3年前のトリエンナーレとは異なり、「あいちトリエンナーレ2013」の催しの中で、通常では見られない建物の内部を見学するプログラムがいくつかある。
愛知芸術文化センターには、愛知県美術館オペラやバレエなどが演じられる大ホール、クラシック音楽の為のコンサートホール、演劇などの為の小ホール、ダンスのワークショップなどが開かれるリハーサル室、各展示室などがあるが、今回、大ホールとコンサートホールの劇場探検と称するオープンハウスがあった。

1部 コンサートホール
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残響時間は、満席時に約2.1秒となるよう設計されている音響施設。シューボックス型が持つ音響特性とアリーナ型が持つ舞台と客席の一体感を合わせもつ、バルコニー型を併用したアリーナ型のホールとのこと。国内最高水準のドイツ製のパイプオルガンも備えられている(上の画像では大きなスクリーンの奥にパイプオルガンがある)。1階388席、2階840席、3階572席、合計1800席。

① スライドとクラシック音楽の名曲による「ブレーメンの音楽隊」

司会 : 中村ゆかり(音楽評論家)
ヴァイオリン・ヴィオラ : 江頭摩耶
ピアノ : 金澤みなつ
オーボエ : 柴田祐太
テノール : 田中健晴
メディア : 山下拓也

♪シューベルト作曲:楽興の時 D780より第3番ヘ長調、♪ショパン作曲:幻想即興曲Op.66、♪伝カッチーニ作曲:アヴェ・マリア、♪クライスラー作曲:愛の喜び、♪デンツァ作曲:フニクラ・フニクラ、♪ショパン作曲:24の前奏曲Op.28より第7番イ長調、♪チャイコフスキー作曲:バレエくるみ割り人形より葦笛の踊り、♪ムソルグスキー作曲:組曲展覧会の絵よりキエフの大門、♪ブラームス作曲:反バリー舞曲第5番、♪ブラームス作曲:子守唄Op.49-4、♪ピンクパンサーのテーマ、♪ハチャトゥリアン作曲:バレエ音楽ガイーヌより剣の舞、♪ヴェルディ作曲:オペラ椿姫より乾杯の歌

それぞれの楽器や歌声で動物の声を担当してクラシック音楽による「ブレーメンの音楽隊」が演奏され、ステージ上のスクリーンにトリエンナーレ出品作家の山下拓也さんのスライド画が上映された。

②バックステージ見学
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左のピアノ スタインウェイD274
生産国:ドイツ
購入時期:1992年 
購入価格:1200万円
スタインウェイ社は1853年創業で、現在はNYに本社があり、NYとハンブルグに工場がある。
このピアノはハンブルグで生産されたものでほとんどの材料はヨーロッパ産。
材木は約2年貯蔵され、約1年後に完成する。
スタインウェイは表現力が豊かで、鉄骨ごと鳴らすため、後から伸びる力強い響きが特徴で、愛知芸術センターには、同じタイプのピアノがもう1台あり、ほとんど手作業で造られたピアノらしく音質が微妙に違うのだそう。

右のチェンバロ ノイペルト バッハタイプ
生産国:ドイツ
購入時期:1975年
購入価格:800万円
木箱に張ってある様々な長さの弦をはじいて音を出す楽器が起源で、16世紀に鍵盤で弦をはじく、メカニズムが付いてチェンパロとなる。ピアノのようにハンマーで弦を打つ機構ではなく、爪のようなもので弦をはじくようになっている。バッハが活躍したバロック時代(17~18世紀)が全盛期で、タッチにによる強弱が出来ないためか、ピアノに王座を奪われていった。
チェンバロはイタリア語で、イギリスではハープシコード、フランスではクラヴサンと呼ばれている。

オーケストラが使う椅子なども展示されている。
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椅子は椅子でも高さが異なり、黒は41センチで一番多く使われ、濃いグレーは45センチ、薄いグレーは47センチで主に外国人用として使われる。

チェロ椅子。チェロ奏者が使う椅子で、高さを調節することが出来、ピアノやハープ演奏者が使うことも。オーケストラのコンサートマスターもこれに座って演奏する。コントラバス椅子も高さを調節できる。
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指揮者用譜面台と指揮台。指揮者用譜面台は、大きなスコア(総譜)や複数のスコアを乗せて素早く譜面をめくっても揺れたり倒れないように大きく重く作られている。指揮台は、このホールでは3種類あり、大、小、後ろにパイプがあるものがある。

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オーケストラホワイエには、ここで演奏した色々な演奏者や歌手達のサイン入りのチラシが貼ってある。

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舞台上の照明などを操作する操作卓

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パイプオルガン カール・シュッケ作
生産国:ドイツ 1992年完成
購入価格:2億円
5段手鍵盤とペダル
音色:93ストップ
パイプ総数:6883本
パイプオルガンは紀元前2世紀頃、エジプトで水力を使って空気を送り込んでパイプを鳴らす水オルガンと呼ばれる楽器が起源。その後、ギリシャに伝わり、風圧オルガンに変わる。それにはふいごが発明された。6~7世紀頃、パイプは付けられた取っ手を手で引いて音階を変えていたのだが、鍵盤に変わり、現在のオルガンの原型となる。このオルガンは、日本で最大級の物で、3段目のストップにはフランス、4段目にはドイツロマン派、5段目は良く通るソロ的な音色があり、オールマイティに弾ける。
上左の画像のオルガンは、移動式コンソールで、光ファイバーを本体とつないで、ステージ上でパイプオルガンを演奏する。

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グランドピアノが乗る舞台の上にも上がれる。

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そこでは、ピアノ、ヴァイオリンやヴィオラ、オーボエの奏者達がそれぞれの楽器について解説してくれる。
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楽屋なども見学できるのだが、そこは長蛇の列だった。

2部 大ホール
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本格的なオペラ上演が可能な劇場(プロセニアム型ホール)。オペラ、演劇、舞踏など和洋の舞台芸術の上演、鑑賞に適しており、主舞台だけでなく、両側舞台や後舞台もあり、客席は2500席。馬蹄型オペラ劇場の雰囲気を取り入れた3層の囲み型バルコニーで、鑑賞条件の良い1900席規模にも変更可能な可変機構を備えている。和物の上演時には、鳥屋付きの本花道が設置でき、床及び吊り物等の舞台機構、舞台照明設備、電気音響設備は、いずれもコンピューター制御とのこと。

① 幕前での演奏 ♪ブラームス作曲:子守唄Op.49-4
コンサートホールで演奏された江頭摩耶さんと、テノール歌手の田中健晴氏が幕前で演奏。
② 舞台機構ショー
舞台機構を使ったショーを鑑賞。
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両側舞台による演出。
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後ろ舞台からの演出や、奈落部分の床面の動きが観られる。

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上から吊るされたバトンの演出。中国の女子十二楽坊の「輝煌 Glory」の曲に合わせて、バトンが上がったり下がったり。

そしてメインイベントの奈落体験。
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舞台にあがらせてもらう。

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そして徐々に舞台がせり上がる。上の画像の右側の舞台袖の部屋が右の画像では同じぐらいの高さに
なっているのがわかるかと。
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そして今度は舞台が下がる。どんどん下がって行き、後ろ舞台が前(我々の頭上)にせり出て来て、我々は密閉される!

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コンサートあり、コンサートホールのバックステージツアーあり、大ホールでの機構ショーや奈落体験ありと、盛りだくさんで面白かったかと。