
ボリショイのプリマを20年以上、ABTのプリンシパルを16年務め、現在グルジア国立バレエの芸術監督であるニーナ・アナニアシヴィリが、今回の日本ツアーで白鳥を踊るのは日本では(?)最後とのことだったので、観に行った。
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
原振付:マリウス・プティパ/レフ・イワノフ
原台本:ウラジーミル・ペギチェフ、ワシーリー・ゲリツェル
演出・台本改訂・振付改訂:アレクセイ・ファジェーチェフ
指揮:ダヴィド・ムケリア
管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
オデット/オディール:ニーナ・アナニアシヴィリ
ジークリート王子:デニス・マトヴィエンコ
悪魔:ワシル・アフメテリ
「白鳥の湖」は、ABT版を4回、キエフバレエ版、サンクトペテルブルグ版を実際に見たが、結末はバレエ団によって解釈が異なる為、悲劇だったりハッピーエンドだったりするのだが、今回のグルジア国立バレエ版にはビックリ。
まず最初の1幕目の幕が上がったとたん、両脇にバレエのレッスンバー、正面には鏡が置かれ、振付師がダンサーを指導する場面から始まる。王子役のダンサーが稽古場で疲れて寝てしまい「白鳥の湖」の夢の世界へ。そして2幕の最後、悲劇ともハッピーエンドともつかぬまま王子役のダンサーが稽古場で夢から覚めて終わるという筋書き。
もともとのバージョンよりも相当あちこちはしょってあるので、上演時間も短く休憩時間を入れず正味の上演時間は105分。
ニーナの両腕のみならず肩甲骨にかけての柔らかい動きによる翼の表現の真骨頂の場面は、ABTの時には、王子が再び森を訪れるが白鳥が悲しそうに去って行く時に舞台の下手(観客側からは左)から上手に向かって観客に対して後ろ向きに進んで行くが、今回のグルジア版では、やはりスターの彼女の見せ場として、一番最後の場面の稽古場で、王子が夢から覚める時に登場して素晴らしい腕の動きを披露すると言う演出だったのは面白かった。

一番の楽しみである2幕目の黒鳥の32回転グランフェッテは、さすがニーナで、軸がぶれずに素晴らしかった。49歳とは思えない。
右の画像はHPから拝借したものだが、群舞はこの画像のような揃った動きが出来ていなかった。
手の角度や肘の角度がずれているだけでなく、アラベスクでじっとしている時の挙げた足の高さ(角度)が異なるので綺麗に見えない上、一人のダンサーはバランスを崩してゆらゆら。。。
1幕目のパ・ド・トロワでは、急遽男性がウイリアム・サントスからギオルギ・ムシヴェニエラッゼに変わったこともあってか、彼が二人の女性の手を取る時に一人の手を取り損ねていたり、上手(かみて)に3人ではける時にその女性と彼の足がぶつかったようで、彼の動きが小さくなっていた。
スペインの踊りは良かったのだが、最後にポーズを決める時に女性のひとりが扇子の向きを間違えていて、ポーズを決めている時にさっと直したり。
2幕目に、白鳥の群舞の中をニーナの白鳥(オデット)がぬって行く時、暗闇での立ち位置を示すポイントマーカーか、床の切れ目かに足をとられてしまい、私じゃなくて床のせいよと言うように床面を振り返って見た動きはさすがスターの彼女だからこそかと。
ニーナを観るのは、グルジア国立バレエを引き連れて来日した時の ロミオとジュリエット、ABTでの ジゼル やABTオープニングガラの ジゼル、ドン・キホーテのキトリ を2回(こちら と こちら)、白鳥 は こちら や こちら、バヤデールのニキヤ と数えてみると8回は見ているが、遠目からもさすがに1963年生まれの現在49歳で2児の母の背中はたくましく、年齢を重ねられたなぁと。
因みに、ご主人はグルジアの外務大臣。一度、ABTの公演時に、未だ外交官だったご主人が、小さな赤ちゃんだったお嬢さんをだっこして来ておられたが、結構なお年でとてもかっぷくも良かったので、びっくりしたことを思い出した。
名古屋では、東京と異なり、チケットのディスカウントなどはほとんどお目にかからないが、すでにチケットを買ってから、今回は主催者側からのDMが送られて来て、2枚ペア券を買ったらいくら、、、などとお安い提示がされてきていた。そんなことならそれを待って買えば良かったなぁと。。。
今回の日本ツアーでは沖縄なども回っていて盛況だったと聞くが、名古屋の場合、もともとのチケットの売れ行きが良くなかったのだろう。果たしてどれぐらい招待券やディスカウントチケットなどを出したかは良くわからないが、今まで見たバレエの中ではお子さんの来場数も多かったが、それが要因とは思えない携帯音や私語や雑音などが多かったような。。。
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