パリ・オペラ座バレエ団の日本公演として、 「天井桟敷の人々」 が、昨日・今日と名古屋で2公演、そして東京で4公演が行われるに先立ち、バレエ団芸術監督のブリジット・ルエーブルさんの講演に、友人が誘ってくれたので行ってみることにした。

実際の彼女は、この画像から受けるクールさだけではなく、表情豊かで、ときにはジョークを交え、椅子はあったのだが、身振り手振りどころか、ステップを披露するべく、講演のほとんどは立ったままで一生懸命に話してくれ、途中から通訳さんのことを忘れてしまっているかのように、熱く語って通訳さんが苦笑していたり。
パリ・オペラ座は、世界最古のバレエ団としてルイ14世の時代、つまり350年以上前からある。現在約150人のダンサーが所属し、そのほとんどのダンサーはパリ・オペラ座学校(今年で創立300年)の出身者で、カンパニーに入団してから離れる人はほとんどおらず、団員は42歳の引退年齢まで契約が続く国家公務員。また、「パリ・オペラ座の全て」なる映画まで出来るほどのバレエ団。
因みに、彼女は2013-2014シーズン末に退任することが決まっており、その後には、映画「ブラック・スワン」でナタリー・ポートマンと共演し、後にナタリー・ポートマンと結婚したバンジャマン・ミルピエ氏が就任する。
以下、講演の備忘録:
ルイ14世(太陽王)は、自身がそのコスチュームを着て踊るぐらいの踊り手で、彼の庇護のもと発展。
ヴェルサイユ宮殿を大きな舞台とし、単なる踊りから芸術へと変わって行った。踊りも、男性だけの踊りから、女性の規律のあるプロフェッショナルな踊りへと進化していく。
ただし、当時は一切観客に背中を見せない踊り方であったり、フランスとスペインの国境沿いのバスク地方の踊りにあるバスクステップなど、すでにヨーロッパにあった踊りを取り入れて行った為、エレガントであったが同時に庶民的でもあり、それが徐々に洗練されていく。
1713年1月11日に王立バレエ学校が設立されると、それまでの踊りに規律が生まれた。
ノヴェール?という振付家が、初めてその踊りに物語性を持たせ、美しさだけではなく、内面的なものをも観客に訴えていくこととなる。
イタリア人のフィリッポ・タリオーニ(通訳さんはフィリップ・タドゥリオーネとフランス風に発音されていたが)が、「ラ・シルフィード」を振付し、ロマン主義のバレエとしてイタリアの影響を与えた。自分の娘であるマリーの為に振付けたもので、主人公には羽根をはやし、また、娘は腕が長かった為、両手をあげてふわりと跳ぶ動きをつけた時の着地の足を爪先立ちにする振付を考案。現在のポワント(トウシューズ)を履いて立つ動きへとつながる。
当時はドレスのような衣装だった。
男女の踊り手の関係も変わり、女性が中心となり、その女性を支えるのが男性の役目となった。しかし、実際その当時は未だ未だ男尊女卑で時代はバレエとは逆だったけど、、、と彼女は付け加えつつ、特にフェミニストの集会じゃないから・・・というようなジョークをとばしていた。
マルセイユ生まれのフランス人振付家マリウス・プティパは、イタリア人のタリオーニと重なる時代でもあり、ピエール・ナコッタという振付家も登場。それぞれの振付家は 「彼には踊ってほしくない」 などと衝突することともなり、結果、バレエが世界に広がることに。
プティパは、モスクワのバレーリュスに行き、「眠れる森の美女」 「くるみ割り人形」 「白鳥の湖」 「ドン・キホーテ」 などを振付る。
現在のロシアは、ボリショイとマリインスキー(サンクトペテルブルク)が良い。イタリアは質は良いが、今は力が落ちている・・・とのこと!
プティパは近代バレエの父であり、彼の振付なのか、ヌレエフの振付なのかなど、すぐわかる。
20世紀に入り、ニジンスキーや、ハバロフ?、タリエフ?の力は偉大。
シャンゼリゼの劇場で、ニジンスキーによるストラヴィンスキーの 「春の祭典」 はある意味大きなショックを与え、バレエは次なるステップへと進む。
ロシアのバレエリュスは終わるが、キャロッター・ゾンベリが、バレエリュスとの橋渡しをしてくれた。キャロッター・ゾンベリには、講演者のブリジット・ルエーブルさんが幼い頃に指導を受けており、彼女はお稽古の時にキャッシュをそのまま渡すことを嫌い、封筒に入れて渡すとお礼のキスをしてくれた、、、という想い出があるとのこと。 ただし、古典を踊る人だったので、新しい作品は好みではなかったのだそう。
5つのポジションでの挨拶の方法があるが、6つ目をリファ?が作った。
ヌレエフは、まるで地震のようにバレエ界を揺るがす。プティパの古典をパリで甦らせた。
アメリカ人のイサドラ・ダンカンも、その奇抜な踊りで偉大だった。
ブリジット・ルエーブルさんは、20年間、芸術監督に就任していたが、20世紀から21世紀への道を開くのが自分の役目と思い、古いものから、ピナ・バウシュなどの新しいものを平均して公演されるように考えて来た。
今回上演される「天井桟敷の人々」も、スペイン系フランス人のジョゼ・マルティネスによる。
常に、流動性があり、影響し合える開かれたバレエ団であるべきと考える。(※ 通訳さんによる日本語発音の固有名詞などは、そのまま表記したつもりだが、曖昧な点も多々なので、ご容赦頂きたいです)
質疑応答として、非常に面白い質問がとんだ。
クラシック音楽やオペラには、それぞれ楽譜があり、遺族にある程度の権利料や楽譜代などを支払えば、他の人が演奏することが出来るが、バレエの場合は興行主がその権利を有していて、その自由度がない。それは何故か?それについてどう思うか?
すでにブリジット・ルエーブルさんの講演予定時間の1時間を過ぎていて、それから15分程度のビデオも上演される予定で、ビデオの不具合の間に質疑応答となったのだが、それに対して答えかけたところでビデオが直り放送が始まってしまい、また後で・・・となったが、上演後はその日の開演35分前となっていたのでそのまま終了。果たして、時間不足は難問への良い助け舟になったのかどうなのか。。。
コメント