
ウエストサイドストーリーが2か月間、ダーバン市街で上演されているとのことで、行ってみた。ウエストサイドストーリーは、ブロードウェイでリニュー版を観て以来となる。
マリア : Emestine Stuurman
リフ : Jarryd Nurden
チノ : Sibu Radebe
トニー : Clint Lesch
アニータ : Nurit Graff
ベルナルド : Reg Hart
演奏 : KZN Philharmonic Orchestra
(クワズルナタール交響楽団)
2か月間の公演だが、セカンドキャストやアンダースタディがいないことにも驚いた。

ブロードウェイミュージカルとこちらの出演者のレベルを比較するのも気の毒かとは思うが、正直言って、厳しいものがある。
トニー役のClint Leschは、最初の一曲目は全く声が出ておらず、大丈夫か?と心配になるぐらい。
マリア役のEmestine Stuurmanも同様。しかし、いずれも徐々に声が出て来て、良かったのだが。
歌って踊ってお芝居が出来て、、、と当たり前のようにオールマイティな役者揃いのブロードウェイに対し、ここの出演者はそのどれかが秀でていれば、、、と言った印象かも。
ただ、トニー役のClint Leschは、歌える上、踊りのキレが他の人達よりも抜きんでていて、ジャンプの高さや柔軟度なども良かった。
マリア役のEmestine Stuurmanは、役柄上、あまり踊らないかも知れないが、もっぱら歌。
アニータ役のNurit Graffが、歌って踊って良かったかなと。
群舞で登場するジェッツ(ポーランド系移民チーム)の一人は、とても身体能力が高く、片手倒立どころか、そこから片手でジャンプするなど、凄い。観ていて驚かされるぐらいの動きなのだが、ただ、それは群舞というよりも、彼の独壇場となっていて、果たしてそれをウエストサイドストーリーでするべきかどうかはいささか疑問。
ブロードウェイで2009年に観た時は(その様子は こちら)、この作品の脚本家であるアーサー・ローレンツ氏が未だ存命で、本来の英語の歌詞やセリフの一部を英語からスペイン語にした新演出のバージョン。今回のものは、従来の全て英語バージョンのものだが、振付などを少し変更しているのだとか。

もともとのストーリーは、NYのウエストサイド、1950年代初頭のポーランド系移民と、後発でやってきたプエルトリコ系移民の若者達の抗争をロミオとジュリエットを下敷きにして脚色されたもの。しかし、ロミオとジュリエットは、犬猿の家どおしという設定だったが、ウエストサイドストーリーは人種問題がからみ、より複雑。
ポーランド系移民グループのジェッツを表現する為に、ひとりの役者が、途中でユダヤ系の男性が頭につけるキッパを乗せるなどの演出を。一方、プエルトリコ系移民グループのシャークスは、スペイン語なまりの英語を話していた。
が、面白いのはそこに南アテイストが加わること。
ポーランド系移民グループジェッツのリーダー格などほとんど(ユダヤ人も含め)白人ではあるが、肝心のトニーを演じる役者さんが、あくまでも私の憶測だが、カラード(白人と黒人との混血)っぽいこと。また、ジェッツの団員になりたがっている男勝りの少女であるエニィボディズ(ロミオとジュリエットではロミオの召使いのバルサザーに相当する)には、黒人の女性が配されている。
男性メンバーの中には、インド系の人が一人いたのも、インド以外では一番インド系の人達の人口が多いダーバンの町ならではか。
一方、プエルトリコ系移民グループシャークスのリーダーの方がトニー役の英語より流暢な英語の白人だが、他のメンバーはほとんどが黒人。そして何より彼の妹役であるマリアは黒人のEmestine Stuurman。
白人VS黒人という構図にだけはしないが為の配役なのか、それは深読みなのかは良くわからないが。

1896年に建てられ、1935年に修復された劇場は、チューダー風。あいにく、そのチューダー風建物は改修工事中の為、現在はネットがかかっていて、外観は見られないが、かつてはこんな感じ(画像はHPより)
その隣のピンク色の建物から入ると、中でつながっている↓

内部のチューダー風建築は木材が多様されなかなかゴージャス。クリスマス前だったこともあり、ツリーなども。

座席数は1300名ほどのシアターだが、どこをどう見てもアジア人は我々だけ。そのほとんどが白人で、黒人の観客はわずかで、両手で足りる程度。

内部にも、チューダー風の装飾が壁に施されていた。


内部でつながっているピンク色の建物の方も、正面は吹き抜けになっており、そこにはマンデラさんの写真とそこに記帳できるようになっていて、若い白人の女の子達が書き込んでいた。

バンケットなどが出来るボールルームがある。

とにかく、今回一番驚かされたのが、オーケストラの生演奏、そして40名近い出演者のちゃんとしたミュージカルでありながら、そのチケット代が100ランド~150ランド(約1000円~1500円)。バーカウンターでお願いしたオレンジジュースはわずか7ランド(70円)。そのようなしくみで成り立っているのが不思議。
南アの高級スーパーと言われるウールワース Woolworth の食べ物の物価はほぼ日本と同じくらい、セキュリティのしっかりした日本人が住むエリアの家賃に関しては、都内の高級マンションの賃貸料ほどするこの国にあって、黒人の平均月収が6万円。ブルーワーカー系黒人で日給1000円程度。10円のバス代も払えずに仕事に行けない人もいるぐらい。
一方、ダーバンには来ないがヨハネスブルグとケープタウンで公演する(東京と大阪ではやって名古屋ではやらないのは、まるで日本の 『名古屋とばし』 と同じ、、、)、ブルース・スプリングスティーンのチケットは、350~1900ランド(約3500~19000円)。パーク&ライド代(駐車場+送迎代)だけで120~160ランド(約1200~1600円)。
ダーバンまで来てくれるブライアン・アダムスのチケット代は340~680ランド(3400~6800円)。ヨハネスブルグやケープタウンも似たり寄ったりの金額。
なんと、エミネムも来るのだが、ダーバンには来ずに、350~1250ランド(3500~12500円)。
カルロス・サンタナが510~850ランド(5100~8500円)。
ちょっと久しぶりに聞いた名前では、エアーサプライが265~495ランド(2650~4950円)。
五嶋みどりさんが5月にケープ・タウンに来るようだが、驚いたことにわずか150ランド(1500円)!!
一方、クワズルナタール交響楽団KZNは、50~210ランド(500~2100円)。
同じくミュージカルの 「アニー」 は130~200ランド(1300~2000円)。
観客層のほとんどが白人と考えると、クラシックやミュージカルなどのチケットの値段をもっとあげても良いのではないかと。
聞くところによると、上記のような外国からの有名どころのコンサートは例外として、スポーツ観戦 (オランダ系白人のアフリカーナはラグビー、イギリス系白人はクリケット、黒人系はサッカー) にはお金を出しても、こと、クラシック系音楽やミュージカルなどの文化的なものにはお金を出さない人が多いのだとか。。。
貧富の差が激しいと言われるNYでも、そう言ったチケットの価格は日本と遜色ない割合だったのに対し、南アでは、人種によっても物の価値観や購買価格帯が異なる為、本当にこの国の物価は推し量りにくいなと。
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