偶然、ダーバンの駅に停車中のこんな列車を見た。

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歯科車両

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クリニック車両

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宿泊車両

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キッチン車両

もともと、南アは世界有数の医療制度を有し、南アの心臓外科医であるクリスチャン・バーナード医師が1967年に世界で初めて心臓移植に成功した国。勿論それは白人と黒人が分離されていたアパルトヘイト時代の白人社会でのことで、黒人ドナーの心臓が白人患者に移植されることが大問題になった時代でもあったとのこと。
マンデラさんが政権を取って、歴然とした医療格差を是正すべく、1600もの病院の新築や改築を行った。しかし、アパルトヘイト撤廃直後は医師や公務員の大部分が白人だった為、黒人と白人の数の均等化の為に白人に早期退職を促す措置が行われ、専門職の人達が民間に流出。その為、公立病院の医療サービスの質が低下してしまったと言う現実がある。
アパルトヘイト撤廃後、南アの平均寿命は下がり続け、最悪は2005年の52.57歳だったが、2016年の平均寿命は62.77歳。2013年の資料によれば、エイズ感染・発症者は成人人口の17.8%、医師の数は国民4219人に一人と世界最低の割合。
今現在でも、白人南ア人は先祖や配偶者などの先祖を辿ってイギリスやオーストラリアなどに移民したがっており、実際のところ白人の専門職の人達の多くは南アを去ってしまった。

しかしそんな中、地方で近隣に病院がない人達に向けて、アパルトヘイト撤廃直後の1994年からこの病院列車ペロペパ phelophepa 号が各地の巡回診療を行っている。冷暖房完備で、一か所に1週間滞在し、月曜~金曜まで約1500人の患者を診察後、また移動して行く。この phelophepa はツワナ語とソト語の方言で 「健康」 を意味する。

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サウスコーストをドライブしていると、この病院列車が走っていた。

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眼科車両

この列車にかかる予算は年間2500万ランド (約2億円)。
20名 (or 16名) による巡回医師、国内の医科大学の研修医40名 (or 30名) が2週間の輪番で乗り込む。(※人数に関しては、資料によりさまざま)
医療スタッフは、黒人と白人の半々で構成されており、医療スタッフ以外にも、常勤職員と各駅で雇う臨時職員が合計80名。
一般診療、医薬品相談、健康相談及び指導、歯科、眼下、精神科のそれぞれの車両があり、南アの国鉄とスイスの製薬会社ロシュの共同出資により運営されている。
1号車は物資庫、2号車は洗濯車両、3号車はキッチン、4号車はカフェテリア、そして宿泊車両や一般診療の車両が続き、10号車は精神科、12号車は歯科、14・15号車は眼下車両、16号車は薬局、17号車は警備。
眼下の統計によると、2015年1月~9月までに49521人が眼下車両を訪れ、そのうち3854人が白内障だったが、150名しか処置できず。
このペロペパ号の成功により、ペロペパ2号が造られ、現在3号が2016年から寄付などにより計画されている。
その3号には、手術車両を搭載する予定で、それはアフリカ大陸はもとより世界でも初めての移動手術列車となり、9カ月間で1万人の眼科手術をすることが出来る。