シャルロット・デュマ Charlotte Dumas の「ベゾアール(結石)Bezoar」展を観に行った。彼女のビデオや写真のほか、馬にかかわる他の物も展示されている。
オランダ人のデュマは、動物と人の関係性をテーマに、20年にわたり騎馬隊の馬や救助犬など人間と密接な関係にある動物を被写体としたポートレイト作品を発表。2014年からは、日本全国に現存する在来馬の居る北海道、長野、与那国島など8カ所を巡って撮影。
「潮」ビデオ2018、オーガニックコットン2020
与那国島で撮影された映像作品。与那国島では120頭ほどの野生馬が生存していて、沖縄に生まれた1人の少女のゆずと、愛馬うららが主人公。2015年に訪れて以降、デュマは全国に在来馬を取材しに行った。周りにある青いテキスタイルは、キッタユウコが琉球藍で制作したオーガニックコットンで、36枚ある。
「黄金の木馬」 19世紀 中国あるいはチベット パリのエミール・エルメス・コレクション蔵。
「馬形埴輪」(南山下移籍)古墳時代中期(5世紀)
「子馬形埴輪」(忍ヶ丘駅前遺跡)四條畷市のJR忍ヶ丘駅の西側広場の調査地から1988年出土。長らく犬だと思われていたのだそう。
「木馬の玩具」20世紀初頭 信州地方 信州地方では、一家に跡取り息子が生まれると、幸多く健やかに育つことを祈念して木馬を贈る習わしがある。この像は、シャルロット・デュマ本人が東京の骨董店で購入したもの。
通常、エルメスフォーラムでは8階の会場だけで展示されていることが多いのだが、今回は9階にも展示が。
馬が寝そべって休んでいるのだが、死んでいると思った人も居た。視覚的な理解がいかに主観的であるかを証明しており、個々の考え方のみならず、心持ちや体調でも左右されるのではないか。ある日は死骸に見え、ある日は夢を見ているように見えるなど、実はさほど違いはなく、全ての感覚を持つ生き物はこの世を去る時に永遠の夢の世界に入って行くだけなのかも?と。
「ベゾアール(結石)」
今回の主題にもなっているベゾアール。馬の頭蓋骨と比較しても、非常に大きいのにはビックリ。シャルロット・デュマ曰く、水分不足から結石が出来る為、水が生命の維持にいかに大切か、と。
ベゾアールには色々な種類がある。・動物の内臓に取り込まれた食物繊維が絡み合い、ミネラルが凝集することで出来る植物性胃石。草食動物に見られる。・毛を舐める動物の場合は、毛髪胃石と呼ばれる。・何かの核を中心に形成され、その周囲にミネラルが凝集。膀胱や腎臓だけでなく、腸や唾液管にも見られる。フラゴナール博物館にある最大のものは、馬の腸の中から発見されたもので、重さ11キロ。現在は獣医師によって結石は取り除くことが出来る。一方、古い伝承では、ベゾアールはお守りや神秘的なものとされていた。遊牧民は、結石を柳の小枝と一緒に水に沈めれば雨乞いができ、小さな袋に入れて馬の尾に結わえ付ければ風を吹かすことが出来ると信じられていた。イランやトルコの「山羊のベゾアール」を求める者もおり、粉末にして「テリアカ」と呼ばれる万能薬や解毒剤(ヒ素に効くとか)の精製に使われていた。時には金の架台にはめ込まれ、王侯貴族の「驚異の部屋」に陳列されたり。ベゾアールをコップに吊し、毒から身を守る為に飲み物にベゾアールを浸したり。このような習慣は、フランスでは18世紀末まで続いた。
人間は自然の一部として動物や植物などと共存することでしか生きていけず、ベゾアールや埴輪や木馬などは、共存のひとつの証であり、生の儚さを伝えているとのこと。
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