というと、ブライアントパークでの無料ダイジェストコンサートに出演して来た何人かのクリスティーヌ役ですら、可憐な歌姫を思わせるようなクリスタルのように透き通った声だったはずだが、彼女の声はおばさんチック。高音は張り出せば届くが、声に透明感がないので、全くイメージが違う。

以前にこのミュージカルを観に行った友人曰く、いかにメトロポリタン劇場のオペラ歌手がマイクも使わず素晴らしいかということを知らされたと言っていたが、その意味が良くわかった。
今回一緒に行った別の友人も同意見だった。
とても横柄に聞こえるかも知れないが率直な感想として、これは果たして、この日の女優に問題があったのか。二番手でなく一番手の Marni Raab だったら満足できたのか。
映画をすでに観ているので、映画の収録ではベストの歌をつなぎ合わせることが出来る為、パーフェクトな状態で観て聴いてしまっているから、生の舞台の公演ではそう感じられなかったのか。
メトでのソプラノを聴いてしまっているからミュージカルのオペラもどきのソプラノでは満足しきれなくなってしまったのか。
オペラ同様ミュージカル好きとしては、前日に観に行った レント は非常に良かったと思えたので、同じミュージカルでもその音楽によって性格も異なり、やはり本物のオペラと似たこの演目に限って物足りなく感じてしまったのか。

もう一つの難は、メグ・ジリー役の Amanda Edge。何を歌っているのかも聴こえない。マイクの調子が悪い?と最初は思ったが、いくらなんでもインターミッションをはさんでもマイクの調子が最後まで悪いとは思えない。

救いはオペラ座の怪人を演じた Howard McGillin の枯れた感じが非常に良かったこと。今期の ブライアントパークでの怪人役 は名前が不明だが、彼の歌は非常に良かったが、未だ若い為に声に張りがあり過ぎて青年の怪人状態だったのに対し、ハワード・マクギランの場合は、朗々と聴かせるところもあれば苦悩に満ちて思い悩むおじさんの部分もあり、タイトルロールの彼は非常に良かった。

因みに、アンドリュー・ロイド・ウェバーがその続編を、作詞にグレン・スレイター、演出に「ヘアスプレイ」のジャック・オブライアンで計画中だとか。いつ完成し、果たして上演されるのかどうかも全く不明だが、良い歌手を配してくれれば、素晴らしい楽曲が多いこの演目の続編も楽しみとなるかと。