黒田清輝氏の黒田記念館を訪れた後(その様子は こちら)、東京国立博物館の本館へ。
新型コロナの自粛後に3段階に分けて全ての常設展を公開するにあたり、6月に行った時は未だ第一段階状態で、本館1階11室、12室、13室、16室、18室しか公開されていなかった(その様子は こちら)。その為、今回は見損ねたものなどを中心に。
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まず、その建物。大正12年(1923)に関東大震災により損壊したJ. コンドル設計の旧本館に代わり、昭和天皇の即位を記念し「日本趣味を基調とした東洋式」という条件で設計案を公募して建てられた。
コンクリート建築に瓦屋根をのせ、東洋風を強く打ち出した「帝冠様式(ていかんようしき)」というスタイルは、銀座和光や原美術館などで知られる渡辺仁の設計。
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吹き抜けのエントランスには、大理石の階段が圧巻。ドラマ「半沢直樹」でも半沢直樹に大和田常務が「おしまい death」と言った場所でもある(笑)
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便殿(旧貴賓室)天皇や皇族が来られた時の休憩所。両脇に控えの間が付いている。帝室博物館から国立博物館になった現在は、皇室のみならず国賓や公賓の方達の休憩室となる。
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暗くなってくるとライトアップしていて、なかなか綺麗だった。
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東京国立博物館には、2019年4月現在、約11万7000件以上を収蔵、そのうち国宝89点、重要文化財644点がある。

1階11室
「大日如来座像」平安時代 11~12世紀 重要文化財 
大日如来座は森羅万象の根源で仏の王とされ、あらゆる仏はその化身なので王族の姿をしている。
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「不動明王立像」平安時代 11世紀 重要文化財 
9世紀末に完成した不動十九観様の形式にしたがう不動明王像だが、表情や体つきに見られるおおらかな趣は平安時代後期の特徴。ヒノキ材の割矧ぎ造り。光背に「南□西来寺」と読める墨書があるが、この寺については不明とのこと。
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日本で鉄の刀剣が登場するのは弥生時代だが、鉄を鍛えて刀剣を作るようになったのは、古墳時代中期の5世紀頃から。当時は中国や朝鮮半島の影響を受けた刃の付いた部分に反りのない直刀だった。反りのついた刀身に刃文(はもん)を焼き入れた「日本刀」が誕生するのは、武士が登場する平安時代後期11世紀頃から。鎌倉時代の13世紀には、山城(京都)、大和(奈良)、備前(岡山)、相模(神奈川)の刀工集団が刀剣を生み出し、室町時代の15世紀に美濃(岐阜)が加わって、5つの地域の作刀技術の伝統を「五ヶ伝」と呼んだ。江戸時代になり、それまでの古刀に対し新刀が各地で作られるようになった。
前回、見ようと多くの人が列を作っていたので諦めた国宝の日本刀。違いが良くわからないのだが💦

1階13室
「太刀 三条宗近(名物 三日月宗近)」平安時代10~12世紀 国宝
先はほとんど反りのない古い形式。刃文に三日月形があることから三日月宗近と言われ、天下五剣のひとつとされており、徳川将軍家に長く伝来。
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「短刀 粟田口吉光(名物 岩切長束藤四郎)」鎌倉時代13世紀 重要文化財
秀吉から長束正家が拝領し、福島正則に移り、やがて奥平家の所有となった。
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「太刀 福岡一文字吉房(号 岡田切)」鎌倉時代13世紀 国宝 
号の由来は、天正12年(1584年)に豊臣秀吉と戦った織田信雄が、この刀で家臣の岡田重孝を成敗したと伝えられているから。
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1階14室 特集 「大野出目家と越前出目家の能面」 
安土桃山時代以降、豊臣秀吉を始め多くの大名家が能を好み、能面制作を世襲で行う家が現れた。越前出目家(でめけ)は室町時代後期、大野出目家は安土桃山時代以降に活躍。大野出目家は順調に大名家の求めに応じていたが、越前出目家は相続でもめ、幕府御用からはずれ劣勢となった。

大野出目家 
一番右:「能面 怪士(あやかし)『天下一備後』焼印」江戸時代17世紀 重要文化財
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越前出目家
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1階15室 歴史の記録
「日本沿海輿地図(中図)東北 伊能忠敬作」江戸時代19世紀 重要文化財 
縮尺は21万6千分の1で、日本列島を8図で表したうちの東北の大部分。
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「奥州道中分間延絵図」江戸時代 文化3年(1806年)重要文化財
江戸幕府が、東海道、中山道、講習会、日光街道、奥州街道の5海道や主要な脇街道の実態を把握する為に作成した絵図。これは奥州街道の途中の部分。
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幕末明治期の古写真
明治21年(1888年)に撮った「枯木鶴図襖 大徳寺真珠庵」と「花鳥図襖 大徳寺大仙院」は、いずれも臨時全国宝物取り調べとして撮られたものだが、その写真も重要文化財となった。
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1階18室 近代の美術
「老猿(ろうえん)」高村光雲作 明治26年(1893年)重要文化財 
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「七宝富嶽図額」濤川惣助作 明治26年(1893年)重要文化財 
1893年のシカゴ・コロンブス世界博覧会の為に作った。シカゴでは「絵画」として展示された。
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「裸婦」梅原龍三郎作 昭和6年(1931年)
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ジャンル別展示をしている1階から、日本美術の流れを追う2階へ。その様子は追って。