(※ 記事アップが遅れており、これは7月に一時帰国をした時のものです)

渋谷は文化村で、「ベルギー奇想の系譜展 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」 が開催されていたので行ってみた。
現在のベルギーとその周辺地域では、中世末期からの写実主義の伝統の上に、空想でしかありえない事物を視覚化した絵画が発展した。
15世紀末から「奇想」による絵画は、オランダ南部のセルトーヘンボスに生まれたヒエロニムス・ボスなる人がそのルーツとされており、没後もボス派によって受け継がれ、第二のボスとしてはピーテル・ブリューゲル(父)が描いた。そして17世紀になると、ルーベンスにその恐れや怒りなどの感情表現が現れる。

I  15~17世紀のフランドル美術

ヒエロニムス・ボス工房 トゥヌグダルスの幻想 1490~1500年
イメージ 1一見、何の絵かわかりにくいが、、、
地獄における 「7つの大罪」 と対応する懲罰を描写している。
その内容は、傲慢(左側真ん中やや上の死者の仮面を被った人物に鏡を見せられている女性)、嫉妬(その下、蛇に誘惑され犬に食べられるアダムとイブ)、怠惰(右上、悪魔の化身に取り囲まれベッドに横たわる人物)、激怒(その下、激昂した兵士に刺される人物)、大食(その左、大量のお酒を飲まされる人物)、邪淫(真ん中の下段、賭け事を表すサイコロに座る魔物に腹を刺された人物)、貪欲(その上、怪物の鼻から吹き出る貪欲の象徴であるコインの桶に浸かる修道士と修道女)、そして左下がトゥヌダルスがねむっている間に巡った地獄の様子。


イメージ 2ヤン・マンデイン 聖クリストフォロス 
制作年不詳
右上にある長い球根型の建物は、邪淫の罪の象徴で、娼婦の館をモチーフにしている。


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ピーテル・ブリューゲル(父)聖アントニウスの誘惑 1556年 目があっても水、耳があっても何も聞かないと言うことを表現している。



イメージ 5ヤン・マンデイン パノラマ風景の中の聖アントニウスの誘惑 制作年不詳




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ピーテル・ブリューゲル(父) 大きな魚は小さな魚を食う 1557年 聖書や異世界の物語を当時の社会に移植すると言う奇想を行ったもので、背景にはアントワープ港が描かれ、アントワープの繁栄を現している。その為、当時の人達に人気となった。


ピーテル・ブリューゲル(父)魔術師ヘルモゲネスの転落
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ピーテル・ブリューゲル(父)大食 1558年 「7つの罪源シリーズ」は貪欲、傲慢、激怒、怠惰、嫉妬、大食、邪淫からなり、全てが揃っていた。




II 19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派、表現主義

イメージ 9フェリシアン・ロップス 舞踏会の死神 1865~1875年頃
死神となった女性が、カトリックの司祭がミサで着るガウンを身にまとって踊っている教会を風刺したもの。作者のロップスは、反カトリック、反ブルジョワ。

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ペーテル・バウル・ルーベンス 反逆天使と戦う大天使聖ミカエル 1621年

イタリアでダビンチやミケランジェロの影響を受けたルーベンスは、人体の筋肉などの描写に富み、それに奇想を。






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フェリシアン・ロップス 娼婦政治家 1896年 
一番軽蔑されていた豚と娼婦の足元には、
彫刻、音楽、詩、絵画と書かれて擬人化された像があり、
政治家が盲目となっていることを揶揄している。












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ウイリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク
運河 
ビリジアングリーン




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ウイリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク 黒鳥



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ヴァレリウス・ド・サードレール フランドルの雪
ブリューゲル(父)は、こういった風景画に小さく人物を入れたが、彼にはない。人よりも崇高な空を表現。


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ジェームズ・アンソール オルガンに向かうアンソール
1933年


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ジェームズ・アンソール ゴルゴタの丘 1886年
十字架には名前が書かれており、かけられているのは作者自身で、その脇腹を刺している人の槍には Fetis フェティス と書かれていて、美術評論家の名前なのだとか。


ジェームズ・アンソール ソフィー・ヨテコと話すルソー夫妻 1892年


III 20世紀のシュルレアリスムから現代まで


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ポール・デルヴォー 海は近い 1965年




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ルネ・マグリット 大家族
1963年









レオ・コーペルス ティンパニー 2006~2010年
あばら骨の中には金塊、口には絵筆をくわえ、リズミカルにティンパニーを頭蓋骨が打ち鳴らすと言う何ともシュールなインスタレーション作品。



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トマス・ルルイ 生き残るには脳が足らない 2009年
頭が大きく重すぎて垂れてしまった像


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パトリック・ファン・カーケンベルグ 2007-2014年、
冬の日の古木 2007年~2014年
大木のデッサンかと思いきや、木の幹には階段や窓がある。






これらの絵画をもとに、「7つの大罪」 シリーズのショートフィルムまで作成されていて、面白い。この動画はほんのサワリだが。