10月4日、5日の両日に行われた、今年で第6回を迎えたNY市内の350もの建造物等のオープンハウス。
4日にはMOMAとグッゲンハイム美術館、5日にはグランドセントラルステーション、クライスラービルを見学したが、最後にチューダーシティに行くことにした。
チューダーシティは観光名所ではないが、1番街をはさんで国連の間向かいにある中世風の居住地域で、その雰囲気は他の建物と一線を画していることもあり興味があった。その建物群の中には、イタリアンレストランのL'impero名前改め Convivio があるので、何度か足を運んだが、建物自体については知らなかったので見学することにした。

1927年から徐々に建てられた住居棟で、現在は11棟からなるチューダーシティ。2つの庭もあり、今は建物になってしまったが、同時としては新しいテニスコートも完備されていた。新しいものでは1968年に建てられた棟もあり、Tudor Hotelもこのチューダーシティの一部を形成している。
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当時はグランドセントラルステーションがすでに出来ていたが、グランドセントラルステーションの記事にも書いたが、それより東は貧民窟のスラム街で、大手電気・ガス供給会社のコンエディソンの施設があり、石炭を炊いていたので真っ黒な煙が煙突から排出され空気も酷く工業地域であった上、5万頭いた馬の廃棄物などがイーストリバーに捨てられるなど、それはそれは酷いエリアだったとか。
しかし、そこに国連を誘致するにあたり、48丁目以南を一掃することを確約したNY市は、住居棟を建てることを決定。
1000万個もの煉瓦が使用され、イギリスのチューダー王朝(1485~1558)の雰囲気を踏襲した建物は、ブロンクス生まれの Fred F. French氏が計画し、年利6%で投資家から資金調達して建築した。(しかし、1929年10月の大恐慌により、投資家には10数年配当が払われなかったとか)
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1927年に建てられた最初の一棟目(42丁目の北東角の建物)は20階建で403部屋、2棟目は10%狭くなり、20階建で440部屋。
当時の宣伝ピラのコピーや街の風景のパネルなどを見せてもらいながらの解説によれば、当時としては非常に珍しいが「2976室に冷蔵庫を付けます!」だの「A City within a City」と一番オシャレな場所とうたい文句にしていた。
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見せてもらった1928年当時の広告では、郊外からのまるでオイルサーディンが入った缶のような満員電車に乗らずに、チューダーシティに住めばグラセンまで4分で(実際には4分では無理だが)劇場街にも徒歩圏内、などと書かれている。

当時は、今ではすっかり珍しくなったブラウンストーンの建物が至る所にあった時代で、後に出来たクライスラービルのようにアールデコ調が最先端の建築業界だったが、居住空間にはいささか新し過ぎるということで、チューダー様式になったとのこと。

ツアーの始まる前に、案内をしてくれる人と少し話していて何故ここに興味があるのか?と聞かれたので、いつも外側は観ているが内部を観たくて来た、と応えたところ、現在も一般の人達が住んでいる建物群なので内部の見学はツアーでは出来ないが、ツアーの見学者全員が解散してからだったら個人的に入れてあげると言ってくれたので、お言葉に甘えさせてもらった。
玄関をはいるとまるで中世の教会か修道院に入ったような装飾や照明となっている。
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屋上に上がらせてもらった。国連やミッドタウンなど素晴らしい眺めとなる。
東側は、国連の高い建物と低い建物ごしにイーストリバー、ルーズベルトアイランド、クイーンズボロー橋、そしてクイーンズが一望できる。
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北西方面の摩天楼群。
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北側43丁目に面したチューダーシティの低層群。
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西にはクライスラービルなど。この建物が最初に出来た時には、クライスラービルはもとよりエンパイアステートや他のビル群は存在しておらず、この屋上からははるかデラウェア方面まで見渡せたとか。
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因みに、チューダーシティは古くからの居住者も居る建物なので、レントコントロール(家賃規制)対象となっており、家賃高騰のマンハッタンにありながら家賃の価格統制が行われているので、すぐ北側にあるヤンキースのデレク・ジータ選手や、かつては松井秀樹選手が住んでいたトランプタワーとは全く違う価格帯となっている。

この2日間は、今まで良く良く知っている建物や場所5か所を訪れてみたが、いずれも新しい発見があるなど、なかなか有意義だった。

レントコントロールとは
1946年にNY州が作った制度をNY市が1969年に Rent Stabilization Law と称した法律を制定したもの。家賃の上げ幅の規制や立ち退き依頼の制限や、ビルーオーナーのビル管理の義務などについて定めたもので、1993年と97年に改正されている。

後記(10月10日'08)
家賃などについてご質問が多かったので、今日現在のチューダーシティのHPから賃貸料金の抜粋を。
www.tudorcity.com/index.html
スタジオタイプ(所謂ワンルーム): 1650~1800ドル
1ベッドルーム(所謂1LDK):1800~3000ドル
家具付きと家具なしによっても、棟や、階数によっても値段が違うようだが、周りのレントコントロール下にない賃貸物件と比較するとお安いかと。