愛知芸術文化センターでは 「はじめてアート講座2012」 という無料講座があり、映像、陶芸、現代音楽、オペラ、ダンス、美術と6部門に分けて6回行われたので、6回目の美術の講座 「愛知県美術館なう」 を聞きに行った。
愛知県美術館館長の村田眞宏氏と、学芸員の副田一穂氏との対談形式で、画像などを映写しながら行われた。(画像はHPより)
歴史
昭和30年開館。戦後の復興を目的とし、当時は貸ギャラリー活動が中心だった。
平成4年(1992年)に、現在の芸術文化センターが開館。かつて貸ギャラリーがメインだったこともあり、現在もギャラリー用スペースを有している。地下5階~10階まで大ホールが使っているので、8階にある美術館には、壁で回遊するような造りとなっており、大ホールの空洞部分などの関係から、重さ制限などもある。
収集

グスタフ・クリムト
「人生は戦いなり(黄金の騎士)」 1903
17億7千万円で購入。開館時に、トヨタが建物代に30億円と、絵画購入に20億円の寄付をしたので、その寄付金で購入。類作がないもので、馬にまたがる騎士はクリムトを、馬の足元にある顔(非常にわかりにくいが)は抵抗勢力を表している。右側には花園が広がるが左には蛇もいる。オーストリアに里帰りで貸し出した際、開梱する様子を現地テレビ局が撮影しに来た上、展示室は有名な「接吻」と同じ部屋になるほどの作品。

ポール・デルヴォー 「こだま」 1943
リアリスティックでありながら奇妙でもある。塗りつぶした裏面にカップルの二人の絵が隠れていた。画家と婦人のタモアか?

エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー「グラスのある静物」 1912
ドイツ表現主義の作品。
当時は退廃芸術とされていて、「退廃芸術展」に出品されていたが、ヒトラーによって多くの芸術品が失われた。この作品は、戦費を稼ぐために売られたもようでヨーロッパにあったもの。尚、マックス・エルンストなどの作品もなくなってしまったが、戦後、エルンストは「美しき女庭師の帰還」を再度描き直した。

オーギュスト・ロダン 「歩く人」 1900
下半身と上半身が異なるもので中央部分でつけてあるがブロンズの鋳造技術が素晴らしい。購入当時は1億円しなかった。

東山魁夷 「雪の山郷」 1991
開館準備の時はバブル期で、非常に東山魁夷の絵が高額だった為、愛知県の偉い役職の方々が、愛知の特産のアサリや鰻、キャベツなどを持って、1年半~2年にわたり東山魁夷氏のもとを訪ね、ようやく愛知県民の為にと描いてもらった作品。
色々買ってはいるが、勿論購入に失敗し、他の国内美術館に行ってしまったものもある。(宮城県美術館のカンディンスキーなど)
木村定三氏のコレクション
3284点が寄贈されたが、時価総額にして54億円ともなる。
多数あるコレクションは、それぞれ風呂敷で包めるものは包まれていて、木村氏のお気に入りの物には、その風呂敷にハナマルなどが書かれていた。
木村定三コレクションのひとつ。痛みや汚れなどを取る為に表具をやりかえたが、その表具の安定の為に展示はできず、1年は収蔵庫で保管しなければならず、現在公開は出来ないとのこと。
文化財レスキュー
東日本大震災以降、陸前高田と石巻の美術館に愛知県美術館からは4名が5回に渡り、文化財レスキューとして派遣された。全国からも美術館レスキュー隊がやってきている。
愛知県美術館でも震災後の日程として、あらかじめプーシキン美術館展を企画していたが、キャンセルせざるを得ず、急きょ棟方志功展を開催することとなった。
収蔵庫
アイウエオ順でラックにかけたり、棚にしまわれているが、いずれもさらしを使って地震などでも落ちないようにしている。床や引き出しなどは、塗料に含まれる物質が作品に影響しないように塗装はされておらず、収蔵庫の壁は湿気を吸ったり自在に縮む木の板がはめ込まれている。
愛知県美術館なう

フェルナン・レジェ 「緑の背景のコンポジション」 1931
蟹江プロパンの2億円の寄付により、昨年購入したもの。背景の地の色が最後に塗られている。一見平面的ではあっても、実際には奥行が表現されるなど複雑で、地とモティーフとの関係が面白い。


ゴーギャン 「木靴職人」と「海岸の岩」 1888
全く知らない人から遺言書の一番の項目に愛知県美術館に3億円を寄付するようにとあり、その寄付金にてサザビーズのロンドンのプライベートセール(オークションなどで誰に渡るかわらかないという方法ではないセール)より購入。現在手続き中の為、本来なら税関倉庫に置かれるべきところだが、特例措置として愛知県美術館の収蔵庫が税関の保管場所という扱いで、すでに収蔵庫に置いている。
2010年に初めて開催された愛知トリエンナーレで、愛知県美術館も会場のひとつとして使われたが、全く企画は別のもの。トリエンナーレ開催によって、愛知県美術館としては現代美術展を開催しづらくなってしまった。そのため、差別化して、新進作家の紹介を兼ねた「APMoA Pfoject ARCH」 を企画している。
色々な舞台裏のお話を、館長や学芸員さん自らが話して下さったので、なかなか面白かった。
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