2006年にNYブロードウェイにかかり、2007年のトニー賞にミュージカル作品賞を含む8部門に輝いた作品。(ただし、ブロードウェイでは昨年1月18日に閉幕している。)
ブロードウェイで一度観たのだが、内容が過激なだけに日本で上演されると聞いて驚いていたところ、昨年5月~9月まで東京で初演され、今年に入って4月22日~5月30日の期間に再演。
そして今回、期間限定(8月11日~9月12日)で名古屋で上演されるとのことだったので行ってみた。

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原作 フランク・ヴェデキント Frank Wedekind の戯曲 
ドイツ語原題:Fr?hlings Erwachen 英題:Spring Awakening

配役
ベンドラ:小松加奈
マルタ:撫佐仁美(東京初演初日キャスト)
テーア:岸本美香
アンナ:山中由貴
イルゼ:金平真弥(東京初演初日キャスト)
メルヒオール:上川一哉
モリッツ:玉井晴章
ハンシェン:一和洋輔(東京初演初日キャスト)
エルンスト:伊藤綾祐
ゲオルグ:白瀬英典(東京初演初日キャスト)
オットー:加藤迪(東京初演初日キャスト)
大人の女性:都築香弥子
大人の男性:田代隆秀
男性アンサンブル:山下啓太、権頭雄太郎
女性アンサンブル:平田綾、石井亜早実


ドイツを舞台に、1891年に作られたフランク・ヴェデキント Frank Wedekind の同名戯曲のミュージカル版。少年少女の性への目覚めをテーマにした不条理演劇で、ロンドンでは100年上演禁止になったこともあるという曰くつきの作品。

19世紀のドイツの保守的な学校教育や大人達の考えから、性に対して興味があるのに知識を与えられない子供達のいらだちと性への目覚め、実の父親からの性的虐待と暴力、落ちこぼれの自殺、同性愛、結婚前の妊娠、中絶、そして死別、、、と重たくえてしてタブー視されるテーマが散りばめられている。

久しぶりに日本でミュージカルを観たが、NYのブロードウェイの場合はオペラよりも客層がカジュアルなこともあって(地方からの観光客が多いせいもあるが)、上演中でもやたら携帯音が鳴ったり、お菓子の包みを破る音などがしたり、まるで家のリビングで家族で映画を観ているかのように普通の声の大きさで感想を述べあいながら観ている人がいたりと、ストレスを感じること多々だったのに比べて、さすがは日本。バイブレーションにしておいた携帯の音すら響くぐらい水を打ったように静かな観客マナーは本当に素晴らしい。

主役のベンドラ役の女優さんは、東京公演時にはアンダースタディにも名を連ねていなかった方のようだったが、安心感のある歌声。
それに比べて、相手役のメルヒオール役の人は、東京初演当時はアンダースタディだったようだが、張り上げる声は良いとしても、やや音程に不安を感じてしまった。。。
いずれも初演オリジナルメンバーでもあるイルゼ役とゲオルグ役が非常に良かったかと。

S・A・B・Cと金額によって座席の場所が分けられているが、結構空席が目立って5・6割ぐらいの入りと言ったところ。席が空いていることもあって、何処の列からがA席、何処の列からがB席と一目瞭然な状況で、まるで空席の白い椅子の帯が何本も横に入っているような客席の様子。
NYなら、開演直前の照明が落とされる頃になると、後方席のお客さんがざざーっと空いている前方やより中央の席などに皆が引っ越すことが当たり前で(オペラですら)お安いチケットで入ってもお高い席で観ることが出来てしまったりもし、アッシャー(席等を案内する人)も全くもって黙認状態。
空席が酷く目立つ時など、逆にアッシャーがより階下や前方に詰めるようお客さんに促すこともある。
それに対し、まじめな日本。全くお客さん自身も動こうとせず、いくら目の前の数列が空いていようが自分の買った席に座っている。それはそれで高額なチケットを購入した人達が不公平を感じなくて良いと思うのだが、何より一番驚いたのは、どこの列のどの席が売れておらずに空席かをアッシャーが手元の紙で把握していて、(より良い席に移動したお客さんがいないかと)空き席がちゃんと空いているかを厳しく調べていることだった。

男女のキスシーンや男同士のキスシーン、主役のベンドラ役の女性が胸を出したり、セックスを描写した場面もあるので(NY版よりも、日本のメルヒオールのお尻を出す割合が少なかったが…)、ホームページにも「本作品は一部のシーンで小さなお子様には適さないと考えられる内容を含んでおります。」とあり、アメリカでは「Notice:  This event contains mature subject matter and may not be appropriate for all audiences.  Registration limited to those 17 years of age and older.」と17歳以上とあるぐらい。
しかし今日は、小学校低学年ぐらいの子供も含む小学生らしき子供2組3人ほどが、それぞれ保護者に連れられて観に来ていたのにはビックリした。セックスのシーンが前半の最後にあるので、休憩時に帰ろうと思えば帰ることも出来るはずだが(実際に、私の前の列の中年ご夫婦?はお気に召さなかったと見えて帰っていた)、最後まで子供達も観賞していたもよう。。。
日本に比べて性などにおおらかな部分も多いアメリカだが、こと子供の教育上の問題に関しては映画にしても細かくR指定を設けて厳しくしているのに対し、日本は非常に甘いと良く西洋人に驚かれるのだが、まさしく今夜はそれを実感。