昨年50歳を迎えた三谷幸喜氏が、1年の間に4作品のお芝居と、映画上演と大車輪の活躍だったが、4本あるお芝居の最終上演となった「90ミニッツ」が名古屋に来たので行ってみた。
脚本・演出 : 三谷幸喜
出演 : 西村雅彦、近藤芳正
三谷氏のドラマや映画は見ても、未だ実際に舞台作品を観たことがなかった。笑いが彼の作品の特徴と思っていた為、非常にシリアスなものだったので驚かされた。(以下ネタバレあり)
昭和60年に、ある宗教の信者の10歳の子供が川崎市で交通事故に遭い両足を骨折、聖マリアンナ医大病院に搬送された。意識はあったものの失血によるショック症状で、
両下肢開放性骨折・入院60日として手術されようとしたところ、信仰上の理由から両親が少年への輸血を拒否した為、病院搬送から5時間後に出血多量で亡くなったという事件がもととなっている。
実際には、少年の両親も病院側も責任を問われることはなかったそうだが、後に、「説得」という題でノンフィクション化され、テレビドラマにもなった事件をベースにし、今回は2人芝居という形式のお芝居となっている。
(画像は日本経済新聞レビュー記事より)
舞台上には西村雅彦氏演じる病院の副部長室の机と椅子とソファーだけで、外界と通じるものは、手術の承諾書サイン後にすぐに手術にとりかかる現場の医師達と連絡を取る机の上の黒電話と、近藤芳正氏演じる子供の父親が奥さんに連絡を取る為の携帯電話のみ。
輸血をしなければ、子供の命は90分しかもたないという設定から、このタイトルとなったのだが、実際のお芝居も休憩なしの約90分間。
舞台中央の天井から床にはずっと一筋の水が流され続けていて、輸血の為の承諾書にサインを求める医師と、それには同意できない父親との延々と続く丁々発止のやりとり後、子供の命を諦めると言う結論に達した時点でその流れていた水がピタッと止まる。
最終的には、医師が自分の責任のもと承諾書がなくとも手術を行うという英断をすると再び水が流れだす。
この水の演出はとても印象的。最初、その水はタイムリミットを表現する為の砂時計の砂をイメージしているのかと思ったのだが、途中からは少年の流す血をイメージしているのかとも思え、最後には少年の命そのものを現していたのかと思えた。
医師の倫理として命を救うというのは医師のエゴだという父親、両親の信仰の為に子供の命を見捨てる方がエゴだという医師、そして終盤になって医師は子供の命ではなく自分の保身の為に承諾書のサインが必要だと吐露し、医師と父親の形勢が逆転していく。
最後に、医師が承諾書なしで自分の責任のもとに手術を行う決定を下すのだが、その後で父親が、もう3秒だけ医師のその決断が遅れていたら、自分が承諾書にサインをしていた、その3秒のせいで自分は一生苦しむだろうという言葉で終わる。。。
何とも重たいテーマのお芝居だった。
三谷幸喜氏の作品と知らずに観ていれば、もっと素直にこのテーマにアプローチできたのかも知れないが、すでに彼の作品だとわかっているだけに、つい何処かにシニカルであれ彼お得意の笑いを期待し求めてしまっていた。
日本経済新聞や朝日新聞のレビューなどでは好意的な内容で書かれていたようだが、三谷幸喜氏のファンであればあるほど「笑いの大学」などの秀作と比較してこの作品を論ずる人も多いようで、あえて全くレビューやストーリーの下調べをせずに観に行って良かったなぁと。
会場は満席。蛇足だが、全国の武将ゆかりの地に結成されている戦国武将隊の先駆けとなった、「名古屋おもてなし武将隊」の織田信長役の人も関係者とおぼしき人と一緒に観に来ていた。
脚本・演出 : 三谷幸喜
出演 : 西村雅彦、近藤芳正
三谷氏のドラマや映画は見ても、未だ実際に舞台作品を観たことがなかった。笑いが彼の作品の特徴と思っていた為、非常にシリアスなものだったので驚かされた。(以下ネタバレあり)
昭和60年に、ある宗教の信者の10歳の子供が川崎市で交通事故に遭い両足を骨折、聖マリアンナ医大病院に搬送された。意識はあったものの失血によるショック症状で、
両下肢開放性骨折・入院60日として手術されようとしたところ、信仰上の理由から両親が少年への輸血を拒否した為、病院搬送から5時間後に出血多量で亡くなったという事件がもととなっている。
実際には、少年の両親も病院側も責任を問われることはなかったそうだが、後に、「説得」という題でノンフィクション化され、テレビドラマにもなった事件をベースにし、今回は2人芝居という形式のお芝居となっている。
(画像は日本経済新聞レビュー記事より)
舞台上には西村雅彦氏演じる病院の副部長室の机と椅子とソファーだけで、外界と通じるものは、手術の承諾書サイン後にすぐに手術にとりかかる現場の医師達と連絡を取る机の上の黒電話と、近藤芳正氏演じる子供の父親が奥さんに連絡を取る為の携帯電話のみ。
輸血をしなければ、子供の命は90分しかもたないという設定から、このタイトルとなったのだが、実際のお芝居も休憩なしの約90分間。
舞台中央の天井から床にはずっと一筋の水が流され続けていて、輸血の為の承諾書にサインを求める医師と、それには同意できない父親との延々と続く丁々発止のやりとり後、子供の命を諦めると言う結論に達した時点でその流れていた水がピタッと止まる。
最終的には、医師が自分の責任のもと承諾書がなくとも手術を行うという英断をすると再び水が流れだす。
この水の演出はとても印象的。最初、その水はタイムリミットを表現する為の砂時計の砂をイメージしているのかと思ったのだが、途中からは少年の流す血をイメージしているのかとも思え、最後には少年の命そのものを現していたのかと思えた。
医師の倫理として命を救うというのは医師のエゴだという父親、両親の信仰の為に子供の命を見捨てる方がエゴだという医師、そして終盤になって医師は子供の命ではなく自分の保身の為に承諾書のサインが必要だと吐露し、医師と父親の形勢が逆転していく。
最後に、医師が承諾書なしで自分の責任のもとに手術を行う決定を下すのだが、その後で父親が、もう3秒だけ医師のその決断が遅れていたら、自分が承諾書にサインをしていた、その3秒のせいで自分は一生苦しむだろうという言葉で終わる。。。
何とも重たいテーマのお芝居だった。
三谷幸喜氏の作品と知らずに観ていれば、もっと素直にこのテーマにアプローチできたのかも知れないが、すでに彼の作品だとわかっているだけに、つい何処かにシニカルであれ彼お得意の笑いを期待し求めてしまっていた。
日本経済新聞や朝日新聞のレビューなどでは好意的な内容で書かれていたようだが、三谷幸喜氏のファンであればあるほど「笑いの大学」などの秀作と比較してこの作品を論ずる人も多いようで、あえて全くレビューやストーリーの下調べをせずに観に行って良かったなぁと。
会場は満席。蛇足だが、全国の武将ゆかりの地に結成されている戦国武将隊の先駆けとなった、「名古屋おもてなし武将隊」の織田信長役の人も関係者とおぼしき人と一緒に観に来ていた。
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