ABT(アメリカンバレエシアター)の春公演とは異なり、全幕物ではなく小作品が3~4つ程度演じられるシティーセンターでの秋公演。そのオープニングナイトガラに行ってみた。

昨年のオープニングガラはオーケストラ席で観たので着飾ったパトロン系の人達などが席を埋め(その様子は こちら)空席状況が良くわからなかったが、今回はメザニン席にしてみたところ、フルハウスではないことがわかった。
マキシム・イリーナ夫妻やニーナ・アナニアシヴィリ、ディアナ・ヴィシニョーワ、アンヘル・コレーラやイーサン・スティフィルと言ったプリンシパルがこの秋公演には出演しないからか。

THEME AND VARIATIONS
振付:George Balanchine
音楽:Peter Ilyitch Tchaikovsky
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画像はサラ・レーンとヘルマン・コルネホだが、この日はパロマ・ヘレーラとマルチェロ・ゴメス
Paloma Herrera, Marcelo Gomes
Kristi Boone, Renata Pavam, Maria Riccetto, Melissa Thomas, Grant DeLong Carlos Lopez, Daniel Mantei, Jared Matthews ほか
最後、ゴメスの右肩にヘレーラを乗せる際、少しだけゴメスの足元がぐらつき慌てて左足を伸ばしてふんばり綺麗なキメのポーズをとっていたが、ゴメスのリフトは私が観た限りでは揺らいだことがなかったのでいささかビックリ。しかし、総じて良かった。

ROMEO AND JULIET (Romeo's Farewell to Juliet)
振付:Antony Tudor
音楽:Frederick Delius ("Prelude to Irmelin" )
Gillian Murphy, David Hallberg
ロミオとジュリエットの振付はサー・ケニース・マクミラン Sir Kenneth MacMillan によるものしか観たことがなかったので、私にとっては新鮮だった。
派手さはないが、変わったリフトなどが色々とあり、さすがにジリアン・マーフィーとデヴィッド・ホールバーグの二人は見栄えも良く、良かった。

TIME
振付:Craig Salstien
音楽:Robert Schumann ("Traumerei" )
Michele Wiles
ソリストのサルスティンが振付をし、昨年12月にこのミシェル・ワイルズで発表された小作品。あまりジャンプやピルエット系が少なく両手を高く挙げた状態が多い印象。

OVERGROWN PATH (Excerpt - "In Tears")
振付:Jiri Kylian
音楽:Leos Janacek
Julie Kent, Gennadi Saveliev, Jared Matthews
サヴィリエフとジャレド・マシューズのケントをリフトするのだが、お尻を床に付けた状態のケントの片手をサヴィリエフが持ってくるくるとケントを回すなど。エレガント。

DON QUIXOTE (Act III Pas de Deux)
振付:Marius Petipa and Alexander Gorsky
音楽:Ludwig Minkus
Xiomara Reyes, Jose Manuel Carreno
レイエスは、定番のドン・キホーテのパ・ドゥ・ドゥー通り、アラベスク状態でのバランスを二回、男性の後ろ側に立ってのバランスを二回披露。アラベスク状態のバランスの一回目はあっという間に手を降ろしていたが、二回目はしっかり決め、総じてバランスの時間が短かった。今年の春にジリアン・マーフィが演じた時はバランスを決めていたが、ニーナ・アナニアシヴィリの2回の公演では、そのアラベスクでのバランスはいずれの回でも割愛されていたので、いかに難しいのかと思われる。
また、32回転をみせるフェッテでは、マーフィは二回転などもおりまぜながら片手に持った扇子を回転しつつ顔を仰ぐように動かすという難易度の高いものを見せ、ニーナの場合はあえてゆっくり軸をぶらさずに回転を見せ、今回のレイエスは二回転どころか、扇子を持った手で煽ぐしぐさを二回、頭の上に手を挙げるしぐさを二回と、これまた難易度の高いものを見せてくれた。
ジリアン・マーフィの公演時の様子は こちら
ニーナ・アナニアシヴィリの公演時の様子は こちらこちら
一方、ホセ・マニュエル・カレーニョ、彼のこの役は何度となく観てきたが、やはりジャンプは相変わらず雄大に見せてくれるが、ピルエットとなるとやや体力の衰えがあるベテランの為か、春にニーナの相手を務めたアンヘル・コレーラとは異なり、あっさりと終えてしまった感があった。

COMPANY B
振付:Paul Taylor
歌:The Andrews Sisters
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Marian Butler, Gillian Murphy, Misty Copeland, Simone Messmer, Elizabeth Mertz, Nicole Graniero, Mary Mills Thomas, Arron Scott, Craig Salstein, Herman Cornejo, Roddy Doble, Grant DeLong, Isaac Stappas
Bei Mir Bist du Schon : Full Cast
Pennsylvania Polka : Maria Butler, Roddy Doble(いずれもコールド)
Tico-Tico : Arron Scott(コールド)
Oh Johnny, Oh Jlhnny, Oh! : Craig Salstein(ソリスト) with cast women
前の演目の TIME を振りつけたサルスティンが出演し、コメディアンぶりを発揮。彼はその人柄なのか容姿なのか性格なのか、なかなかいつもヒョウキンな役が似合う。
I Can Dream, Can't I? : Gillian Murphy(プリンシパル)
Joseph! Joseph! : Elizabeth Mertz, Mary Mills Thomas, Nicole Graniero, Isaac Stappas, Roddy Doble,(以上コールド) Craig Salstein
Boogie Woogie Bugle Boy (of company B) : Herman Cornejo(プリンシパル)
今回、コルネホはこの演目だけの出演となり、得意の回転などが少ない振付だったので、何だかもったいないような気がした。
Rum and Coca-Cola : Misty Copeland(ソリスト)with cast men
今回の公演のポスターの一つにもなっているこの演目。コープランドはやはり、こういうキビキビした動きが似合っている。
There Will Never Be Another You : Simone Messmer and Grant DeLong(いずれもコールド)
Bei Mir Bist du Schon : Full Cast

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秋公演の特徴として、若手の登用があるのだが、私が今回一番楽しみにしているこの10月からABTに加入したウイーン国立オペラ座バレエのソリストだったダニール・シムキン Daniil Simkin や、コールドのコリー・スターンズ Cory Stearns、ブレイン・ホーベン Blaine Hoven は別の日に出るもようでガラには出ていなかった。
シムキンは今年2月に行われた「21世紀のスター達 STARS OF THE 21ST CENTURY INTERNATIONAL BALLET GALA」で観て以来、非常に興味があるダンサー。その様子は こちら
この日は踊らなかったソリストの加治屋さん、コールドで一幕目に出演していたメリッサ・トーマス Melissa Thomas なども客席から観覧していた。
ソリストのサーシャ・ラディツキーはオランダのバレエ団にプリンシパル扱いとして移籍してしまったので居ないのは何とも寂しいが、次々若手が出て来ている印象だった。