今期のメトの公演で、目玉のひとつであるワグナーの「ニーベルングの指輪」シリーズ。全部で15時間にも及ぶ長大なオペラなので、4日に分けて公演される。
内訳は以下:
序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold):2時間40分
第1夜 『ワルキューレ』(Die Walküre):3時間50分
第2夜 『ジークフリート』(Siegfried):4時間
第3夜 『神々の黄昏』(Götterdämmerung):4時間30分

一週を開けて毎土曜に公演されるリングサイクル1と、一週間で4回公演するサイクル2とサイクル3があり、「ラインの黄金」と「ワルキューレ」だけはこれらのサイクル以外にも公演されるというスケジュール。
リングサイクル1の序夜である「ラインの黄金」を観に行った。

1

by Richard Wagner
Libretto by the composer
指揮  : James Levine
神々
 ヴォータン 神々の王(バリトン)Wotan : James Morris
 ドンナー 雷神(バリトン)Donner : Charles Taylor
 フロー 幸福の神(テノール)Froh : John Tomlinson
 フリッカ ヴォータンの妻で結婚の神 (メゾソプラノ)Fricka : Yvonne Naef
 フライア フリッカの妹で美の女神(ソプラノ)Freia : Wendy Bryn Harmer
 ローゲ 火の神(テノール)Loge : Kim Begley
 エルダ 大地の母神(メゾソプラノ)Erda : Jill Grove
ニーベルング族の小人
 アルベリヒ(バリトン)Alberich : Richard Paul Fink
 ミーメ アルベリヒの弟(テノール) Mime : Gerhard Siegel
巨人族
 ファーゾルト(バス) Fasolt : Franz-Josef Selig
 ファフナー ファーゾルトの弟(バス) Fafner : John Tomlinson
ラインの乙女
 ヴォークリンデ(ソプラノ)Woglinde : Lisette Oropesa
 ヴェルグンデ(ソプラノ)Wellgunde : Kate Lindsey
 フロースヒルデ(メゾソプラノ)Flosshilde : Tamara Mumford

ヴォータン役のジェームス・モリスは、125周年ガラでのドン・カルロ 以外では、ニュールンベルクのマイスタージンガー や、ワルキューレと言ったワグナーものでしか観たことがないが、いずれの2回とも、長丁場ということもあって、非常にお疲れ度が感じとれたが、この日はさすがに最後まで変わらず元気そうだった。

さすがにどの歌手も大きなオーケストラに負けない朗々と歌いあげる声量があって、聴きごたえ十分だったが、幸福の神であるフロー役のジョン・トムリンソンだけが弱く感じてしまった。

アルブレヒ役のリチャード・ポール・フィンクがコミカルな部分もあり、とても良かった。

歌う場面は少ないが、フライヤ役のウェンディ・ブライン・ハーマーも良かったかと。

ラインの乙女の一人として、ケート・リンゼーが扮していた。フィガロの結婚 でのケルビーノ役や、ロミオとジュリエット でのステファーノ役、ルサルカ での料理人の少年役など、ズボン役(男性役を演じる女性歌手)ばかり観ていたので、今回の女性らしい乙女役は、新鮮だった。

今期の上演が最後で、このオットー・シェンク Otto Schenk 氏による演出の指輪シリーズはもうメトでは観られないとのこと。

いつもなら、飴の袋をガサゴソしたり、鼻をかんだり、不要な咳ばらいや咳、話声なども時にはしたりして、近くに座る人如何では、なかなか集中できない場合もあるが、さすがにワグナーのシリーズを観に行こうという人達は、指揮者のレヴァインが登場する以前からすでに静かに待っていて、この演目は特にインターミッションなしの2時間半ぶっとおしで拍手をする場面もないなか、本当に皆静かに観て、聴いていて良かった。