ミュージカルの 「スウィニー・トッド」 がダーバンで上演されたので行ってみた。
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南アで初めて観たミュージカル 「ウエストサイドストーリー」 にちょっと落胆していたので(その様子は こちら )、今回も期待せずに行ったところ、南アのミュージカルレベルを酷評したことを撤回せねばならないかと。

もともと、最初に 「スウィニー・トッド」 を見たのは、NYブロードウェイで2006年に再演されたもの(その様子は こちら)を観て、その後にジョニー・ディップ主演の映画、2011年に市村正親と大竹しのぶの再演の舞台(その様子は こちら )を観ていたのだが、ブロードウェイは別格としても、今回のものは非常に良かった。

作詞・作曲 : Stephen Sondheim
脚本 : Hugh Wheeler
演出・振付 : Steven Stead

スウィニー・トッド : Lason Ralph
ラヴェット夫人 : Charon Williams Ros
アンソニー : Lyle Buxton
ジョアンナ : Sanli Jooste
トバイアス : Bryan Hiles
ターピン判事 : Richard Salmon  
ビードル : Darren King
アドルフォ・ピレッリ : Danilo Antonelli 
女乞食(ルーシー) : Katy Moore

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主演の2人が非常に良い。
こう言ったらなんだが、市村正親氏や大竹しのぶ氏は、その名前や存在感で歌云々よりも演技力で見せる部分が多大にあったが、このふたりは南アでどの程度有名なのかは知らないが、歌が上手い。
(後日、南ア人に聞いたところ、女性は有名とのこと)
そしてそれぞれの毒気が表現されていて、特にラヴェット夫人役の Charon Williams Ros は、コミカルな部分や肝っ玉母さん的な部分、悪女な部分などなど、表現力豊かでとても気に入った。

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若いアンソニー役の Lyle Buxton は歌も上手くて好青年ぶりを発揮していたが、いかんせん相手のジョアンナ Sanli Jooste の歌がいただけないのは勿体ない。日本ではその役をソニンが演じていたが、ずっとソニンの方が上手だった。

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気に入ったのは、トバイアス(トビアス)の解釈。映画では実際に少年のエドワード・サンダースが演じていて、日本のお芝居では武田真治氏が演じていた。日本の場合は宮本亜門氏演出版で、武田真治氏は少年役だった。しかし、今回のトバイアスは、ちょっと知恵おくれ的な少年と言ったイメージもあり、純真無垢な少年が最後にスウィニー・トッドを殺したというエンディングよりも、より何か深いものを感じた。

最初に、偽?理髪師のアドルフォを殺すシーンや、その次のお客を殺すシーンでは、実際に赤い血潮に見せた液体がぶわーっと首から飛ぶしかけになっていて、観客席からは驚きの声と同時に失笑のような笑い声が起こっていて、その笑い声を出す観客の反応に私は驚いた。
3番目に手をかけたのは、女乞食(ルーシー)だったのだが、その時は血は飛ばず、ターピン判事の時には少しだけ。チケットにも書いてあったが、10才未満はお断りとなっていた。

エンディングだが、宮本亜門氏演出では、最後に主役は死んで終わり・・・みたいな感じで幕となったが、今回はその後、全員のキャストが出て来て、再びエピローグとしてスウィニー・トッドのバラードを歌ったのは良かった。ブロードウェイ版では出演者が10名のみ、宮本亜門氏演出版もそれほど人数はいなかったと思うのだが、今回は全員で19名だったので、全員での歌などに迫力があった。

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会場は、クワズルナタール大学内にある Elizabeth Sneddon Theatre。

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Jock Leyden Gallery として、Jock Leyden 氏の壁画が所狭しとあり楽しめる。Jock Leyden は、1908年スコットランド生まれで南アに移住し、2000年にダーバンで亡くなった風刺画家。タイムズ紙による20世紀の新聞掲載の風刺画家のベスト6に選ばれている。

観客は一人の黒人の若い女性、そして我々アジア人2人以外、全て白人。私がお手洗いに入っている時に、後からやって来た女性2人が、「中国人が来てたわね!」 と会話されてしまった・・・
NYではそのようなことを言われることもないが、やはりここではアジア人は珍しく、アジア人=中国人と南ア人は思いこんでいるので、困ったものだ。
ちなみに、今回のチケット代金は、130~200ランド(=約1300~2000円)。やはりこの国の文化的なものの価格はお安い。
白人層が観客のほとんどを占めるのであれば、もう少しお値段を高くして、文化的なことをする人をより育てる素地に費やされる環境造りになれば良いのにと。

最初に観たのが、2006年度のトニー賞の Best Director部門を受賞した John Doyle 氏演出版で、全ての役者が歌のみならず楽器を演奏して(ピアノ、アコーディオン、バイオリン、クラリネット、チェロ、トランペット、ギターなどなど)音楽のテープもオーケストラも全く使わないと言う、画期的なものだっただけに、その印象が強かったのだが、可能なら再度それを観てみたいと感じた。