南アに住み出した時、あちこちでサイの人形?があったり、車にサイのマークをつけているのを見かけ、サイが好きなんだなぁ程度にしか思っていなかった💦 ガーデニングなど園芸品を売っているお店にある売り物のサイ親子。相当大きな庭なり家なりが必要だと思われる。



今年になって、科学誌のネイチャー・コミュニケーションズが発表した調査結果では、「違法な殺害件数とアジアの象牙価格が緊密に連動していることが分かった。さらに、地域によって大きく異なる汚職と貧困の主要指標も密猟発生率と合致していた」と。

しかし、空港などに置かれているサイを良く良く見ると、サイには矢が刺さっていたりもする。

車の前にはこんな物がついていて、結構可愛いかと。
車の後ろなどには、このようなステッカーも。
ちょっと過激なものまであるが、ようは皆、密猟者からサイを守ろうというもの。最初は、へー、そうなんだ、程度にしか思っていなかったのだが、実感することがあった。
我が家から一番近いミニサファリ?である Tala Game Reserve に初めて行った2014年の4月頃までは、それは立派な角があったのだが(その様子は こちら)その翌月の5月に密猟に遭い、翌年の2015年に行った時は密猟されない為に角が予めカットされていた。(その様子は こちら)

Fionaという30歳ぐらいのメスのサイと、20歳ぐらいの彼女の一番上の娘が、角を取る為の密猟者によって殺された。より小さな子供のサイは生き延びたが、すでに角は取られていた。いつもこの母娘は一緒にいたので、一緒に殺された模様で、レンジャーの人達はあまりにもサイ達を家族同様に思っていたので、ショックで仕事も出来ないほどだったとか。
(画像は新聞記事より)
たまにしか行かない我々ですら、あの時のサイの親子が殺された?と思うとショックだった。
何の為の密猟か? 中国やベトナムでは、角を粉にして煎じると強壮剤になるなどの薬効を説くのだが、サイの角は爪と同じで、全く医学的根拠はない。
そして、今年2月に発表されたWWF(世界自然保護基金)によると、
南アフリカ共和国政府は2019年2月13日、2018年の一年間に、同国内で密猟被害にあったサイの頭数を公表しました。それによると769頭となり、2017年の1,028頭から大きく減少しました。1,000頭を下回ったのは2012年以来です。10年にわたる密猟対策の成果が徐々に見られるようになってきました。しかし、組織的密猟が始まった2008年より前には、犠牲となったサイは数頭から十数頭のレベルであったため、依然として高水準。
記事の内容やグラフはWWFジャパンより。
密猟によって殺されたサイの数が減って来たのは何よりなのだが、それにしても、未だ未だ多い。
一方、ケニアなどでは角は予めカットしていない。隣国のボツワナやスワジランド王国でも、密猟者は厳罰に処されるようになってから、密猟が激減。
それに対し、南アの場合は隣国モザンビークの国境を越えてやって来る密猟者が多く、南アにしても密猟者を捕まえたとしても、保釈されることも多々(監獄は犯罪者であふれかえっている為とも・・・)
密猟者にとっては、一生かかっても得られないぐらいの莫大な金額を得られることから、モザンビークの国境沿いのにわか豪邸は、密猟者の豪邸だと聞く。もし、サイが自然公園内の南ア領内からモザンビーク領内に移動したら、48時間以内にそのサイは密漁者によって殺される。南アの保護区のレンジャー達は、サイの群れを南アに戻そうとするが、レンジャーに銃火器は与えられておらず、あるのは猛獣用の催涙スプレー(唐辛子が入っている)だけで、密猟者達はAK47(1947年式カラシニコフ自動小銃)や斧を持っている。密猟者は、ソフトドリンクケースを乗せたランドクルーザーに乗って街に行き、そのケースの色を暗号として、月明かりのもと、決められた所にその夜、密猟に行くという合図を送る。モザンビークの Chokwe という町は、南アからの盗難車の集積地となっていて、国境をチェックを受けずに通って来る。そしてそのルートは、密猟者のルートでもある。
取引価格は、2014年現在とやや古いが、サイの角の価値は金の延べ棒より高く、1キロあたり日本円にして約500万円という高値で闇取引される。
取引価格は、2014年現在とやや古いが、サイの角の価値は金の延べ棒より高く、1キロあたり日本円にして約500万円という高値で闇取引される。
南アでは、公園や保護区で、銃を持ったレンジャーさん達が、密猟者対策として巡回してはいるが、クルーガー国立公園など広いエリアでは、密猟者がヘリコプターを使って上空からサイの居場所を見つける始末。
数年前には、南アの白人の獣医師達やレンジャー達も密猟者とグルになり、密猟を行っていたのが発覚し、そこまで落ちたかと大きな問題になっていた。
中国やベトナムの購入者に、サイの角の薬効がないことを説明しても、全くブラックマーケットは減らないので、ならばと、サイの角にサイには毒にならないが、煎じて飲む人間には毒になるものを角に予め注入する、ということで、寄生虫を除去する成分などが含まれた薬剤策も研究者の間で発案され実験的に行われたこともあった。南アのシュシュウェインフォロジパーク Hluhluwe iMfolozi Wildlife Park で行われた。すると、密猟エリアはそこから南下し、世界遺産にもなっているイシマンガリソウェットパーク iSimangaliso Wetland Park に移った。そして、シンジケートの取引価格は上昇。サイ密猟のシンジケートは、サイの密猟者にサイ一頭8万ランド(80万円)から20万ランド(200万円)に引き上げた。南アの環境省が許可する場合、1頭のサイの取引価格は55万ランド(550万円)。しかし、ゲームロッジ(=サファリロッジ)や保護区はより価値があるとわかっている。生息数もコントロールされており、1キロ四方に3頭のサイとされている為、生物多様性プログラムにより、約40頭のサイがクワズルナタール州のオークションにかけられたことがあった。サイをヘリコプターで空中に吊り上げて運搬する費用は一頭あたり15000ランド(15万円)で、オークションでは、1500万ランド(1憶5000万円)以上の根がつく。このサイの角に毒を入れるというプロジェクトには、そのハイテクの道具代のみならず、若いレンジャーの教育費用も必要で、5億ランド(40億円)が必要とのこと。
が、結局あまり効果がなく、南アで立派な角を持つサイはいなくなったという現状がある。。。(※数値は全て2014年現在なので現状はより高騰しているかと)
2014年頃から、密猟を防ぐ為にサイの角を売買してはどうかと言う意見も出るようになり、クワズルナタール州の野生動物保護の代表者が、サイの角を秘密の場所に保管していると発表。その数112本で、その推定価格は1憶6800万ランド(約13億5千万円)に相当する。
南アでサイの角が合法売買されるようになると、国立公園で7500~9000頭、南ア全体で2万頭にまで増えると試算している。合法化して売買するにしても、それを現在提唱しているのは南ア一か国のみだったのだが、昨年2018年にとうとう合法化された。果たして・・・???
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ゾウの牙にしてもしかり。それについては、日本も加担しているので非常に情けない。
2000年以降、最大の象牙消費国だった中国ですら、2017年12月末に国内でも象牙の製造・販売を禁止、高価なアンティーク素材として象牙取引をしていたイギリスも2018年12月にその商業利用を禁止する新法を承認。
一方、中国よりも前には、世界最大の象牙輸入国だった日本は、現在は象牙の輸入は禁止されているものの、過去に合法的に輸入した大量の象牙の在庫を利用した製造・販売は未だ認められている。印鑑、三味線のバチ、かつては鍵盤など。とは言うものの現行法があまりにザル法な為に、国内市場に違法に持ち込まれた象牙が紛れ込んでも区別することが出来ずに市場に流通しており、最近は取り締まりが厳しくなった中国のバイヤーが、日本を経由して買っているケースもあると聞く。今時ハンコなどはもう時代遅れだと思うし、象牙でない石か何かで出来たハンコで十分だと思うのだが、、、
南アのサイの密猟問題のように、ケニアなどではゾウの状況が劣悪。毎年のように密猟者を摘発し象牙を燃やすシーンがニュースに流れるのだが、一体このせいで何頭のゾウが殺されたのだろうか??? 現状、15分に1頭が殺されているとも言われている。このテレビ画像は、ケニアのナイロビで燃やされている象牙の様子を報道している中東アルジャジーラの放送。
サイの角と同様、象牙もアジアが最大のマーケットとなっており、中東のイエメンなどでは、象牙を持つことが力の象徴となっていて、愛好されているとも。

動物園で以前に働かれていたひとりの日本人女性が、「ゾウを殺さないと取れない象牙よりも、生きているゾウからしか取れないウンコの方が良い」 として、ゾウの落し物を原料とした紙作りの啓蒙活動をされている。その方が、南アはダーバンに来られたので、「象のUNKO elephant paper」 を体験させていただた。
その時の様子は こちら
5年ほど前だが、トラックにこのような物が積まれて運ばれていた。本物なのかデコレーション用の偽物なのか???
今年になって、科学誌のネイチャー・コミュニケーションズが発表した調査結果では、「違法な殺害件数とアジアの象牙価格が緊密に連動していることが分かった。さらに、地域によって大きく異なる汚職と貧困の主要指標も密猟発生率と合致していた」と。
ならば合法化することでブラックマーケットの価格が下がり、密猟者の得る金額も安くなるので密猟が行われなくなるのではないか?と、昨年南アでは、象牙などの売買が合法化された。昨今、国や地域によっては、大麻が合法化されているが、栽培することの出来るものとは違うサイやゾウ達。合法化され徐々にブラックマーケットがなくなったにせよ、世の中がその流れになる前に、絶滅してしまうのではないかなと。。。
一方、7年前の2012年になるが、WWFスペインの名誉会長であるスペイン国王ファン・カルロス陛下が、ボツワナでのアフリカゾウのハンティング中に怪我をしたというニュースが報道された。50年に渡って野生生物の保護活動をしてきたWWFの名誉会長職の人のゾウのハンティングには驚かされたが、ボツワナではゾウ狩りが合法なことから、ボツワナ王室からの招待だったのだそう。。。
また、密猟者だけが問題でないと言う観点もある。前述のネイチャー・コミュニケーションズでは、「人間による生息地の破壊と分断は、長期的に見るとゾウの生存にとってより深刻な脅威となる可能性がある」と。
ゾウの生息域に、どんどん人間が入って行き村や町を造ってしまうことも問題。寿命が60~70年と長く、記憶力も非常に良いゾウ達は、前の世代が通った道を覚えていて次世代にも伝えていく。
それを利用したサファリロッジまである。画像はザンビアのロッジなのだが、ゾウの道にあえてロビーを建設し、そこを通る野生のゾウ達が見られることをウリにしている。
しかしそんなサファリロッジだけではない。ゾウの通り道に人間が畑などを造ることによって、その農作物を食べてしまうことから、ゾウの絶滅が危惧されていることなど知らない教育をあまり受けていない農民達が獣害としてゾウを殺す。その為、ゾウが苦手とする蜂を飼って養蜂をすることにより、ゾウが農村に近寄らないようにしようと農民に働きかける運動もあり、以前にその目的で造られた養蜂場の蜂蜜をいただいたこともある。なかなか美味しかった。
そして、勿論地球温暖化による野生動物達の住環境の変化も否めない。
今年は干ばつが酷く、ナミビアの国立公園では、草の生育が悪い為に草食動物が飢えて数多く死ぬことが懸念され、ならばと、野生の草食動物1000頭(ゾウ28頭、バファロー600頭、スプリングボック150頭、オリックス65頭、キリン60頭、インパラ20頭など)を競売にかけ、草地保護と資金調達(110万ドル=約1億1900万円)を目指すと、つい先日ナミビア政府が発表した。
1億円程度なら、日本ではクラウドファンディングで容易に調達できるだろうに、と解説しているニュース番組もあったが、上記の1000頭が少なくとも環境の良い動物園に引き取られて幸せな余生を送ってくれることを願うのみ。
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