今期の新作のひとつであるプッチーニの「つばめ LA RONDINE」を観に行った。

メトでは、1936年に上演されて以来の72年ぶりとなるこの演目。もともとプッチーニの設定では1800年代半ばが舞台となっていたが、1920年代のパリという設定になっている。

Composer : Giacomo Puccini
Librettist : Giuseppe Adami
指揮:Marco Armiliato
マグダ・ド・シヴリィ ランバルドの愛人(ソプラノ)Magda : Maureen O'Flynn
ルッジェーロ・ラストゥーク モントーバン出身の青年(テノール)Ruggero : Roberto Alagna
リゼット マグダの小間使い(ソプラノ)Lisette : Lisette Oropesa
プルニエ 詩人(テノール)Prunier : Marius Brenciu
ランバルド・フェルナンデス 銀行家の富豪でマグダのパトロン(バリトン)Rambaldo : James Courtney

1

アンジェラ・ゲオルギューとロベルト・アラーニャ夫妻主演ということもあって、選んだこの日程だったが、あいにくゲオルギューが病気で降板し、変わりに モリーン・オフリンというアメリカ人のソプラノとなった。
聞けば、先週土曜の公演時には、風邪をひいていたゲオルギューだが、ビデオ撮りをして映画館などに配信する日だったので無理をしたのか、3日後のこの日は降板となってしまった。

※以下は、観たかった出演者が急きょ変更になってしまったこともあってのあくまでも個人的感想ですので、ご了承ください

この演目は一幕目にいきなり主役のマグダ扮するソプラノがウオームアップの歌もほとんどないまま高音を出さなければならないが、モリーン・オフリンはそつなくこなし、会場からは拍手。しかしあまりにっこりとも笑わず未だ緊張しているのか・・・と観ていたが、彼女にはあまり笑顔がない。
恋人役のアラーニャ扮するルッジェーロとラブラブというシーンでも、恋こがれる女性の若さがどうも感じられない。御歳おいくつかは良くわからないが、どう見てもアラーニャ(1963年生まれ)よりも結構なお歳か相当ふけて見えるかと推察され、新作ポスターなどでのゲオルギュー(1965年生まれ)のイメージをどうしても追ってしまうのは酷というものなのだろうが、腰回りや胴回りの貫禄がますます棒立ちに見えてしまう。
勿論、彼女以上に巨漢な女性オペラ歌手はあまた居るのだが、3幕目にアラーニャの膝の上に乗って歌う場面でも重そうだったり、立っているオフリンの前にアラーニャが膝まづいて腰を抱き胸に顔をうずめる場面でも、アラーニャが予想した辺り以上に腰が太くて慌てて手を動かしなおすなど。
オフリンの高音を張り上げる際は、声量も十分できっちり丁寧に歌っていると思うのだが、ほかの中ぐらいや低い音程になると聴こえない時もあった。
衣装や髪型だが、2幕目の帽子を被って出かけるシーンでは同様に帽子を被ってはいたものの、全ての衣装や髪型がゲオルギューとは色やデザインも異なっていた。
いきなりの代役なので歌や動きだけで精いっぱいで、細かい表情やキビと言うものまでも願うのは気の毒と言うものだのだろうが、歌手が楽しそうに歌っていたりすると観ていると楽しい気分になるものだが、一生懸命な必死な笑顔のない様子では、観ている側にはストーリーに感情移入できずに彼女の出来を注視するにとどまってしまった。

アラーニャは、昨シーズンにアイーダのラダメス役でしか観ていなかったが、その際は上半身が裸というイデタチだったこともあり、背が決して高くなくがっちり型というよりはお腹がやや出て格好良くないと思っていたが、今回3幕目の全身白い衣装だと、さわやか系な青年ぶり。マグダに投げキスをして去っていく時などは、田舎出身の青年がパリで浮名を流した美貌の女性に投げキスをするというよりは、地味な田舎のおばさんを相手にキザな都会の青年が投げキスをしたように観えてしまった。

1
脇を固めるプルニエ役のテノールのマリウス・ブレンチウがとても良い。小間使い役のソプラノのリゼッテ・オロペサも非常にコミカルでコメディエンヌと言ったところがあり、この二人は観ていて安心感があった。(画像左側からリゼッテ・オロペサ、マリウス・ブレンチウ、ロベルト・アラーニャ、そして降板したアンジェラ・ゲオルギュー HPより)

後記 1月14日
私は気付かなかったのだが、別の席で観に行っていた友人いわく、1幕目で、ほかの女性達3人が歌っている場面で、マグダ扮するオフリンがどうやら「出」のタイミングを間違えたようで、慌てて客席を背にして舞台から消えたとのこと。