イメージ 1


知人に勧められた、視覚以外の感覚を使って体験する
エンターテインメント形式のワークショップに行ってみた。




イメージ 2












キラー通りのビクターのスタジオのそばにある
ビルの地下が会場。




イメージ 3



1989年に、ドイツのアンドレアス・ハイネッケ博士が発案したもので、日常生活のさまざまな内容をまっくらな空間で、聴覚や触覚など視覚以外の感覚を使って体験するもので、頼りになるのは、目の不自由な方が持たれる杖一本。




(以下、ネタバレあり)

参加者は8人までのグループで、完全に光が遮断され、目を開けていても閉じていても何ら変わらない完全な暗闇の中に入る。視覚障害者のスタッフがガイドさんとなる。
まず全員は暗闇の中でお互いのニックネームで自己紹介を行う。我々の時は、4カップルだったのだが、一度に全員のニックネームと声の特徴なんて覚えきれない。初対面の情報は、いかに視覚から来ているかを痛感することに。
皆で身体を寄せ合いながら、杖をついて足元を確認しながら進む。小さな橋があり、一人だけにガイドさんが橋のはしっこを手で触らせて示してくれるので、その人はグループの他の人に手をとって橋の場所などを示して渡っていく。一人ずつ連携しながら無事橋を渡ると、地面が変わり、足の裏の感覚、そして土の匂いや水の音などがしてくる。嗅覚や聴覚の活躍。
ブランコに乗る。ブランコが楽しかったという方もいらしたが、私の場合は、いかにブランコは視覚によって楽しむものなのかを知った。
水琴窟もあり、水を触ることも出来る。
皆で一軒の家の軒先から座敷にあがる。順番に縁側に座って靴を脱ぐのだが、自分の靴の位置を知る為に、両隣が誰かを覚えておく。
畳の部屋では杖は使わないので、杖の存在意義を知ることになる。
中に鈴の入ったボールで遊ぶ。皆で円を作り、それぞれの声の方向を頼りに、ボールをころがしてパスをする。
テーブル席では、ビールや日本酒、おつまみなどを楽しむ。お金はあらかじめ少額をポケットに入れておくように言われていたので、自分がいくら持っているかわかっているが、コインやお札など、わかりにくい。
今回我々が行った時のテーマは「秋祭り」だったので、おつまみには、うまか棒、するめ、かりんとう、ラムネが用意されていた。それぞれパッケージに入っているのだが、上から触って形状を知り、香り、そして食べている物を想像する。するめは香りが強いのですぐにわかるが、他の物はいかに目から情報を得て食べているかを痛感。
ツアーの後は目をならす為に、まず薄暗い部屋に入る。
ソファーがあるので、皆座るのだが、今までは一歩動くのも方向感覚がなく、おっかなびっくりだったのに、ほんの少しの灯りだけでささっと皆座ることが出来る。そうなると、ガイドさんは何処の椅子が空いてますか?と。彼女には未だ暗闇の世界が続いていることを知らされた。

視覚が使えないことで、五感のうちの残る能力を総動員で頑張るわけだが、いかに視覚から得る情報が多いかと実感。
アイコンタクトはもとより、会釈や相槌代わりのうなずきも暗闇では通じない。すべて声に出さなければ通じない。
また、私の場合は、一緒に進んでいた8人グループでおつまみなどを食べている時、後の予約時間のグループが追い付いて来てワイワイと声で確認を取っていたりするのを聞くと、自分が頼りにしていた8人の声がかき消されてしまう怖さを感じた。目が不自由な方の人ごみの中の恐怖みたいな・・・
真っ暗な所では、全く知らないグループの男性や女性の手を取ったり、肩に手を置いて一緒に進んだりしていたが、いざ、明るい所に移動すると、誰が誰かがわからない。そして急に皆、恥ずかしいからか、声を発することもなく、お互いの距離を取っている。
見えるか見えないかで他人と取る距離が変わることも初めての発見だった。

視覚障害者の方の疑似体験と思うと、ちょっと重たいテーマのワークショップととらえる方もおられるかと思うが、普段では気付かない五感のそれぞれの役割などを知る意味でも面白かった。


これまでヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界各国の都市で開催されてきた。ドイツでは20年間、日本では10年間の歴史があり、今年は大阪でも2カ月弱、「対話のある家」として、オープンしていた。
いままでの参加者数は、世界全体で600万人以上、日本では約5万人とのこと。