バンクシー展の <1> <2> <3> からの続き。

バンクシーはドブネズミをひとつのアイコンとして非常に多く描いている。
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「アイ・ラブ・ロンドン・ラット・フォトグラフ」2004年 ストリートアートのグラフィティ・ライターのキング・ロボとバンクシーは対立関係に。互いに敵の作品を改作し合ったりも。

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左:●「ベルサイズ・パーク・ラット・フォトグラフ」 レストランの壁面に描かれている。
右:●「ファイントン・ラット・フォトグラフ」
バンクシーはネズミの看板に常にメッセージを描き込んでいるわけではなく、他のストリート・アーティストのために空白にしておくこともあるのだそう。しかし彼らの書いたメッセージの多くは、当局によって塗りつぶされてしまう。

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●「チューズ・ユア・ウェポン・ライト」キース・ヘリングへのオマージュとして、キース・ヘリングの犬が登場。この絵が描かれた建物の所有者は有機ガラスを使ってこれを保護したが、その後誰かが壁にネコの絵を描いた。作品は壁から取り去られ、最終的にはオークションで売却された。

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●「ノー・ボール・ゲームス」2009年にロンドンで、2人の子供が「ノー・ボール・ゲームス(球技禁止)」と書かれた標識で遊んでいる姿を描き、政府は保存の為に作品を保護ガラスで覆った。しかし、2013年にこの作品は「ザ・シンクラ・グループ」という会社が、作品を剥ぎ取って3つの部分に分け3部作にした。しばらくして彼らは「スティーリング・バンクシー」展を開き、プライベート・コレクションのバンクシー作品を展示。この会社ともこの展覧会とも、バンクシーは何の関わりもなかった。下段の写真は、この作品が売却されたオークションの様子。

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「モバイル・ラバーズ」2014年ブリストルの若者支援センターのドアに描かれた。支援センターのディレクターは作品の盗難を恐れて、廊下に移して一般公開。破産寸前だったセンターはバンクシーの作品の拝観料を取る。しかし市議会は作品が市の財産であると主張し警察が没収。ブリストル美術館に展示。バンクシーはこの絵が彼の作品であると証明する手紙をディレクターに送り、「あなたがこの作品について正しいと思うことをして下さい」と書いた。作品はオークションにかけられ収益金はセンターに贈られることになったが、その日からディレクターは殺人予告を受けるようになってしまった。オークション後、40万3000ポンドで個人コレクターに売却された。

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「パルプ・フィクション」クエンティン・タランティーノ監督作品「パルプ・フィクション」へのオマージュ。2002年オールド・ストリートの屋根の真下にある家に描き、2004年にバンクシーはこのイメージを用いてプリントを制作。
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しかし、2007年にこの作品が人々を刺激してより残虐にしてしまうから、という理由で、ロンドン交通局は作品を塗りつぶした。すると地元アーティストがバンクシー宛に「カム・バック」とその塗りつぶされた壁面に追記。同年、バンクシーはこの作品を再び制作。このときはメインのキャラクターたちは手に銃を持っているが、バナナの衣装。
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しかしオゾン OZONE という若いグラフィティ・ライターがこの作品に上書きして「次のがもっとましなら、残してやるよ」とメッセージを残した。しかし数日後、オゾンは地下鉄車両に落書きしていた際に電車に轢かれて死んでしまった為、バンクシーはオゾンに捧げる作品として防弾チョッキを着た天使が手には野球帽を被った骸骨を持っている絵を描き、「アートファグにノーを。オゾンよ、安らかに眠れ」と書いた。
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2009年、バンクシーが描いた壁は再度上塗りされたが、イギリス人アーティストのマンティスが、バンクシーの「パルプ・フィクション」のテーマをもじって、バナナの皮を持っている痩せ細ったアフリカの子供2人を描いて、アフリカの問題を喚起した。
ただの壁だったところに、有名人のストリートアーティストが描いたことに端を発し、このような物語が生まれるとは面白い。

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「ウェル・ハング・ラバー」2006年に性的医療機関の壁に描かれた。市当局が行った調査では、97%の人が作品を残すことに賛成。一度損傷を負って修復されたが、2018年に破壊された。

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「カイト・ストーリー」2011年 ロサンゼルスで描かれた。道路標識は、メキシコ国境近くに設置されたもので、移民の家族が高速道路の横断を試みて死亡する事故が増加したことに端を発している。その道路標識にタコを描き加えた。しかし、塗りつぶされてしまった。市政当局や、競合するグラフィティ・グループや、ただ嫉妬心をもつ人たちに塗りつぶされたり、壁から切り取られて金儲けのために売られ、その一方で自然に崩れていくものもある作品の一例。

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●「ガール・ウィズ・バルーン」2002年、ロンドンのウォータールー橋の階段に描かれた壁画。「THERE IS ALWAYS HOPE. 希望はいつもある」と言う文言は誰かに書き足されたもの。今は塗りつぶされてオリジナルの壁画は残っていない。2018年、オークションで104万ポンドの値段が付いたとたん、シュレッダーで切られていく映像は記憶に新しい。絵は半分ほど切られた状態で止まったが、バンクシーがその直後に額縁にシュレッダーを仕込む様子などの動画を公開してリハーサルではうまくいったのにと。落札者はヨーロッパの女性で、美術史に残る作品になったとしてそのまま購入。「Love is in the Bin ゴミの中の愛」として、ドイツで公開されたとのこと。
因みに、今回出品されている物と、オークションで裁断されてしまった物とでは、風船の上の余白の大きさが違うんだなぁと。
実際の壁画
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その後も、色々な所にバンクシーは描いたが、今はどこにも残っていない。
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2014年3月に、シリアの内戦が3年目を迎えた時には、エッフェル塔とネルソン記念柱に投影された。イギリス人2000人にイギリスのアートランキングの投票が行われ、この作品が1位となった。

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2014年、ブリストルでフェルメールの「真珠の耳飾の少女」をもじった作品を制作。真珠の耳飾を壁にあるアラーム・ボックスに置き換え、作品のタイトルを「ザ・ガール・ウイズ・ア・パンクチャード・イアドラム(パンクした鼓膜を持つ少女)」とした。そして今年4月、誰かが少女の顔にマスクをかけた。バンクシーが言及していないので第三者によるものと考えられている。
最近のバンクシーの作品としては、この上の画像。スパイダーマンやバットマンなど数あるスーパーヒーローを捨て置いて、看護師の格好の人形を選んでいる男の子の絵。「ゲーム・チェンジャー」と名付けて、イギリスの病院に送った。今年の秋まで病棟に展示され、その後は国民保護サービスの資金集めの為にオークションにかけられる予定とのこと。

また、最近では、彼のインスタグラムで自粛期間中に、浴室を利用してネズミの作品を制作。隔離生活を皮肉るように妻が嫌がっていると書いているのも笑うのだが。

会場には、フォトスポットのような場所も何カ所もあり、なんだか陳腐だと先に見に来ていた友人達は言っていた(笑)それはさておき、バンクシーの作品を一同に見ることが出来、ダイジェスト版のようなビデオまで上映していたのは良かったなと。