イギリス北部の貧しい地域出身の少年ビリーが、王立のロイヤルバレエスクールをめざし奮闘する姿を描きヒットした2000年の映画「リトル・ダンサー」のミュージカル版で、エルトン・ジョンの曲ということでも話題となった。
2005年5月にロンドンのビクトリアパレス劇場で初演されたものがNYに昨秋やって来た。
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1984年~85年にかけて、イギリスの炭鉱労働者の組合がストライキを行って当時のサッチャー首相の政府と激しく対立した時代を背景にした、北イングランドの貧しい炭鉱の町が舞台。

子供が主役のミュージカルとなると、得てして学芸会もどきになるか、幼少時を子役がこなして引き続き大人が成長してからを演じるなどしてクオリティーを下げないようにするかのどちらかになるかと思うのだが、このミュージカルは最初から最後までタイトルロールの少年の出来にかかっていて、そのレベルが高い。
クラシックバレエの技術はもとより、タップダンスも多々、歌が何曲もあり、加えて北イングランド訛りで話さなければならない。
ということもあり、主役にはもともと3人が配されており、現在は4人による交代制。
画像は、左から Trent Kowalik、David Alvarez、Kiril Kulish。(以下画像はHPより)
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雑誌VOGUEにも取り上げられた。左から Kiril Kulish、Trent Kowalik、David Alvarez。
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この日のビリーは、デヴィッド・アルヴァレス。両親はキューバ出身で、モントリオール育ちの14歳で、2006年にABT(アメリカン・バレエ・シアター)の奨学生となったことでNYに引っ越して来たという逸材。10代のバレエダンサーのベスト10にも選ばれたとのこと。
ビリー役は基本的にどの日に誰が配されるかは公表されないとのことだが、このアルヴァレスはNYタイムズ誌などがレビューを行った初日を担当していたので、観られてラッキーだったのかと。
一幕目の連続ピルエットの後のキメ、のポーズで両足が少々グラグラしていたが、二幕目ではフェッテなど10回ものピルエットや、二回転ジャンプを何度も決めて拍手喝采。
片手で椅子をクルクルと回しながら踊るシーンでは、一人の時や大人のダンサーとの共演もあり、見ごたえがあった。(この画像はあまり足が長くないように見えてしまうが、、、)
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別のビリー役には YAGP (YOUTH AMERICA GRAND PRIX) で2年連続優勝しているキリル・クリシュ Kiril Kulish も居る。
なるほどバレエの好きな人は、それぞれ違う主役で観てみたいと、ついついこのミュージカルに通ってしまうという意味が良くわかった。

バレエをとるか歌をとるか、ということになると、踊らないマイケル役の少年はなるほど歌が上手く発声も良く聞き取れるかと思うのだが、クラシックバレエが出来て、声変わりをしておらず歌がしっかり歌える少年などまず探すことが不可能かと。
トロントで観たミュージカル ダーティ・ダンシング では、もともとダンス班と歌手班にわかれての登場になっていたぐらいなので、歌と本格的な踊りの両立というのは難しいものなのかと思われる。勿論、それを大人がやると歌も踊りも高度なテクニックで当たり前、と子供を観るよりもより厳しい目で観られてしまうのかも知れないが。

マイケル役には、アンダースタディの Keean Johnson が演じ、Tall Boy & Posh Boy 役にはもともと3人でローテーションするビリー役に4人目として入った Tommy Batchelor が登場。
せっかくビリー役を演じることが出来る二人が居るのだから、両方のダンスが観たかったのだが、それは贅沢と言うものか。

ミセス・ウイルキンソン役は、本来ならロンドンのオリジナルキャストであるハイデン・グウェイン Haydn Gwynne が出るところ、風貌からすると本来お母さん役の Leah Hocking が行い、お母さん役には Jayne Paterson とおぼしき人が演じていた。
お父さん役はどうやらアンダースタディの Donnie Kehr で、お兄さん役もプレイビルの写真から推察するに David Larsen かと思われ、やはり水曜のマチネという日程では色々と本来の配役とは異なっていた。
配役変更の差し込みの紙が何枚かあったようで、私のプレイビルには1枚だけしか入っていなかった為、終演後にアッシャーの人に別のプレイビルを欲しいとお願いしたところ、一切差し込みなしだった。。。
劇場入口付近になる「本日の配役」を出る時にチェックしようと思ったところ、すでに夜の公演の為にそのネームタグがはずされていたので、結局チェックすることが出来なかったのは残念。