和巧絶佳展の「和」 「巧」を見た後、工芸素材の美の可能性を探る「絶佳」を。(解説はHP等より)

新里明士(にいさと あきお)
蛍手の作品で知られるが、装飾の一部として使われて来た蛍手を磁器の全面に配して、磁器自体が光を帯びている。過去作に比べ口径を大きくすることで、上方からの光をより広く受け入れ、繊細な模様が際立つ作品になっている。器胎にドリルで穴をあけるので、制作中の耐久性に難があるが、重力とせめぎ合う技術も見事。
蛍手 ほたるで
透光性のある文様が施された磁器。磁器の素地に透かし彫りの装飾を施し、粘性の高い半透明の釉を掛けて焼成すると、透かし彫りの部分が釉薬で埋められる。この部分に光を通すと、文様が透けて見えるところからの名で、蛍焼と呼ばれることもある。中国において発達した。

「光器」2019、「光器」2020
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横から見るとより美しい。
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いずれも「光器」2020
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「光器」2020 穴の開け具合で濃淡まで表現されている。
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「穿器」2020 穴を釉薬であえて埋めない作品。(とても規則正しく穴が開けられていることもあり、金属製のペン建てに見えてしまったのは私だけか… ゴメンナサイ💦)
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「光蓋器」2020、「光蓋器」2019
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坂井直樹(さかい なおき)
直線的な把手が印象的な鉄瓶。錆びた鉄の素材感と余白の美による洗練された形態が美しい。鍛造(たんぞう)による鉄の新しい表現のオブジェとしても。坂井氏曰く「火を使い、金槌で叩き、思い通りの形に近づけていくという長い作業の中で、重く冷たくのしかかる金属の感触が、まるで正反対の物として生まれ変わっていく瞬間があります。手の中でそれを感じる時が鍛金の仕事の最大の魅力です」と。
鍛造 たんぞう
工具、金型などを用い、固体材料の一部または全体を圧縮または打撃、および鍛錬を行なって成形すること。溶かした金属を流し込み固める、鋳造による成形方法に比べ、鍛造は余分な空気、ガスが抜けてより丈夫で頑丈強固な金属ができあがる。
「湯のこもるカタチ」シリーズ 鉄をたたいて制作した鉄瓶で、表面には金槌で打った時の槌目の痕が残され、さらに錆が表面全体を覆い、硬いはずの鉄に柔らかい表情を与えている。
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「『侘び』と『錆び』のカタチ」2020
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「『侘び』と『錆び』の花器」2020 シンプルな真鍮の筒が花入れの部分で、鉄枠は空間の中のフレームとして。
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「monochrome」シリーズ 2020 加賀象嵌の技術を生かし、鉄に金を平象嵌し、鉄錆の茶色の表面には漆を焼き付けている。
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安達大悟(あだち だいご)
絞り染めの一種で、奈良時代の夾纈(きょうけち)にルーツをたどることが出来る折り畳んだ布を板に挟んで染める板締め絞りの作品。模様の出方や色彩の濃淡までも綿密に計算しデザインする。「にじみ」を模様に取り入れ、発色豊かな現代のテキスタイルを作り出している。
絞り染め
圧力防染による染の一種。布の一部を縛るなどの方法で圧力をかけ染料が染み込まないようにすることで模様を作り出す模様染めの技法の一つ。文様を染め表す方法としては最も原始的で、古くから世界の各地で広く行われている。
「つながる、とぎれる、くりかえす」2020
現代の人と人とがつながる手段である電波やインターネットなどからも着想を得ているとのこと。
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橋本千毅(はしもと ちたか)
漆の制作工程は多岐にわたり、下地、塗り、蒔絵、平文、螺鈿などの一連の工程を全て自身の手で行っており、木工や金工の技術も習得して素地や金具も自作。必要に応じて道具や材料も作っている。
螺鈿 らでん
夜光貝やアワビ貝などの真珠質の部分を砥石などで摺り減らして適切な厚さにし、文様に切って木地・漆地の面に貼りつけ、または嵌め込んで研ぎ出す装飾技法。中国唐代に発達し、日本では奈良時代に伝わった。

平文 ひょうもん
漆器の加飾の一技法。金・銀・錫などの金属の薄板を文様に切って、漆面に貼りつけ、その上から漆を塗って金属板を塗り埋め、金属板の上にかかっている漆を剥ぎ取るか、研ぎ出して金属板の文様を表す方法と、金属板を避けて漆を塗る方法がある。
「浮線綾螺鈿蒔絵箱」2011、「唐草螺鈿箱」2012
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「黄金虫蒔絵箱」2013、「舎利器」2015
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「蝶牡丹螺鈿蒔絵箱」2017 円形の箱の蓋に螺鈿で白い牡丹の花を表し、葉の部分は緑色に。蓋には漆を塗り重ねた堆漆(ついしつ)板を彫刻したオオムラサキが取り付けられている。
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「宝相華蒔絵箱」2014、「花蝶螺鈿蒔絵箱」2018
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「蝶」2020
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「螺鈿 "鸚鵡 "」2018
頭部から尾羽にかけての緑色や紫色は螺鈿で覆っている。鮑貝の内側にある真珠層部分を薄く研いで細かく切り分け、同じ色調のものをそろえることで、螺鈿とは思えないほどに濃厚で鮮やかに輝く色を実現している。
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佐合道子(さごう みちこ)
自然物を始めとした身の周りの「いきもの」を子細に観察することをライフワークとしており、「いきものらしさ」をテーマに、土の可塑性を生かした動きある作品を制作。有機、無機の相違を成長、成熟の有無と捉え、細かなヒダを張り巡らして生きているような表情を与えている。鋳込み成形を用いながら、繊細な技で自然を再解釈している。
鋳込み成形 いこみせいけい
泥しょうを型に流し込んで成形体を得る陶磁器の成形方法。一般には鋳込み型に石膏を用い、石膏の吸水性を利用して泥しょうを脱水固化させる。薄手のもの、多角形な形、彫塑的な複雑な成形を可能とする。
「玉華蓋付飾壺」2017、「原生の発露」2011
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「還る」「脈打つ」「をだまき」の新作3点は、それぞれが縦横に広がっており、自然を再解釈。
「還る」2020、「脈打つ」2020
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「をだまき」2020
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「とこしえ」2019
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「Decoration Fetishism-go back to the basies」2009 
チェ・ジョンファ氏の作品(その様子は こちら)と似てるなぁと勝手に思ってしまった💦
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今回の展覧会はここまでだが、パナソニック汐留美術館が多数所蔵しているルオーの作品が数点展示してあった。(ルオー作品の画像はHPより)

「マドレーヌ」1956 晩年の作品。サーカスの女性達をモデルにし、聖書の人達の名前を付けた。「飾りの花」と共に、アトリエに残されていた作品。
マドレーヌ

「避難する人たち(エクソドゥス)」1948 出エジプトの様子。
避難する人たち

「キリストと漁夫たち」1947 想像上の場面を描いている。
キリストと漁夫たち