今期の新作のひとつである「イル・トロバトーレ」を観に行った。
もともとはテノールが演じるマンリーコ役にはリチトラが配されて今期が始まる前に刷られたパンフレットなどには、リチトラの姿が大きく出ていたが降板し、マルチェロ・アルヴァレスに変った。
画像左はリチトラとして宣伝した写真、右は差し替えられたアルヴァレスの写真
クリスティーナ・リッチ、ジョニー・デップ、ケイト・ブランシェットなどが出演し、結構私としては好きな映画の「耳に残るは君の歌声 The Man Who Cried」でジョン・タトゥーロ演じるオペラ歌手のダンテがこの演目の「見よ、恐ろしい炎を」を歌うシーンは、実際にはリチトラが吹き替えていたそうなので、生でリチトラも聴いてみたかったが。
画像左はリチトラとして宣伝した写真、右は差し替えられたアルヴァレスの写真
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もともと、ヴェルディが設定した舞台は15世紀初めのスペインのアラゴン地方としていたが(注:実際には吟遊詩人トロバトーレは11~13世紀末に居たが15世紀には存在しない)、今回のメトのプロダクションでは、その設定をさらに19世紀初めのゴヤの世界に置き換えているので、幕にはゴヤの絵をイメージ。
2幕目の舞台の「鍛冶屋の合唱 Vedi! Le fosche notturne spogile」は、まさしく フリックコレクション にあるゴヤの「鍛冶屋」を彷彿とさせられた。
by Giuseppe Verdi
Libretto by Salvadore Cammarano
指揮:Gianandrea Noseda
ルーナ伯爵、誇り高いアラゴンの貴族 Count di Luna(バリトン): Dmitri Hvorostovsky
レオノーラ、アラゴン王妃の美しい女官 Leonora(ソプラノ): Sondra Radvanovsky
アズチェーナ、ジプシーの老婆 Azucena(メゾソプラノ): Dolora Zajick
マンリーコ、放浪の騎士で吟遊詩人(トロヴァトーレ)アズチェーナの息子として、実はルーナ伯爵の実弟 Manrico(テノール): Marcelo Alvarez
フェルランド、ルーナ伯爵の家臣 Ferrando(バス): Kwangchul Youn
イネス、レオノーラの侍女 Inez(メゾソプラノ): Maria Zifchak
ルイス、マンリーコの部下 Ruiz(テノール): Eduardo Valdes
とても見ごたえ、聴きごたえがあった。
ソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バリトンの4者4様のアリアや重唱など、一人でも弱いとバランスがとれないかと想像されるが、いずれも素晴らしかったかと。
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by Giuseppe Verdi
Libretto by Salvadore Cammarano
指揮:Gianandrea Noseda
ルーナ伯爵、誇り高いアラゴンの貴族 Count di Luna(バリトン): Dmitri Hvorostovsky
レオノーラ、アラゴン王妃の美しい女官 Leonora(ソプラノ): Sondra Radvanovsky
アズチェーナ、ジプシーの老婆 Azucena(メゾソプラノ): Dolora Zajick
マンリーコ、放浪の騎士で吟遊詩人(トロヴァトーレ)アズチェーナの息子として、実はルーナ伯爵の実弟 Manrico(テノール): Marcelo Alvarez
フェルランド、ルーナ伯爵の家臣 Ferrando(バス): Kwangchul Youn
イネス、レオノーラの侍女 Inez(メゾソプラノ): Maria Zifchak
ルイス、マンリーコの部下 Ruiz(テノール): Eduardo Valdes
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とても見ごたえ、聴きごたえがあった。
ソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バリトンの4者4様のアリアや重唱など、一人でも弱いとバランスがとれないかと想像されるが、いずれも素晴らしかったかと。
ホロストフスキーは、登場するだけで拍手が起こったが、エフゲニー・オネーギン や 仮面舞踏会 では、その朗々と歌う時の声量にも感心させられたのだが、今回は4人の中では決して声量ではまさっていないのがわかったかと。
特に女性陣のレオノーラ役のソンドラ・ラドヴァノフスキーと、アズチェーナ役のドローラ・ジャジックが素晴らしい。
ソンドラ・ラドヴァノフスキーは、エルナーニのドレスリハーサル で観ただけだったので、ここまで良いとは驚いた。声量もたっぷり、高音や強弱など聴きごたえがあり、1幕目、そして4幕目の独唱では一番長く拍手をもらっていた。
ソンドラ・ラドヴァノフスキーは、エルナーニのドレスリハーサル で観ただけだったので、ここまで良いとは驚いた。声量もたっぷり、高音や強弱など聴きごたえがあり、1幕目、そして4幕目の独唱では一番長く拍手をもらっていた。
ジャジックは、アイーダ や ノルマ で聴いていてとても安定感のある素晴らしいメゾソプラノだと思っていたが、今日も期待を裏切られず、むしろそれ以上で、メゾソプラノでありながら高いド(C)を2度しっかり出していたように思えた。なるほど、この演目のタイトルが「イル・トロバトーレ」ではなく、ヴェルディが「アズチェーナ」というタイトルにしようと一度は思っていたそうだが、それも頷ける。
タイトルロールを演じたマルチェロ・アルヴァレスもとても熱演していて、カルメン でのドン・ホセ役などと同様に良かったと思うのだが、3幕期待のハイC部分は、彼の声質のせいなのか、あまり良くわからないままに終わったように思えてしまった。
脇を固めた人達もハイレベル。
イネス役は、蝶々夫人 でのスズキ役、サティヤーグラハ でのガンジー夫人、ニュールンベルクのマイスタージンガー でのマグダレーナ役、記憶に新しいところでは タイス での尼僧院長役を演じたマリア・ジフチャックだが、今日は残念ながらあまり出番が多くなく、存在感が感じられなかったのは残念。
イネス役は、蝶々夫人 でのスズキ役、サティヤーグラハ でのガンジー夫人、ニュールンベルクのマイスタージンガー でのマグダレーナ役、記憶に新しいところでは タイス での尼僧院長役を演じたマリア・ジフチャックだが、今日は残念ながらあまり出番が多くなく、存在感が感じられなかったのは残念。
フェルランド役のクワンチュル・ユンは、今期は ドン・ジョバンニ での騎士長役や、トリスタンとイゾルデ での王様役では声量たっぷりで主役よりも多くの拍手をもらっていたかも?と思われたが、今日は4人の素晴らしい出来に、あまり印象に残らなかったぐらい。
歌手の力量にかかる演目で、ワグナーの作品とはまたタイプの違うアスリート系オペラと言うイメージで、聴きごたえがあった。
また、4幕あるが2幕ずつでインターミッション1度という方式とし、回り舞台を使うことで場面転換の多い前半もさっさと次の場面に移行していくので、観客もだれることなく、まるで絵巻物を観ているような印象を受けた。
また、4幕あるが2幕ずつでインターミッション1度という方式とし、回り舞台を使うことで場面転換の多い前半もさっさと次の場面に移行していくので、観客もだれることなく、まるで絵巻物を観ているような印象を受けた。
受け売りの備忘録
原作はスペインの劇作家アントニオ・ガルシア・グティエレスのもので、カスティリアの王子フェルナンドとウルゲル伯爵とがアラゴンの王位を争った様子を描いている。
台本作家のサルヴァトーレ・カンマラーノは、3幕半ばの製作途中に急逝し、残りはレオーネ・エマヌエーレ・バルダーレという人が担当した。
3幕目のマンリーコのアリア(カバレッタ)「見よ、恐ろしい炎を Di quella pira」では、ヴェルディの楽譜にはない高音のハイCを入れるのが慣例となっており、通説ではロンドン初演時のテノールのエンリコ・タンベルリックがヴェルディの許可を得て変え、以降テノールのアリアとして最も難曲のひとつとされている。が、半音ないしは全音下げて歌いやすく改変する場合も。(wikipediaより)
3幕目のマンリーコのアリア(カバレッタ)「見よ、恐ろしい炎を Di quella pira」では、ヴェルディの楽譜にはない高音のハイCを入れるのが慣例となっており、通説ではロンドン初演時のテノールのエンリコ・タンベルリックがヴェルディの許可を得て変え、以降テノールのアリアとして最も難曲のひとつとされている。が、半音ないしは全音下げて歌いやすく改変する場合も。(wikipediaより)
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